桜田通が信じ続ける、コミュニケーションが生み出す希望 「人との関わりにおいて、思考を停止させたくない」

桜田通が信じる、人と人が生み出す希望

『今際の国のアリス』は深いメッセージをたたえた作品

ーー先日、アミューズが、誹謗中傷、デマ情報、憶測記事に対する声明を出されましたよね。芸能事務所があのような声明を出すのはインパクトがありましたし、世の中が変わっていく時期なんだなと感じました。

桜田:悲しんだ人や傷付いた人が残していった影響を正しく受け取って、世の中が少しでもいい方向に動けばいいですよね。「自分以外の人は不幸になれ」って心から思っている人はいないって、僕はまだ信じているので。これからは、俳優も個人の生き様が問われる時代になっていく。僕もいま、事務所の方と、プロダクションとアーティストの関係性とか、そういうことを話し合っています。お互いにとっていい未来を探すために、皆で手を貸し合っていると感じます。

ーーコロナ以降、エンターテインメントのあり方が急速に変わってきています。俳優としては、今後どのような見せ方をしていきたいですか?

桜田:自分がどこまで先を見て行動できているかわからないんですけど、作品に出る権利が、より争奪戦になることは明らかだと思っているんです。単純に、作品を作るために必要なスポンサーが少なくなってきていますよね。そうすると、大きなお金をかけられる作品が限られていくから、作品数がめちゃくちゃ減るはずなんです。今後も争奪戦には勝負していくけれど、どういう作品に出て何を伝えたいかっていうことに、いままでより焦点を絞っていかなきゃいけないと思っています。いままでは、キャリアを見据えて作品を選んだり、あやふやなチャンスに懸けてみたりする瞬間もあったんですけど。これからは、もっと鋭い視点を持って、自分にとっても観てくださる方にとっても、意味のある作品を選んでいきたいです。

ーーよく役者さんが“いい作品”に出たいっておっしゃるじゃないですか。人によって定義の異なる言葉だと思いますが、桜田さんにとって“いい作品”ってどんな作品ですか?

桜田:見てくださる方の心に波をどう立てるか考え抜いた上で、皆で協力して作っていく作品が、僕にとっての“いい作品”ですね。特に最近は「なぜこの作品を作るのか」「どこに向けて作りたい作品なのか」「見た人にどう感じてほしいのか」を重視しています。ちょっと怖いシーンや、人を傷付けるシーンがあっても、観た人がその作品から何かしらメッセージを受け取って、前向きに消化していけるかが大事だと思っています。

ーー12月10日にNetflixで配信予定の『今際の国のアリス』は、いい作品ですか?

桜田:いい作品です(きっぱり)! 原作の最終話を読んだときに、本当に強いメッセージを持つ物語だと感じました。作品としてのメッセージは、シーズン1だけでも十分伝わると思います。続編が作られるかわからないですけど、もしシーズン2、シーズン3……と続いていって、形は違えども原作の最終話と同じメッセージを描けるのであれば、これからの時代にすごく刺さる作品になるんじゃないかな。メッセージが深すぎる作品ですけど、物語の本質が多くの方に届くと嬉しいです。

ーー楽しみですね。今回のインタビューで「ファンの皆」という言葉が多く出てきましたが、ファンクラブ「Sakura da Space Society」は、今後どのように進化していくのでしょうか?

桜田:従来のファンクラブって「チケットが優先して買えて、たまにレポートが上がります」みたいな容れ物でしたけど、僕がファンクラブを通じてやりたいことは、それとは異なっていて。先輩とか……佐藤健氏がYouTubeチャンネルで色々な企画をやっていますが、あれを見ていて思うのは、俳優もさまざまなプラットフォームを使って、個々に発信する時代になるんだなっていうこと。参加させてもらった「TAKERU NO PLAN DRIVE」もそうですけど、プラットフォームを上手に使えば、ファンの方と深くつながれる瞬間が増えると思います。僕にとってその基地となるのが、ファンクラブなんです。いままで「こうあるべき」とされていたルールとかしがらみみたいなものは、一旦脇に置いて、皆が平和で正しく生きられる場所を生み出したいと考えています。

ーーより多くの人に見られることが「正解」ではない?

桜田:そうですね。僕のことをなんとなく知っている100万人より、僕を深く知ってくれている10万人のほうが大事。もっとはっきり言うと、僕がいま一番大事にしているのは、ファンの皆さんなんですよ。僕の中ではもう、ファンっていう枠を超える存在ですけど。めちゃくちゃ視聴率がいいドラマに出て知名度を上げることも大事ですし、出られる権利があるなら、それはありがたく出させていただきますけど。でも、何かを選択したり、発信したりするときは、身近な人たちのことを一番に考えてやっていきたいと思っていて。それを続けていけば、いつかその人数が100万人になるって信じています。

ーーファンの皆さんとの良好な相互関係が築けるといいですよね。アーティストとファンが影響を与え合うことで、良質なコンテンツが生まれると思うので。

桜田:そういう意味でいうと、いまおかしな現象が起きていて……。最近、なぜか媒体主催のランキングに入れていただくことが多くなっています(笑)。そういうのって、僕が載りたいと言ったところで載れるものではないじゃないですか。僕のことを知って、なんかいいなと思った人たちが、押し上げてくれているんですよね。それが嬉しくもあり、恥ずかしくもあり、照れくさくもありっていう。これまで芸能界で言われていた「売れていく」「影響を与えていく」っていう文脈とは違うあり方を、ファンの皆と一緒に見つけていきたいなと思っています。

ーー最後に、これだけは伝えておきたいということがあればお聞かせください。

桜田:これは以前から言っていることなんですが、「人にやさしくあれ」と伝えたいですね。僕も知らないうちに人を傷付けているかもしれないし、「これは違うんじゃない?」と思うことには、たとえ言い合いになったとしても声を上げていきますけど。時々、ファンの方から「通くんはああ言っていたけど、私はこう思います」ってメッセージをいただくことがあるんです。そういうメッセージを見て「確かに言葉が強かったかもしれない。ちょっと謝らなきゃ」と思ったときは、ファンクラブを通じて「さっきは言い方が強かったけど、実はこういう思いがあって……」と、対話を重ねていきたい。オンラインでもオフラインでも、人との関わりにおいて、思考を停止させたくないんです。自分の思考が伝染していけば、あるとき全く別の思考と交わることがある。そういった、人と人とが生み出す希望のようなものを、信じ続けていきたいですね。

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『Sakura da Space Society』
桜田通 オフィシャルサイト

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