『MIU404』『逃げ恥』『アンナチュラル』『けもなれ』……野木亜紀子作品のドラマ主題歌に共通する“孤独の先にある光”

米津玄師 STRAY SHEEP
米津玄師『STRAY SHEEP』(「感電」収録)

 金曜ドラマ『MIU404』(TBS系、22時~)が好調だ。新型コロナウイルス感染症の影響で、当初の4月より2カ月ほど遅れてのオンエアとなったものの、第1話よりこれまで2ケタの視聴率をキープ中。今クールのドラマの中では、放送前より期待値の高さは群を抜いていたが、いざフタを開けてみると初回放送がTwitterトレンド世界1位を記録するなど破格の盛り上がりを見せた。その要因のひとつには、米津玄師が書き下ろした主題歌「感電」もあるのだろう。ドラマの初回放送時に音源が初解禁となるや、「ラストで曲がかかった瞬間ゾクゾクした」「ドラマにぴったりすぎて感動!」などSNSには絶賛の声があふれ、MVの公開からわずか4日で1000万回再生を記録。配信開始後のオリコン週間デジタルシングル(単曲)ランキングでは15.3万ダウンロードを記録して初登場1位を獲得し、今なおその数字を伸ばしている。

 米津玄師が金曜ドラマ枠で主題歌を務めるのは、2018年に放映された『アンナチュラル』以来2度目。どちらも脚本を手がけたのは、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの売れっ子・野木亜紀子だ。ここ数年の間に、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)『アンナチュラル』(TBS系)『獣になれない私たち』(日本テレビ系)『フェイクニュース』(NHK総合)『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京系)とコンスタントに自身が脚本を担当した作品が公開され、その度に評価を高めてきた。小説や漫画原作の実写ドラマが多数を占める日本のテレビ界において、オリジナル脚本で勝負できる数少ない脚本家のひとりでもある。野木作品といえば、時事ネタや社会問題をふまえた練りに練られたストーリー展開に、個性豊かなキャラクターによる会話劇などさまざまな魅力があるが、『MIU404』の「感電」しかり、本編に加えて主題歌のヒットも印象的だ。

米津玄師 MV「感電」

 たとえば『逃げるは恥だが役に立つ』の主題歌となった星野源による「恋」は、2017年の“Billboard Japan Hot 100”で年間1位に輝いたほか、当時、とにかく各所でヘビロテされた楽曲。ドラマのキャスト陣が曲に合わせて踊るダンスは“恋ダンス”と呼ばれ、動画サイトで振り付けを真似る人が続出した。また、『アンナチュラル』に米津玄師が書き下ろした「Lemon」は、2018年最大のヒット曲となったほか、国内のMVでは初の3億回再生を突破する快挙に。『獣になれない私たち』ではあいみょんが「今夜このまま」を書き下ろし、同曲のストリーミング再生回数は1億回を超え、大いに話題となった。

米津玄師 MV「Lemon」

 では、なぜ野木作品において主題歌はヒットし続けるのか。

 それは旬のアーティストという人選はもちろんのこと、楽曲と本編とのリンクにも要因がありそうだ。『逃げるは恥だが役に立つ』は“契約結婚”を題材にしたラブストーリーだったが、「恋」の歌詞には明確に〈夫婦を超えてゆけ〉と、新たな関係に挑むふたりの背中を押す言葉が繰り返されるし、『アンナチュラル』の「Lemon」は、劇中で描かれる“不自然な死”を悼むような悲痛さが表れていた。「今夜のこのまま」の歌詞も、『獣になれない私たち』の主人公・晶(新垣結衣)の抱えるままならない人生への思いが綴られているようで切なくなる。そして『MIU404』の「感電」は、志摩一未(星野源)と伊吹藍(綾野剛)の、気の置けない相棒同士のエキサイティングなコンビネーションを見ているようで、ドラマの余韻が一層高まる仕掛けだ。あくまで作詞はアーティスト本人が行っているが、どの曲も作品資料を読み込んで作られているためか“主題歌”と呼ぶにぴったりの出来栄え。作品の面白さやテーマ性が作り手の感性にもいい影響を与えているのが分かる。

星野源 – 恋 (Official Video)

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