モーニング娘。以降主流になった“人員変動” メンバー加入&卒業システムがアイドルシーンに与えた影響

 大手事務所所属からセルフプロデュースまで、地上と地下を合わせて全国に数千組が活動していると言われている女性アイドルシーン。その多くのグループが経験していることと言えば、メンバーの新加入と卒業・脱退だ。

モーニング娘。’20『純情エビデンス/ギューされたいだけなのに』(通常盤A)

 メンバーを頻繁に入れ替えながら第一線で長く活動しているアイドルグループの筆頭は、モーニング娘。だろう。1997年9月の結成から8カ月後の翌年5月に保田圭、矢口真里、市井紗耶香が加入し、1999年4月には初期メンバーの福田明日香が卒業。4カ月後に後藤真希が加入し、その後も石黒彩の卒業、石川梨華、吉澤ひとみ、辻希美、加護亜依の加入など、結成から3年も経たないうちに人員変動が繰り返された。

 特にメジャーデビューして間もないうちに保田圭、矢口真里、市井紗耶香を新たに迎えた展開には、メンバー、ファンも抵抗感を隠せなかった。その後の福田明日香卒業も、グループの中心格とあって大きな動揺が流れた。当時、トップクラスのアイドルグループがメンバーの入れ替えを何度も実行することは異例中の異例だった。

 一方のプロスポーツ界では、1993年に始まったJリーグでトレードや入退団が活発におこなわれ、同年にはプロ野球もFA(フリーエジェーント)という選手のチーム移籍の新たなシステムを導入。社会全体としても、従来の「生涯でひとつの会社に身を捧げて定年を迎える」という考え方に変化が生まれてきた。組織の血の入れ替えに対する意識が刷新されはじめた時代である。

メンバーの新加入と卒業・脱退は何が大変なのか?

 スポーツチームや企業で人の入れ替えがあった際、当然ながらそれぞれの役割、立場なども変わる。アイドルグループも同じで、それによってデメリット、メリットも生じる。アイドルグループでメンバーの卒業や脱退があったときのデメリットは具体的に何なのか。

 まずわかりやすいものとしては、ファンが減少する恐れがあるということ。推しメンの卒業・脱退とともに他界(そのグループを応援することを辞める)、ヲタ卒(アイドルファン自体を辞める)をするファンもいる。アイドルシーンは集客数で人気や実力の判断がなされてしまうため、ファン減少はグループとしてはかなり痛い。

 また仲間の卒業や脱退は、既存メンバーのモチベーション低下につながることもある。誰かが辞めると「自分も」と流されるメンバーも出てきたりする。プロデューサーや運営は、いかに既存メンバーの気持ちを切らさないかが重要になってくる。

 音源リリースに向けてのレコーディング、ジャケット撮影、ミュージックビデオの制作などを済ませていたら、作り直しをするかどうかの選択を迫られたりもする。最善策は、メンバー卒業と音源リリースのタイミングを合わせる形で「卒業シングル」としてリリースし、メンバーを送り出すこと。ただ、メンバーと運営の方針の違いや衝突などによる急な卒業・脱退も多く、円満に進まないのがアイドル界の現実である。卒業・脱退は多かれ少なかれ予算的なダメージがある。

 新しいメンバーがグループに入るときも、難関がある。たとえば、新メンバーが持ち歌の歌詞と振り付けをすべて覚えなければいけないこと。どんなグループでも、20分から30分のライブ時間枠をこなすために、最低5曲は持ち歌を用意している(5曲未満だと、曲間のMCがやたら長かったり、全公演のセットリストに変化がなかったり、一度のライブで同じ曲を何度も演奏したりする事態に……)。活動歴が2、3年くらいのグループとなれば持ち歌10曲以上ばかり。新メンバーは、デビュー前はレッスンや個人練習漬けの毎日を送ることになる。完成度があがるまで時間を要するため、グループの成長に遅れが出ることもある。

 誰かが加入したり卒業・脱退したりする際は、既存メンバーたちのダンスフォーメーションや歌割りにも影響が及ぶ。もし6人組のグループから2人減って4人組となり、数カ月後に3人増が決定しているパターンなら、既存メンバーは、全持ち歌において「6人組から4人組になったバージョン」と「3人増えて7人組になるバージョン」を同時進行で制作しなければならない。これはかなり大変な作業だ。

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