『最新 ウルトラマン主題歌集 ウルトラマンZ』インタビュー 第2弾
宮野真守が語る、ウルトラマンゼロと主題歌を通して挑んだ表現 「ウルトラマンシリーズで描かれたことを今こそ見習うべき」
『最新 ウルトラマン主題歌集 ウルトラマンZ』が10月21日に発売された。この作品は、初代ウルトラマンから現在放送中の『ウルトラマンZ』に至るまで、54年間のテレビシリーズの主題歌がコンパイルされた2枚組の作品である。ジャズや歌謡曲を取り込みながら合唱団の美しい歌声で聴かせた昭和シリーズの主題歌から、次第にダンスミュージックやロックと融合したJ-POPへ進化していった平成初期の主題歌たち、そしてメタルやヒップホップまで吸収しながらアニメソングとしても抜群の強度を誇るようになっていった近年の主題歌たち。この作品を聴くだけで、ウルトラマンシリーズの歴史だけでなく、50年にわたる日本のポップスの歴史まで総ざらいできるのが、非常に面白いところだろう。
そんなウルトラマン主題歌の魅力を語るべく、リアルサウンドでは2回連続の企画展開を行っていく(第1回は、怒髪天・増子直純とナイツ・土屋伸之による対談)。第2回は、声優・宮野真守へのインタビューである。宮野は、これまで複数の楽曲でウルトラマンシリーズの主題歌を担当。11月22日から始まる新シリーズ『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(YouTube独占配信のオリジナル作品)でも新曲「ZERO to INFINITY」が主題歌に起用されている。
そして宮野といえば何と言っても、10年以上にわたって演じ続けているウルトラマンゼロ。「ウルトラセブンの息子」という強烈なインパクトと破天荒なキャラクターによって、この10年のシリーズを支え続けているゼロだが、これまでのウルトラマンと違って特定の“人間の姿”を持っていないからこそ、演じている宮野の声こそが「ウルトラマンゼロの心そのもの」だと言っていいだろう。そんな宮野に、幼い頃のウルトラマンの思い出から、主題歌にまつわるエピソード、そしてウルトラマンゼロを演じるなかで感じた大切な想いなど、たっぷりと語ってもらった。ウルトラマンシリーズの素晴らしさが改めて伝わるインタビューになっていることは間違いない。じっくりと読んで欲しい。(編集部)
「セブンの息子だ」って言えるのがとにかく感慨深い
ーー10年以上にわたってウルトラマンゼロを演じられてきた宮野さんですが、幼少期を振り返ると、思い入れのあるウルトラマンや印象的なエピソードってありますか?
宮野真守(以下、宮野):子供の頃からテレビが好きでいろいろな番組を見ていましたけど、ウルトラマンシリーズを見始めたのは再放送だったかなと思います。初代の『ウルトラマン』もよく見ていましたけど、小学校の頃にカッコいいと思っていたのは『ウルトラマンタロウ』かな。あとはゲームも好きな少年だったので、ゲームボーイで『ウルトラマン倶楽部』とか、いろいろなゲームをやっていました。
ーーなかでも印象に残っている音楽というと何でしょう?
宮野:やっぱり『ウルトラマンタロウ』の主題歌ですよね。『タロウ』の曲はそれまでのウルトラマンシリーズの重厚な感じと違って、スタイリッシュだったのですごく好きなんです。〈タロウ ウルトラマン No.6〉という始まり方がカッコいいし、「英語じゃーん!」ってなりました(笑)。変身して登場するときも、手がパーじゃないですか。スタイリッシュだなって(笑)。
ーー兄弟のなかで身長も高いしスタイリッシュだけど、名前がタロウっていうギャップもいいですよね。
宮野:たしかに......! 変身するときのバッジもカッコいい形だったんですよね。初代のウルトラマンはスティックタイプのライトっていう感じだったから、間違えてスプーンを出しちゃうシーンもありましたけど(笑)、タロウはお洒落だなと。
ーーウルトラマンゼロになってタロウと共演したときは、感慨ひとしおという感じだったんでしょうか?
宮野:そうでしたねぇ。本当は、親父(ウルトラセブン)の話もした方がいいんだろうけど......(笑)。
ーーはははははは。そちらもあればぜひ。
宮野:ゼロになったときは、「セブンの息子だ」って言えるのがとにかくすごいなって思いました。「俺だけだぜ、これ言えるの!」って(笑)。登場シーンのセリフが、「ゼロ。ウルトラマンゼロ! セブンの息子だ!」ですからね。感慨深かったですよ。僕は舞台『ウルトラマンプレミア』で森次(晃嗣/モロボシ・ダン役)さんや真夏(竜/おおとりゲン役)さん、黒部(進/ハヤタ・シン役)さんとご一緒して、当時のお話やウルトラマンシリーズに臨む上での気持ちを、いろいろ聞かせていただけたんです。親父と同じようにウルトラゼロアイを目元にもってきて、「デュワッ!」って変身できたのは感動しましたし、やっぱり幼少期に観ていたウルトラマンへの想い、ヒーローへの憧れはずっと心のなかに残っていたんだなって感じました。
ありがたいことにゼロをやらせていただいてから、自分のライブにもウルトラヒーローに登場してもらったことがあるんですよ。サプライズだったのでファンの皆さんも喜んでくれたんですけど、何より男性スタッフ陣がみんな喜ぶっていう(笑)。「ウルトラマンだー! かっけー!」みたいな童心に帰る感じがあって、やっぱりウルトラマンはすごいなと思いましたね。
ーー自分も『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(2009年)で初めてウルトラマンゼロを見たときの衝撃はいまだに忘れられないんですけど、宮野さんはそこから10年でのゼロの成長をどのように感じていましたか。反抗期だった少年が、少しずつ大人になっていく過程もあったような気がしていて。
宮野:ゼロの描かれ方は、今までのウルトラマンシリーズのなかでも異質だったかもしれないですよね。まず、キャラクターボイスである僕しか存在しないから、とにかくようしゃべるんですよ(笑)。初登場から振り返ると、まだヒーローになりきれていない、未熟なところが色濃く出ていたのが印象的でした。人間っぽいっていうと変ですけど、そういう泥臭さ、若気の至りが誰よりも強いんじゃないかな。基本的に口が悪いし(笑)。でも、そこがゼロの魅力だし、その後の自由さにも繋がっていると思うんです。「ヒーローとは何たるか」を徐々に知っていって、どう成長していくかをファンの皆さんも一緒に楽しんでくれたんじゃないかなって。
ーーそれまでのウルトラマンにはなかった“危うさ”こそが魅力でしたし、力は強いのにどこか心配になってしまうのがゼロですよね。
宮野:ともすれば(ウルトラマン)ベリアルと同じ道を辿りそうでしたもんね。でも悪の道に堕ちそうになるのを止めてくれる仲間がいたことが、ゼロにとっては幸運だったのかもしれないなって思います。
ーーたしかに。
宮野:そこだけがベリアルとの違いだったのかもしれないって思うと、皮肉ですよね。何事もちょっとしたきっかけの違いなのかもしれないなって。
ゼロのキャラクター性が歌詞の背中を押してくれた
ーー『最新 ウルトラマン主題歌集 ウルトラマンZ』Disc 2には宮野さんの楽曲が2曲収録されていますが、どちらもウルトラマンゼロの成長を描いた楽曲だと思うんです。〈「守る」ことが「戦う」ってこと〉(「DREAM FIGHTER」)、〈守るべきものがある それが真実〉(「ULTRA FLY」)という歌詞は、いろいろな仲間が増えたり、慈愛の心が芽生えていったゼロの心境とシンクロしているように聴こえるんですが、振り返ってみると、どんな想いで作詞されましたか。
宮野:その時々で演じさせていただいているキャラクターがいるので、その想いは歌詞に込められています。でもウルトラマンシリーズの歌詞を書いたときに、今までの作詞の仕方と違うなと思ったのは、ゼロのキャラクター性が歌詞の背中をより強く押してくれた気がしたんです。僕が普段使わない言葉遣いをたくさん込めることができたのは、やっぱりゼロを演じているからこそだなって。僕の音楽活動では作品の存在が大切で、その想いがしっかりと自分のなかに刻き込まれるんですよね。演じているときも自分ごとのように感じて、それを歌詞にしていくという書き方なので、作品やキャラクターにはすごく背中を押してもらっています。
ーーでは、ウルトラマンゼロというキャラクターは、宮野さんのなかでどんな存在になっているんでしょう?
宮野:うーん......ひと言では表せないくらい、大切なものをたくさんもらったと思います。演じているなかで、「やっぱりウルトラマンってすごい」「ウルトラマンにしかできないことがあるんだ」と思った瞬間が何度もあって。例えば震災のとき、エンターテインメントを生業にしている人間として、ものすごい無力感を感じたんです。「あぁ......こういう危機が起きたときに僕らは必要ないんだ」って思いましたし、自分としては何をしたらいいのか見出せなかったんですよね。
でもそういう時に、ウルトラマンは言葉を発することができるんです。「ゼロとして子どもたちにメッセージを送ってあげてください」というお話をいただいたんですけど、そのときに「ウルトラマンなら言葉を届けることができる。やっぱりウルトラマンってみんなにとっての希望なんだ」と実感しました。自分がゼロとして出演したヒーローショーでも、子どもたちがウルトラマンを応援している姿を見ていると、「これだけ真っ直ぐな想いを生み出せるヒーローの象徴こそがウルトラマンなんだ」と思いましたね。
ーーなるほど。
宮野:『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』がまもなく始まりますけど、コロナ禍の今だからこそ絆や希望を届けたいですし、坂本(浩一)監督にも「みんなで力を合わせて立ち向かっていく大切さを伝えられる作品にしたい」という想いがあったので、主題歌の「ZERO to INFINITY」には、その想いを込められたらいいなと思ったんです。