モーニング娘。以降主流になった“人員変動” メンバー加入&卒業システムがアイドルシーンに与えた影響

メンバー16人が入れ替わったアイドル「マンネリ化を防いで新しいトピックス発信」

 2014年の結成から6年間で既存メンバー含め計16人が入れ替わるなど不安定ななかで活動を続け、近年では人気アイドルイベント『ギュウ農フェス』などにも出演するまでに成長した大阪の地下アイドルグループ・くぴぽ。唯一のオリジナルメンバーでもあるリーダー兼プロデューサー、まきちゃんはメンバーの入れ替えについて「ファン心理のなかにある人間本来の性質が、自分たちのグループ作りに影響しているかもしれません」と分析する。

「アイドルファンはどうしても新しいグループ、デビューしたばかりのアイドルに目が移りがちになる。というか、アイドルファンは新しいものを好きになりやすいんですよ(笑)。でも興味の対象が移り変わるのは、人間本来の性質として当然のこと。ずっと好きだったメンバーであっても、ひとりの女性を見守り続けるには根気がいると思うんです」

 メンバーを固定することで、ライブのパフォーマンスは間違いなく安定する。しかし、アイドルにおいてはこの「安定」という言葉が、時には逆効果になることもある。ある一定のラインを越えてヒットしているグループに関しては「安定」が重要かもしれないが、そこに上りつめるまでは、絶えず変革させて揺さぶりをかけた方が良いこともある。

 まきちゃんは「メンバーの新加入は、マンネリ化を防ぐためのひとつの手段でもあります。そうすることで、既存メンバーやお客さんに新しい刺激を与えることができる。新メンバーが入ったときは、ライブの集客数が増えることもあります。新メンバーをきっかけに「初めてライブを見た」という人がそのままファンになってくれて、友だちを連れてライブに来てくれたりする。活動を長く続けていると、新しいニュースって少なくなる。でもアイドルはトピックスを常に発信し続けなきゃいけない。そういう意味で、新メンバー加入は起爆剤になります」と語る。

 ただ、「今まで13人のメンバーが卒業・脱退していきました。誰かが辞めるというときは等しく傷ついています。当然、誰かに辞めてほしいなんて考えたこともないですから」と、まきちゃんは複雑な心境も口にする。それでも「その都度、新しく入ったメンバー、残ってくれたメンバーたちと一緒に頑張ろうという気持ちになる。長い目で見たとき、メンバーの入れ替えをマイナスに思いたくない。メンバーが頻繁に変わったからこそ、6年もグループを続けることができています」と前向きに活動している。

 確かにまきちゃんが言うように、メンバーの入れ替えを続けることで、半永久的にグループを持続させることが可能だ。モーニング娘。は2014年以降、グループ名に西暦下二桁を表記して、長期的に活動していく気概満々である。いつの日かロックバンド、The Rolling Stonesのような長寿グループがアイドルシーンにも現れるかもしれない。

■田辺ユウキ
大阪を拠点に、情報誌&サイト編集者を経て2010年にライターとして独立。映画・映像評論を中心にテレビ、アイドル、書籍、スポーツなど地上から地下まで広く考察。バンタン大阪校の映像論講師も担当。Twitter

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