ジョン・レノンの音楽は、なぜ日本のアーティストたちに歌われるのか? 言葉を超えて伝わる純粋なまでのメッセージ性

ジョン・レノンの音楽は、なぜ日本のアーティストたちに歌われるのか? 言葉を超えて伝わる純粋なまでのメッセージ性

 感じたことをそのまま、まっすぐに唄う。何かに屈することなく、包み隠さず、躊躇しないで、自分の思いを、感じたことを訴える。そしてそこにある意志や主張はまったく純粋で、まっさらなもの。

 ジョン・レノンのこうした歌や、それに準じた生き方は、世界中の人々に多大な影響を与えている。それは日本で音楽を作っているアーティスト、ミュージシャンにおいても同様だ。

 まず、現在も活躍する日本の音楽家でジョンからの影響を感じさせる筆頭格としては、サザンオールスターズの桑田佳祐が思い浮かぶ。もともとロックやポップスへのオマージュ、または引用が多い人だが、ジョンについて言えば、たとえばソロ作『MUSICMAN』収録の「現代人諸君(イマジン オール ザ ピープル)!!」はその読み自体が「イマジン」のフレーズからである(桑田はリリース前にオノ・ヨーコに許諾を得たのだそう)。また、同じくソロ楽曲の「影法師」は音響から曲の空気感まで「マザー」を意識していると思われる。桑田自身、The Beatlesではポール・マッカートニー派であると発言しているが、ジョンからもらったものも大きいことは間違いない。

桑田佳祐 – 現代人諸君(イマジン オール ザ ピープル)

 その桑田とともにジョンのカバーを演奏したことがあるのがMr.Childrenだ。1995年に桑田佳祐&Mr.Childrenとして行ったライブ(『LIVE UFO ’95 桑田佳祐&Mr. Children “Acoustic Revolution with Orchestra” 奇跡の地球(ほし)』)では、セットリストにロック/ポップスの名曲がズラリと並び、ジョンのソロからは「マザー」「オー・マイ・ラヴ」「ハウ?」「コールド・ターキー(冷たい七面鳥)」が選ばれている。この時期、両者にとって小林武史の存在は大きく(彼はサザンや桑田とも関わりが深い)、その小林は自身がプロデュースしたMr.Childrenの『深海』やYEN TOWN BANDがジョンの音楽性から大きく影響されていることを認めている(『Pen』誌 2020年2/1号掲載のインタビューより)。

 『深海』のリリースから4年後、Mr.Childrenはアルバム『Q』収録の「Everything is made from a dream」の歌詞でブルース・リーとともにジョンの名前を挙げ、〈あの情熱を あの感動を遺伝子に刻もうか〉と唄っている。また桜井和寿は、小林とギターの田原健一との3人でACID TESTというユニットを組み『Dream Power ジョン・レノン スーパー・ライヴ2001』に出演し、「マザー」をカバー。この曲は期間限定で配信リリースされた。

Mr.Children – Everything is made from a dream

 この『ジョン・レノン スーパー・ライヴ』はヨーコ主宰によるもので、ジョンやThe Beatlesの曲を多数のアーティストが演奏するイベント。2001年から2013年まで開催されたのだが、これに最多出演したのが奥田民生だった。彼はこの場で、すでにレパートリーとしていた「ヘイ・ブルドッグ」はもちろん、「夢の夢」「真実が欲しい」など、演奏曲を毎回変えて参加している。

 同イベントで奥田民生と共演した斉藤和義と吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)も、ジョンの音楽に傾倒しているアーティストだ。吉井はソロ作でその色合いが強く、YOSHII LOVINSON名義による「WHAT TIME」では歌詞にジョンが出てくるほか、バラード曲「STRONGER」は、これもまた「マザー」の世界を踏襲したかのような独白調になっている。

吉井和哉 – STRONGER

 かたや「ジェラス・ガイ」に日本語詞を当てたカバーを発表している斉藤は、自分の曲中でジョンの名前を幾度となく挙げている。「レノンの夢も」「五秒の再会」「Don’t Cry Baby」「いたいけな秋」……。そもそもデビューシングルは「僕の見たビートルズはTVの中」だったわけで、ジョンからの影響についても正直に表しているということだろう。

 と、こうして楽曲の詞の中に表れるジョン・レノンについて探してみたところ、ちょっと興味深い記事を発見した。もう10年も前のニュースだが、2010年当時のオリコンの調査によると、実はジョンは「邦楽で最も歌詞に引用された人物」の1位に輝いていたのだ(参考)。

 これ以降、現在にいたるまでの10年間で世に出た楽曲の数も膨大だが、それでもこの傾向はまだ続いている気がする。というわけで、僕なりに“ジョン・レノン”、さらには“ジョンとヨーコ”などとワードを変えながら、新旧の日本の歌の中でのジョンを探してみた。

 この代表例として真心ブラザーズの「拝啓、ジョン・レノン」が挙げられるのはわかっていたが、それ以外の楽曲でもジョンの名は頻出している。あいみょん「どうせ死ぬなら」、End of the World×Epik High「Sleeping Beauty」、UVERworld「パニックワールド」、ASIAN KUNG-FU GENERATION「稲村ヶ崎ジェーン」「Little Lennon/小さなレノン」、あっこゴリラ「GREEN QUEEN×PARKGOLF」、石崎ひゅーい「友達」「アンコール」などなど……。

あいみょん「どうせ死ぬなら」(Official Video)

 以後も続々と検索でヒットし、その数には驚くしかない。ここからは歌詞にジョンを登場させたアーティストの名前のみ、まったくの順不同でご容赦願う。若旦那(湘南乃風)、The Birthday、石橋凌、フジファブリック、THE ALFEE、BiS、毛皮のマリーズ、谷村新司、CHAGE and ASKA、GRAPEVINE、BLANKEY JET CITY、RED WARRIORS、イルカ、森山良子……そう、もはや時代も世代も、そしてジャンルも音楽性も超越して、ジョンは唄われているのだ。また、この中でちょっと意外だった事実として、RIP SLYME、PUNPEE、KOHH、SALU、AK-69……そう、ラップ/ヒップホップ界隈のアーティストもじつに数多くジョン(とヨーコ)をライムにしていることも記しておこう。

 それにしてもすごい数である。僕は2年前、ジョンのソロ2作目の『イマジン』がリイシューされた時にもリアルサウンドに寄稿させてもらっていて(ジョン・レノン『イマジン』が今なお絶大な影響力を持つ理由 青木優の10000字ロングレビュー)、そこでこのタイトル曲とジョンがいかに日本の音楽の歌詞に出てきたのかを調べている。今回はその検索の内容をもう少し広げてみたわけだが、ジョン、そして彼とヨーコのことがかなり特別なものとして捉えられていることが把握できた。

 こうした歌詞でのジョンの取り上げられ方はさまざまだ。個人的な思い出の中で彼の歌や亡くなったことを唄う人もいれば、尊い存在や歴史上に残るアーティストとして唄っている歌もあるし、ジョンとヨーコを理想の、あるいは究極の男女関係のように描いている曲もある。ただ、そうした楽曲の数々に接してみた中でも、真心ブラザーズの歌はグッと大胆に踏み込んだものだったと、あらためて思い直したりする。

[真心ブラザーズ 『拝啓、ジョンレノン』

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