SuperM、『Beyond LIVE』から感じた世界中のファンとの“繋がり”とライブの新たな未来

SuperM『Beyond LIVE』ライブの新たな未来

 世界中でパンデミック化しているCOVID-19(新型コロナウイルス)により世界中のエンターテインメント業界でライブ興行が困難な状態になった現在、オンラインでのフェスや無観客ライブなどの配信コンテンツが盛んになっている。しかし、今現在オンラインフェスなどはチャリティ公演が多く、特にK-POP業界では無料のケースも多いため、オンラインコンテンツのみでオフラインでのライブコンサートレベルの収益を上げることは難しいだろう。そんな中でSM ENTERTAINMENTがNAVER「V LIVE」と立ち上げたのが、OTT(Over The Top=オンライン)専用の有料配信コンサートライブ『Beyond LIVE』だ。これは、K-POPアーティストの多くが生配信のプラットフォームとして利用しているV LIVEを通し、生放送で視聴者とライブ会場をつないで双方向のコミュニケーションを可能にしたコンサートプログラム。V LIVEは元々、コンサートのライブビューイングや有料プログラム配信も行なっており、配信中に画面上にペンライトを表示させてハートを送る公式のLIGHTSTICKシステムなどもあり、世界中の既存のK-POPファンにとってはすでに登録済みのケースも多い。V LIVE上でのコインか、韓国の通販サイト「YES24」でチケット(ペンライトやアプリにかざすとメンバーの個別コンテンツなどが見られるARチケットなどとセットのものもある)、またはシリアルコードを購入することで、配信とVOD視聴が可能になるシステムである。

 そんな『Beyond LIVE』の初日となる4月26日に登場したのが、デビューミニアルバムが全米Billboard200でチャート1位を記録した、SHINeeのテミン、EXOよりベクヒョンとカイ、NCT 127のテヨンとマーク、WayVのルーカスとテンが所属するグループの垣根をこえた7人組スーパーグループ・SuperMだ。4月23日に予定されていた1日限りの東京ドーム公演が見送りになったタイミングでのコンサート配信となった。SM ENTERTAINMENTとしてもK-POPグループとしても初の試みである『Beyond LIVE』のトップバッターとして、グループのキャッチフレーズが「We Are The Future」であるSuperMは相応しいと言えるだろう。また本公演では、未発表の新曲をこのライブで初披露することも事前にアナウンスされていた。

 韓国の伝統音楽のテイストを盛り込み、「西洋と東洋のシナジー」というグループのアイデンティティを盛り込んだ「I Can’t Stand The Rain」、そして各メンバーのソロダンスが盛り込まれたダンスパフォーマンスでライブの幕が上がった。本公演のセットリストにはSuperMがリリースしているミニアルバム収録の5曲と新曲1曲、ユニット曲1曲のほか、メンバー7人それぞれのソロ曲が用意されていた。

 SuperMのメンバーのうち、すでにソロ曲をリリースしているテミン・ベクヒョン・テン、単独コンサートで披露されライブアルバムに収録されているカイ以外のソロ曲は全て未発売の楽曲であり、今のところはSuperMのライブステージでしか見ることができないものだ。ソロステージの最初は、ショッピングカートに乗って登場したテヨンのソロパフォーマンス「GTA」。同名のゲームをタイトルにしたダンサブルでスワッグの効いたEDM×HIPHOPナンバーだ。続くテンの「夢中夢」「New Heroes」は、音と一体化するようなしなやかなダンスをひきたてる浮遊感のあるEDMで、がらりと雰囲気を変えた。ソロ活動の経験も豊富なテミンは「MOVE」と「WANT」で、鬼気迫るとも表現できるテミンならではの色気あるパフォーマンスで圧倒し、同じくソロでも活躍しているベクヒョンはハスキーで甘いボーカルが印象的な「Betcha 」「UN Village」を聴かせた。

 ルーカスの「Bass Go Boom」は本人の明るいキャラクターを反映したようなアッパーなレゲトン風味のあるハッピーな1曲。一方、ラップに定評のあるマークのソロはグループでのキャラクターとも少し違う、ちょっとワルめのラチェットミュージックテイストで、バンガーなヒップホップソングを見せた。EXOの単独コンサート『EXO PLANET #5 – ExplOration』で披露されたカイのソロ曲「Confession」「Spoiler」はR&B色が強く、カイのセクシーなダンスや重めのサウンドと対照的なフレッシュで清純なボーカルが不思議と調和したナンバーと、7人7様のステージを見せてくれた。アルバム収録曲以外のユニット曲は、2頭の肉食獣が戯れ合うようなダンスが印象的なテヨンとテンの「Baby Don’t Stop」(NCT『NCT 2018 Emphasy』収録曲、英「DAZED」誌の選ぶ「The 20 best K-pop songs of 2018」の1位に選出された)のみの披露だったが、このようにライブで見る機会がなかなかない曲が見られる場としても新しいライブの見せ方を感じさせてくれた。

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