ゴールデンボンバー 鬼龍院翔が明かす、オンラインライブへの意識と今後 「アーティスト同士は刺激しあうべき」

鬼龍院翔が明かす、オンラインライブへの意識

 配信ライブ『ゴールデンボンバー有料無観客ライブ「去年の無人島より100倍マシ ~電気があるって素晴らしい~」』を経て、様々な配信イベントに出演しているゴールデンボンバー 。鬼龍院翔にライブを振り返ってもらった前編に続き、後編では配信におけるこだわり、楽曲制作へ向き合う心情の変化などについて聞いた。鬼龍院の素直な思いが聞ける貴重な内容となっている。(編集部)

「ユーザーになったときに不便に感じたことを全て改善するつもりで臨んだ」

――今回の経験を経て、8月29日には『a-nation online 2020』、30日には『CRUSH OF MODE -ENDLESS SUMMER’20-』に出演、そして9月26日には『氣志團万博2020』が控えています。(※9月4日に眉村ちあきとの2マンライブも発表された)

鬼龍院:『CRUSH OF MODE』は結構前からお話をいただいていて、ゴールデンボンバーにとっての初めての有料無観客配信ライブになる可能性があったんです。対バンもめっちゃすごいじゃないですか。

――筋肉少女帯、cali≠gari、メトロノーム、NoGoDと、そうそうたる対バンでした。

鬼龍院:だから、配信ライブ初心者が出て、痛い目に遭うのは嫌だったんです。自分たちのワンマンをやって、自分たちの無観客配信ライブスタイルを確立してからの方が、バンドとして得策なんじゃないかという計算もあったりして。だから、8月1日は、今考えうる限りのパフォーマンスをやって、その反応を確かめたかったんです。ニコニコ動画で配信すると、コメントで何がウケたかスベったかが、数秒後に目に見えてわかるのがいいですよね。終わってからも、アーカイブ動画で何度か観て、色々と確かめた上でイベントに出たかった。「このギミックなら一見さんでも理解してくれる」というネタが分かったので。

――『a-nation online 2020』はYouTubeでの無料配信、『CRUSH OF MODE -ENDLESS SUMMER’20-』はツイキャスでの有料配信と、ちょうど無料・有料と分かれましたね。

鬼龍院:やっぱりパフォーマンスする上で、まず気をつけているのが、無料・有料のどちらかなのかで、そこで結構やることが変わってくるんです。

――前編でもおっしゃっていたように、有料の場合は様々なハードルを越えてライブを観てくれているので、観る意識が違ってくると。

鬼龍院:そうですね。その上で、お客さんはスマホやパソコンなど、どの媒体で観ているのかを考えます。観る人がどんな環境で観ているのかを一旦頭に叩き込んでからライブパフォーマンスを考えていくんですよね。

――どちらも拝見させていただきましたが、たしかにそれぞれの客層に合わせたパフォーマンスだったと感じました。

鬼龍院:『a-nation』では対バンさんや他の出演者の方をいじったネタをできたけど、『CRUSH OF MODE』では思いつかなかったのが心残りです(笑)。

――きっとしばらくは、ネット配信という形をとったイベントやフェスは続くはずです。今後についての考えも聞かせてください。

鬼龍院:こういう記事で横文字を使うのは、僕には似合わないから、あんまり使いたくないけど、マーケティングリサーチというか、お客さんが何を望んでいるのか、何を不便に思っているのかを考えていくのが重要になってくるんじゃないでしょうか。そういうことが、これまでよりもわかりにくくなっていると思うので。

 例えば、僕が以前からやっているソロ公演『ひとりよがり』では、ステージが見えにくい席のお客さんに対して、一言「見づらくなってすみません」と声をかけるんです。その一言があるかないかで、ライブに対する心持ちって、だいぶ変わってくるじゃないですか。現場だと、それを自然とやっているプロの方ばかりですが、配信になると、どうしてもスタッフさんだよりになってきて、そういう心がけがおろそかになってくる。それは良くないですよね。

 僕は自分の配信ライブの前に、友人のバンドから大御所まで、色んなアーティストの配信ライブを観まくりました。自分自身がユーザーになれば、どこが不便なのか浮き彫りになるんです。そんな中で、僕が不便だと感じたのは、MCの時の音量ですね。演奏中の音と比べて小さいケースが多かった。

――たしかにパソコンで配信ライブを観ていると、それは時々感じます。

鬼龍院:皆が皆、すごく性能のいいスピーカーやヘッドホンで聴いているわけでもないじゃないですか。普段のライブの感覚でボリュームを設定していると、小さくなってしまう。だから、自分のライブのリハーサルでは、「MCのボリュームはもっと上げて、フロアの音は考えなくていい、配信の音だけを考えてほしい」と、口うるさく言ってました。自分がユーザーになったときに、不便に感じたことを全て改善するつもりでライブに臨んだので、そういう意味では快適に楽しめたのではないでしょうか。

――ただ、バンド側がどれだけ配慮しても、各家庭のWi-Fiなどの通信状況に左右されたりする問題もありますよね。

鬼龍院:それでも、その上でできる限りのことをやるのが大事のなのではないかと。これはやらなかったのですが、喋ったことをAIがリアルタイムで自動的にテキスト化してくれるシステムがあって、確かABEMAのニュース番組とかで導入されていたみたいなんです。MC中に音が途切れても自動テキスト変換ツールでテロップを出していればいいんじゃないかと、そのシステムを使ってみようと考えたこともありました。けれど、機械なので、意図せず間違ったテキストになって変な変換をされてしまう可能性もある(笑)。そう考えるとデメリットの方が大きいと判断して、導入には至りませんでした。そんな風に、色々なパターンを考えていますね。

 ワンマンライブの模様も、切り取った動画ではなく写真(スクリーンショット)であれば、SNSに載せても構わないと、ファンの方には伝えていました。これも、宣伝目的というよりは、色んなバンドの方にも僕らのやってることを知ってほしかったし、もしその中に真似できることがあれば、どんどんやってほしいからです。お笑い的な部分は真似できることは少ないかもしれないけど、それをヒントにして、なにか別のアイデアが生まれる可能性もある。そんな風に刺激しあって、色々なアイデアが生まれて、配信ライブ自体がどんどん面白くなっていけばいいのにな、と。

 親しいバンドには、配信ライブを観てほしかったので、通常ライブのゲスト枠のように、予め無料で見られるようにシリアルナンバーとURLを送ったんです。「どうして関係者はライブをタダで観ることができるんだ?」という疑問も浮かぶかもしれませんが、アーティスト同士は刺激しあうべきだと思っているんです。タダで観ることに批判もあるかもしれませんが、皆で刺激しあって、高めあっていきたいんだよ、と平和に受け止めていただければ。

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