菅田将暉、石崎ひゅーい、土岐麻子……鋭いクリエイティビティ発揮するトオミヨウに注目
あいみょんや菅田将暉といった若手から、土岐麻子のような中堅、槇原敬之や玉置浩二などのベテランまで。世代やジャンルの異なるミュージシャンの作品で編曲を手がけ、辣腕を振るうトオミヨウ。エレクトロニクスをふんだんに使ったダンサブルな楽曲からストリングスをフィーチャーしたリッチなバンドサウンド、アコースティックな弾き語り……と、ジャンルを問わない巧みな手腕を持ち、ハイクオリティのポップスを次々とチャートに送り込む才人だ。
先ごろリリースされた菅田将暉『LOVE』は、その手際を再確認させられる仕事ぶりだ。同作でトオミは11曲中5曲で編曲を手がけている。菅田の実直な歌声が印象的な同作だが、ストリングスをふんだんに使ったバラード「まちがいさがし」のようにJ-POPの王道をストレートに表現したかと思えば、「ベイビィ」ではレコーディング現場の空気感までを収めたシンプルなギター弾き語りに。白眉は、菅田とあいみょんのコラボレーションとなる「キスだけで feat. あいみょん」だ。アコースティックギターとピアノをメインにおいたアレンジに、深いリバーブとともに電子音を溶け込ませたサウンドが、生々しく切実なメッセージに浮き世離れした壮大な舞台を用意しているのが素晴らしい。
長年コラボレーションを重ねてきた石崎ひゅーいとの仕事も、トオミが持つ編曲の引き出しの豊かさが感じられる。こちらも最近の例になるが、石崎が提供した菅田将暉「さよならエレジー」やそのセルフカバー(ミニアルバム『ゴールデンエイジ』収録)を比較してみると面白い。前者ではアコースティックギターの力強いストロークと疾走感あふれるドラムが、マイナー調のメロディに昭和歌謡的な味わいを付け加えている。対して後者では、メロディはもちろんメインのリフも基本的には変わらないものの、ライブ感のあるジャキジャキとしたドラムやギターのサウンドで邦ロック的なみずみずしさをたたえている。4つ打ち系のスピード感あふれるロックやファンキーなダンスロックでキャッチーなサウンドを連発する『ゴールデンエイジ』自体、快作だ。