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ポール・マッカートニー、来日公演の“オールタイムベスト”に込められたメッセージ

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 ポール・マッカートニーによる『フレッシュン・アップ ジャパン・ツアー2018』の幕開けとなった10月31日の朝。テレビを点けると、「とくダネ!」司会の小倉智昭さんがポールについて話していた。大ファンである西武ライオンズが(同時期に開催された)日本シリーズ進出を果たせなかったことを悔やみつつ、おかげで気兼ねなく東京公演に行けるとのこと。音楽について語っているときの小倉さんは、いつだって表情がキラキラしていて最高である。

 それから数時間後。同ツアーの会場である東京ドームに足を運ぶと、同じようにキラキラした笑みをそこかしこで見かけた。その年齢層は実に幅広い。制服姿の女子高生に大学生っぽい集団、カップルや子連れの夫婦、重役クラスと思しきオジサマや、1966年のビートルズ初来日も観ていそうなご年配の客まで。はたまたポールやウイングスのシャツを着た正統派(?)のファンから、They Might Be Giantsのパーカーをわざわざ着てくる音楽オタクまで。クラスタの壁を超えて、いろんなタイプの人たちがポール見たさに集まり、写真をパシャパシャ撮っている。洋楽市場がどんどんニッチ化していくなか、そこには夢みたいな光景が広がっていた。これほど老若男女が広く集まるイベントが、他にどれくらいあるだろうか。

 ポールは2013年を皮切りに、ここ数年はハイペースで来日しているが、ハッピ姿でやってくる度に社会現象レベルのフィーバーを巻き起こしている。この日も当日券こそ出ていたが、ほとんど満員と言ってよさそうな入りだった。もちろん、熱心なリピーターも相当数いるのだろうけど、念願の初ポールを観に来た人も少なくないはずだ。忘れられない思い出がある人もいれば、観光地を訪れるようなミーハー感覚で来ている人も、ポップの頂点を拝みに来た人も、つい最近ストリーミング経由でファンになった人も、一曲も知らないけど何となくついてきた人もいるかもしれない。

 だからきっと、オーディエンスのなかには十人十色のポール/ビートルズ像があると思う。そういった期待、それぞれの人生の全てに応えるようなパフォーマンスを、ポールは見せてくれた。76歳を迎えた彼が、最新アルバム『Egypt Station』で36年ぶりの全米チャート1位に輝き、今もポップミュージックの最前線にいる理由をそのまま体現したようなステージだった。

 ビートルズの「A Hard Day’s Night」、ウイングスの「Hi, Hi, Hi」で威勢良くオープニングを飾ると、「こんばんわ東京、ただいま!」と日本語で挨拶するポール。ここから「All My Loving」までは若干の予定調和っぽさも感じられたが、4曲目の「Letting Go」で、アリーナ席に現れたホーンセクションの演奏が入ると、アンサンブル全体が見違えるほど“フレッシュン・アップ”されたものになり、客席からも手拍子が沸き起こる。

 このホーン隊が、今回のライブではひたすら冴えていた。『Egypt Station』から披露された「Come On to Me」でも効果てきめんで、楽曲にグルーヴをもたらしている。吹き荒れるブラスサウンドを耳にして、ウイングス全盛期の傑作ライブフィルム『ロックショウ』を思い浮かべたファンも多いだろう。あるいは、ここ数年ブラックミュージックが更新されていくなか、ブラスサウンドの魅力が見直されている傾向にあったので、そういう機運をポールも見逃さなかったのかもしれない。そして、さらに驚かされたのが、この曲のアウトロで「イェー、イェー!」と叫ぶポールの声。大ベテランが新曲でここぞとばかり、最高潮のボーカルを絞り出す光景は、アーティストのあり方として理想的だと思った。

 ベースからエレキギターへと持ち替えてきたポールは、続く「Let Me Roll It」「I’ve Got a Feeling」でブルージーな展開を見せると、今度はピアノの前へ。妻のナンシーに捧げた「My Valentine」や、ソロ屈指の名曲「Maybe I’m Amazed」などを高らかに歌い上げる。重厚なギターロックからメロウなバラードまで。計算し尽くされたセットリストで客席の隅々まで支配してしまうあたりは、元祖アリーナロッカーの面目躍如だろう。そこから今度はアコギに切り替え、「I’ve Just Seen a Face」「Love Me Do」といったビートルズ初期のナンバー、はたまた前身バンド=The Quarrymen時代の「In Spite of All the Danger」まで飛び出すと、ここから先はポールの独壇場だった。

      

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