宮野真守、なぜ各方面から支持される? 変幻自在に演じ分ける卓越した表現力に注目

宮野真守、各方面から支持される理由

 アニメの声優、映画の吹き替え、アーティスト、役者、バラエティ番組など、各方面から引っ張りだこの宮野真守。吹き替えでは、エディ・レッドメインが演じた『ファンタスティック・ビースト』シリーズのニュート・スキャマンダー役や、ジョニー・デップが演じた『チャーリーとチョコレート工場』のウィリー・ウォンカ役が有名。アニメでは、『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズの一ノ瀬トキヤ、『文豪ストレイドッグス』シリーズの太宰治、『Free!』の松岡凛など当たり役を挙げればきりがない。そこで本稿では、ファンだけでなく制作サイドをも感嘆させる魅力を考察したい。

主役でも脇役でも存在感を発揮する万能性

宮野真守『アンコール』

 宮野は、現在アニメ『さらざんまい』の新星玲央、『キャロル&チューズデイ』のDJアーティガンの声を担当し、主人公を凌駕するほどの存在感を示している。

 『さらざんまい』は、設定もストーリーもぶっ飛んでいるが、宮野が演じる新星玲央もかなりのくせ者キャラクター。金髪のイケメン警官で、細谷佳正が演じる相棒の阿久津真武と共に、妖艶にダンスをしながら挿入歌「カワウソイヤァ」を歌うシーンが話題だ。同曲は和風の電波ソングテイストの楽曲で、それをとんでもない美声で歌うのが実にシュール。一見イケメンだが内面に闇を抱えたような役柄は、これまでにも数多く演じており、宮野の得意とするところだろう。突き抜けた演技によって、視聴者を世界観へと引き込んでいる。

 また『キャロル&チューズデイ』のDJアーティガンは、大観衆を沸かせるEDMのスーパースターという役。自信家の大金持ちのため、一見鼻持ちならないキャラクターではあるが、どこか憎めないキュートさがある。ギャップのある内面を1人のキャラクターのなかで、違和感なく融合させているのは宮野の演技力によるものだろう。主人公の2人組キャロルとチューズデイがアーティガンの自宅を訪問してプール付きの豪邸が火事にしてしまうエピソードがあったが、普段はクールなアーティガンのうろたえぶりといったら最高に見応えがあった。

 現実には存在しない役柄を演じるのは、正解がない故に非常に難しいことだ。しかしそれを観た者に、こういう絵のキャラクターならこういう声だよねと、共感してもらわなければアニメは成立しない。時には視聴者をねじ伏せるほどの声の説得力が必要なのである。宮野にはその説得力がある。宮野が声を発した瞬間、そのキャラクターに命が吹き込まれ、宮野とキャラクターが一体化するような感覚さえ感じるときがある。また主人公だけでなく、名バイプレーヤーとしてもその存在感を発揮できる器用さは実に希有だ。どんなに難しい役でも見事にこなし、周りをも輝かせることができる。まさに万能薬。こんな声優なら、キャスティングサイドが放っておかないのもうなずける。

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