宮野真守が語る、ウルトラマンゼロと主題歌を通して挑んだ表現 「ウルトラマンシリーズで描かれたことを今こそ見習うべき」

宮野真守、ウルトラマンゼロで挑んだ表現

どこにでも属せる柔軟性はゼロだからこそできる

ーーゼロってウルトラヒーローのなかでも際立ったキャラクターだと思うんですけど、そんなゼロだからこそ成し得たことって何だと思いますか。

宮野:初代の頃から、ウルトラマンが負けてしまったときの絶望感があるじゃないですか。「それでも人類はどう立ち向かっていくか」というメッセージもあったと思うんですけど、ゼロの場合は挫折に近いというか、もうちょっと精神的な部分を見せてきたと思うんです。勝ったり負けたりしながら頑張って闘っていくシーンに、より感情が見え隠れするというのが、さっき言った“ゼロの人間臭さ”を物語っているのかなと思います。

 特に「ULTRA FLY」を書いているときは、『ウルトラゼロファイト』を通してゼロが新たな力を手に入れていったんですけど、もっと印象的だったのは、膝をついて負けそうになったり、ゼロの力だけでは立ち上がれなくなってしまった瞬間なんですよね。でも、繋いできた絆があるから仲間が助けてくれたりして、「自分は一人じゃないんだ」っていうことをゼロ自身がどんどん知っていったと思うんです。最初は「俺一人でなんでもやってやるぜ!」と言ってたゼロが、仲間に支えられ、次第にニュージェネレーションの後輩たちを導く存在にもなっていくーーその成長の過程こそがゼロの魅力になっているのかなって思います。

「ウルトラマン列伝」第6クール主題歌OP映像「ULTRA FLY」宮野真守
新主題歌・DREAM FIGHTER 版「ウルトラマン列伝」PV

ーーとてもよくわかります。

宮野:なので自分で言うのもアレだけど、「ゼロ前/ゼロ後」みたいな感じがあって。ゼロの後から急に「ニュージェネレーション」という呼ばれ方になりましたし、ゼロって第7世代に入りきれない6.5世代みたいな感じですよね(笑)。たまに第7世代に混じってニュージェネレーションと一緒に闘ったりとか、かたや師匠からマントをもらってレジェンド枠にも入っていたりとか、自分で「ウルティメイトフォースゼロ」っていう別の仲間を作っちゃったりとか。どこにでも属せる柔軟性はゼロだからこそできることなのかなって思います。サッカーでいうとリベロみたいな(笑)。

ーー(笑)。ゼロは、ウルトラマンメビウスよりもさらに若手のホープとして登場し、活躍が認められると別宇宙でウルティメイトフォースゼロを結成してコミュニティを広げていきました。そして、ウルトラマンジードから見ればよきお兄さんであり、ウルトラマンゼットからすれば師匠でもあるという。

宮野:そうそう。ウルティメイトフォースは同僚ですよね。後輩だったゼロが、同僚を見つけてどんどん先輩になっていき、最終的には師匠になっていく。それこそすごいスパルタな修行をさせていましたもんね(笑)。

60秒予告篇『劇場版 ウルトラマンギンガS 決戦! ウルトラ10勇士!!』

ーー『劇場版 ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!』(2015年)のときに、ヒカルとショウの手を縛って一緒に崖を登らせるシーンは印象的でした(笑)。

宮野:はははははは。若手とはいろんな関わり方をしていて面白いですよね。またズルいのが、ゼロは誰にでも乗り移れる特徴を持っているので、変身する人間とのやりとりも乙なものですよね。まさかのサラリーマンになって通勤しましたから(笑)。

ーーですよね。『ウルトラマンジード』での、伊賀栗レイトとゼロのやりとりは本当に素晴らしくて。ウルトラマンと人間のコミュニケーションに、ああいうコミカルな描き方ができるとは思いませんでした。

宮野:いやぁ、面白いですよね。レイトに無理矢理変身させるシーンもたくさんありましたから。「待ってくださいよぉ、ゼロさぁーん!」ってレイトが言ってるのに、「うるせぇ、行くぞ!」みたいな(笑)。

『ウルトラマンジード』オープニングムービー! -公式配信-

監督やスーツアクターの方々と一緒にゼロを成長させていった

ーーその正反対ぶりがとにかく最高でした(笑)。でも、どうしてゼロはそこまで幅のあるキャラクターになっていけたんだと思います?

宮野:僕自身もそれまで声優として、監督やスーツアクターの方々とフレキシブルにコミュニケーションを取りながらキャラクターを成長させていったことって、あまりなかったんじゃないかと思うんですよ。例えば、映画によって監督が違ったりすると、「宮野さんが主体で行きましょう」という瞬間もあったり、「今までどうやってゼロを演じていました?」って逆に監督から聞かれることもあったりとかして。

 あと、だんだんゼロが自由なキャラクターになっていくにつれて、ゼロを演じる岩田栄慶さんとのやり取りが非常に面白かったんです。例えば、ゼロがめちゃくちゃコミカルに動いているところに、僕が声を乗せて新しいものが生まれていったりとか。

ーーへぇ!

宮野:グレンファイヤーの声を演じている関(智一)さんとのやりとりも面白かったんですけど、スーツアクターの方々がグレンとゼロに入って自由に動き回っているところに、僕と関さんがどんどんアドリブで声を入れていったりしましたね。

ーーとても面白いです。スーツアクターの動きと俳優・声優の方々の演技、美術セットや音楽が相乗効果となって物語が動いていくのは、特撮の醍醐味ですよね。

宮野:そうなんです。『ウルトラマンプレミア』に出演させていただいた時も、スーツアクターの皆さんとコミュニケーションを取って、現場でどういうポリシーを持って闘っているのかを聞かせていただきながら、一緒に作っていきたい気持ちがどんどん高まっていったので。画面を通して一緒に刺激し合いながら作っている実感があったので、そのなかでゼロというキャラクターに奥行きが出てきたんじゃないかなと思います。表面的にならないのは、みんなの愛情がしっかり注がれているからかなって。

ーー貴重なお話をありがとうございます。主題歌集の話に戻ると、他にも印象的な主題歌があれば教えていただけますか。

宮野:やっぱりV6さんが歌っている『ウルトラマンティガ』の曲(「TAKE ME HIGHER」)は印象的でした。長野(博)さんが主演で、久しぶりに平成ウルトラマンとして『ティガ』が出てきたときはカッコいいなと思ったし、曲もスタイリッシュだったから印象に残っています。

V6 / TAKE ME HIGHER(YouTube Ver.)

ーーやっぱりスタイリッシュさは大切なんですね。

宮野:そうですね、タロウに通ずるスタイリッシュさ(笑)。タイプチェンジして闘うようになるのもティガからだし、あれはカッコよかったなぁ。

ーーティガは宇宙からやって来たウルトラマンではないんですよね。平成3部作(『ウルトラマンティガ』『ウルトラマンダイナ』『ウルトラマンガイア』)からはウルトラ兄弟という設定を一新したことで、それまでのシリーズとはまた別の物語を展開していったことも斬新でした。

宮野:そうそう、また違う世界線になっていくんですよね。ゼロは時空も超えられちゃうので、ダイナやコスモスのような違う世界のウルトラマンとも共闘できちゃったという(笑)。でも自分自身も、つるの(剛士)さんとご一緒させていただけたり、高見沢(俊彦)さんの曲にも参加させてもらえたりしたので、ウルトラマンシリーズに参加している一員として、いろいろな経験をさせてもらいました。

ーーゼロと同じように様々な世界に飛んで行けたわけですね。

宮野:時空を超えて連れて行ってくれましたよ、それこそイージスの力で(笑)。『輝く!日本レコード大賞』で歌えたのは一生の思い出ですね。ウルトラマンシリーズの曲をメドレーで歌わせてもらったんですけど、やっぱり誰もが知っている曲じゃないですか。それがすごいなと思いながら、大事に歌わせていただきました。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる