石崎ひゅーい、ドラマ『警視庁・捜査一課長 season5』に寄り添う主題歌「アヤメ」 幸福な余韻を残す1曲に

石崎ひゅーい『捜査一課長』主題歌が残す余韻

 石崎ひゅーいが新曲「アヤメ」を5月7日に配信リリースした。

石崎ひゅーい - アヤメ / 弾き語り

 「アヤメ」は、温かな響きのミディアムバラード。最初は歌とギターとグロッケンのみだが2番ではバンドイン。曲を彩る楽器の種類が徐々に増えていく様子は、音のあかりが灯っていくようだ。光と温もりを感じさせるサウンドのなか、石崎の歌声は、やわらかくなったり力強くなったりする。石崎の声は地声で高音を張り上げたときに独特の揺らぎ方をし、その揺らぎが剥き出しの質感、感情の震えを感じさせる。特にサビの歌い出し、〈失ったものだけが積み木みたいに重なって/崩れないようにすることで精一杯だ〉というラインは、その声質で歌うからこそ一層切実さが増している印象だ。しかしこの曲では、ギリギリのところで踏ん張る自分の姿よりも、それでもなお前を向いて進んでいこうという意思の方に焦点が当てられている。だからこそ、サビの最後では毎回〈僕はもう迷わないんだ〉〈この痛み抱いて歩いて行く〉〈何度でも生まれ変わって行く〉と前向きな意思が歌われており、断定的な表現で統一されているのではないだろうか。

 アヤメは初夏に咲く花であるため、まさにこの時期にぴったりな曲と言えそうだ。なお、歌詞に登場する〈アヤメ色〉とは赤みがかった紫色のことで、石崎のコメントを読むと、夜から朝に変わるとき、窓から見えた空の色が「まだ見たことがない美しい色」だったことがイメージの源になっている様子(※1)。曖昧であるということは、これからいかようにも変わっていけるということ。〈見違えるほどに空はあんなにブルーなのに/はいでもいいえでもないグレーな気持ち〉という歌い出しはネガティブに聞こえるかもしれないが、それ以上の意味を内包していることが曲が進むにつれて分かってくる。また、全体的なメッセージを読み取ってからもう一度曲の冒頭に戻ると、イントロのメロディもこの曲を象徴しているように思えてならない。最初の2小節を階名で表記すると「ソラシド シドレミ/ドレレミ ソ」。「ドレミファソ」というふうにスムーズに上昇しているわけではないが、止まったり戻ったりしながらも少しずつ上昇していくこのメロディからして、葛藤や躓きを経て変化していこうとする〈僕〉の気持ちが表れている気がするのだ。

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