怒髪天 増子直純 × ナイツ 土屋伸之が語り合う、“ウルトラマンシリーズ愛” 歴代主題歌の魅力から表現に与えた影響まで

怒髪天増子×ナイツ土屋の“ウルトラマン愛”

 『最新 ウルトラマン主題歌集 ウルトラマンZ』が10月21日に発売された。この作品は、初代ウルトラマンから現在放送中の『ウルトラマンZ』に至るまで、54年間のテレビシリーズの主題歌がコンパイルされた2枚組の作品である。ジャズや歌謡曲を取り込みながら合唱団の美しい歌声で聴かせた昭和シリーズの主題歌から、次第にダンスミュージックやロックと融合したJ-POPへ進化していった平成初期の主題歌たち、そしてメタルやヒップホップまで吸収しながらアニメソングとしても抜群の強度を誇るようになっていった近年の主題歌たち。この作品を聴くだけで、ウルトラマンシリーズの歴史だけでなく、50年にわたる日本のポップスの歴史まで総ざらいできるのが、非常に面白いところだろう。

 そんなウルトラマン主題歌の魅力を語るべく、リアルサウンドでは2回連続の企画展開を行っていく。第1回はウルトラマンシリーズをこよなく愛する2人、怒髪天・増子直純と、ナイツ・土屋伸之による対談である。ウルトラマンシリーズ同様、ロックバンドと漫才はともに長い歴史を持ったカルチャーであるが、怒髪天もナイツも先代へのリスペクトを捧げつつ、時代のなかで独自の道を切り開いてきた正真正銘の実力者である。そんな2人に、歴代主題歌の魅力についてはもちろん、幼少期のエピソードやお気に入りの怪獣、そしてステージに立つ者としてウルトラマンから受けた影響まで、様々な角度から熱く語ってもらった。ウルトラマンファンもそうでない方も、ぜひ楽しんで読んで欲しい。(編集部)

「何代目って受け継がれていくバルタン星人は落語家さんみたい」(土屋)

ーー自分は『ウルトラマンティガ』〜『ウルトラマンダイナ』あたりからリアルタイムでウルトラマンを見始めた世代なんですけど、まずはお二人にとって、思い入れの強いウルトラマンのエピソードから聞かせていただけますか。

土屋伸之(以下、土屋):僕は1978年生まれなので、『ウルトラマン80』もリアルタイムでは見ていない世代でして。昭和のウルトラマンを全部再放送で見ながら、図鑑とかで調べているような子どもでしたね。小学生の頃は自分で新しいウルトラマンを作ったりして、円谷プロダクションに就職したいと思ってずっと研究していました(笑)。中学生になっても変わらず好きで、周りの友達がウルトラマンを卒業してもずっと研究は続けていましたから。ウルトラマンの握手会も4つ下の従妹の引率みたいな顔して行ってましたし(笑)、小学生の列に一人だけ170cm近い自分が並んで、恥ずかしいなって思ったのは覚えています。

ーーその気持ち、よくわかります(笑)。

土屋:それを察したのかウルトラマンも握手のときにすごく力強く握ってくれて、「頑張れよ!」っていうのを感じましたね(笑)。特に僕は『ウルトラマンA』が好きでした。昭和のウルトラマンのオープニングって毎回影絵みたいになっている怪獣が出てくるじゃないですか。自分は必殺技とかを図鑑でいろいろ研究して、どういう動きを使ったら面白いオープニングになるかとか、そういうのを編集して漫画みたいにコマを描いたりしながら、何回もオリジナルを作っていましたね。エースの歌とギロチンショットの必殺技が一番カッコよかったので、そのオープニングを勝手に作ったりとかして(笑)。

土屋伸之

ーー創作に没頭した子供時代だったんですね。増子さんはいかがですか?

増子直純(以下、増子):俺は1966年生まれなので『帰ってきたウルトラマン』世代で。それより前は再放送で見たんだけど、一番好きなのは『ウルトラセブン』かなぁ。大人向けだからね。『セブン』は曲も本当に良くて、シンバルがチンチンチンチン......って鳴ってる感じとか、ホーンも入ってたりしてちょっとジャズっぽい歌になっていて。そこからの『帰ってきたウルトラマン』なわけだけど、今考えるとすげえタイトルだよなあ。帰ってきたんかいって(笑)。

土屋:ははははは。たしか(主人公の)郷秀樹ってーー。

増子:そうそう、郷ひろみと西城秀樹なんだよね。

土屋:でも、2人が売れる前から「郷秀樹」の名前が先にあったんですよね。てっきり合わせた名前だと思って調べたら、当時まだ郷ひろみさんが無名で、西城秀樹さんもデビュー前だったらしくて。

増子:えぇー!

土屋:その後にあの2人が出てきたってすごくないですか?

増子:予知能力だ(笑)。ウルトラマンも宇宙人ですからね。

ーー(笑)。

増子:あと、俺はどちらかというと怪獣とか宇宙人の方が好きなんだよね。怪獣のオモチャも大好きで今でもいろいろ買ってますけど、オモチャとしての出来がいいやつ......『ウルトラマンパワード』の怪獣とか最高だったな。昔の怪獣のリメイクで、現代風に生物っぽくなっているのが良かった。『セブン』の宇宙人も大好きだし、成田亨さんのデザインが素晴らしくて......!

増子直純

ーー増子さんお気に入りの怪獣は何でしょう?

増子:キングジョーが今でもすごく好きで。体がバラバラになって飛んでくるシーンがあるんだけど、あれはカッコいいよなあ。世界的にもかなり画期的だったんじゃないかな。

土屋:体が4つに分かれて飛んでいくじゃないですか。そのとき上半身がすごいポーズになってて、どういう思考回路でこうやって飛ばそうと思ったのかなって(笑)。あんな発想ないですよね?

増子:ない! すっごいカッコよかった。そしてあんなに硬そうだったのに、戦ってるときグニャグニャだったよね(笑)。でもめちゃくちゃ強いし、「ピコピコピコー」って音がずっと鳴っているのもいいんだよなぁ。あと好きなのが恐竜戦車! あれは最高でしょ。びっくりしたもんね。強いものと強いものの掛け合わせというか、「つなぎ目どうなってんだ?」っていう(笑)。

ーー戦車の上にそのまま恐竜が乗っているという(笑)。

土屋:わんぱくですよねぇ。トンカツ牛丼みたいなもんですから。

増子:しかも戦車のいいところって砲台なのに、キャタピラーだけなんだっていう(笑)。

土屋:最終的にめちゃくちゃ戦いづらそうでしたもんね(笑)。

増子:斬新だったなあ。キングジョーと恐竜戦車はやっぱり別格かな。何かオモチャ出たら必ず買っちゃうもんね。

土屋:僕はバルタン星人かな。何代目って受け継がれていくのが落語家さんみたいで、僕も寄席芸人として通じるものを感じるんですよね。本当に伝統芸能に近いというか、分身の術とかも昔の忍者から来ているものだし、「フォッフォッフォ」っていう声も鉄板ギャグみたいな感じですよね。みんなが知ってて、何代目までも繋いでいけるのは普通の敵キャラではないですから、すごいなぁと思います。

増子:デザインもすごいし、たぶん敵キャラでは一番人気あるんじゃないかなぁ。“ウルトラマンの敵”といえば、バルタン星人。

「怪獣の悲哀は大人になってからわかってきた」(増子)

ーーバルタン星人は『ウルトラマン』第2話での登場でしたけど、その時点で宇宙人の全てをやり切っちゃったくらいの感じでしたよね。分身の映像もすごかったですし。

土屋:そうそう。あのときバルタン星人は20億人を連れて地球に乗り込んできて、「住ませてくれ」って言ってきたんだけど、地球人は「今20億人以上が住んでいるから無理だ」って断るんですよね。でもそこから50年経って、今や70億人超えているじゃないですか。だからあのとき受け入れてもギリいけたんじゃないかなって(笑)。

増子:技術的にもバルタンの恩恵ありそうだもんね。

土屋:人類がまだ20億人しかいない時代から、ウルトラマンシリーズが続いているのはすごいですよね。『スター・ウォーズ』の11年前って考えると、当時の技術はすごかったなって。

増子:ストーリーも深いからね。『セブン』は実相寺(昭雄)監督の話とかそうだけど、クセが出ているというか。

土屋:メトロン星人の回ですよね(第8話「狙われた街」)。

増子:そうそう。あのボロアパートが開くところ、「どうなってんだよ?」って思ったけど(笑)。

土屋:しかも『ウルトラマンマックス』でまた出てきましたからね(第24話「狙われない街」)。

増子:あれもカッコいいんだよなぁ。新しいメトロン星人は白髭になって、体が真っ二つになったところを縫ってつないでて。切られたのに大丈夫だったんだっていう(笑)。

土屋:怪獣倉庫でキャラクタースーツを修繕するおじさんが匿ってくれて、傷も縫ってくれてたという。この愛情ですよ(笑)。

増子:「もう争うまでもない。待っていれば自然と人類は滅びるだろう」ってメトロン星人に思われているという。素晴らしいよね。

ーーやはり好きなシーンが尽きないですね。

増子:ウルトラマンに育てられて、いろいろと教わったことがあるからね。勧善懲悪とか。ただ、怪獣の悲哀とかは、大人になってからよりわかってきた感じがあるかな。子どもの頃は「やっつけろー!」しか思わなかったけど、怪獣側にやっつけられる理由なんかほぼないんだよね。ただ寝ていたところを起こされただけとか。もともと人間よりも先に住んでいたのに、なんで倒されなきゃいけないのかって。だからウルトラマンもなるべくそのまま帰してやりたいんだろうけど、怪獣ってどうしても言うこと聞かなかったりするから。

土屋:その葛藤はすごいですよね。円谷プロの方がある本で、「バラエティ番組だとしたら、ウルトラマンがホストで、怪獣は毎週来るゲストだ」って言ってて。だから毎回ゲストがおいしくなるように話を持っていって、ゲストの面白さにスポットライトを当てて終わらせるようにしているから、他のSF作品と違ってウルトラマンっていまだに怪獣が愛されているんだろうなって思います。

増子:なるほど。そう考えると、確かに攻撃自体がツッコミだよね。ちゃんと丁寧にツッコんでから、「出たー!」っていう必殺のツッコミで終わるという。

土屋:そうなんです。割と落ち着いて闘う初代ウルトラマンはタモリさんで、兄弟揃ったときに主役になるウルトラマンタロウは場を回していく明石家さんまさんかな、とか思ったりしましたけどね。芸人になってから(笑)。

ーー(笑)。タロウって末っ子気質でちょっとお喋りな感じありますもんね。

土屋:そうそう、一番ひょうきんな感じがあるから。

増子:名前もタロウだし、人間っぽいよね。エースからタロウになったときはびっくりしたもん。「タロウ!?」っていう(笑)。

土屋:タロウの話ってタイトルも面白くて、「タロウの首がすっ飛んだ!」とか「ゾフィが死んだ! タロウも死んだ!」とかね。オープニング見て、「あ、今日タロウ死ぬんだ」って思いましたよ(笑)。

ーーははははは。

増子:浜村淳さんの映画紹介みたいだよね。「もう言っちゃうんかい、全部!」って。

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