2020年現在のシーンにおける“V系っぽい歌詞”を構成するものは? 己龍、BugLugからヒプマイ 四十物十四までを分析

 楽曲においてメロディだけでなく歌詞も重要な要素だ。それだけでは意味を持たない音に言葉をのせることで、この曲が失恋ソングなのか、はたまた社会問題を提議した曲なのかを、リスナーに認識させることができる。また、歌詞は何をテーマにしても良いからこそ、アーティストの個性が出る。さまざまなアーティストがいる中でも、ヴィジュアル系バンドの歌詞は独特だと言われる。“V系っぽい歌詞”といえば「闇に溺れる」「漆黒に染まる」「薔薇が舞う」といったいわゆる中二病のテンプレ的なイメージを持たれており、時にインターネット上では“V系の歌詞あるある“として話題になる。これらのワードが“V系っぽい”と判断されるのは、実際にX JAPANやMALICE MIZER、LUNA SEAなど著名なバンドの歌詞に使われていたワードであることはもちろん、非日常的かつ陰のあるイメージがバンドの世界観に似ているからだろう。

 しかし、これらのワードをチョイスするのは、主に90年代に活躍したバンドのイメージが強い。では、2020年現在のヴィジュアル系シーンの中核にいるバンドの歌詞はどうなのか。今回は、2020年4月に開催予定の大型フェス『V FES.JAPAN』に出演するバンドの中から、DIAURA、己龍、BugLugをシーンの代表格として考えてみたい。

 古くからヴィジュアル系がもつダークなイメージを継承しながら現代のシーンを牽引するDIAURAの歌詞は、シーンの外から見ても完全に“V系っぽい”と言えるだろう。昨年秋にリリースされた「FINALE」を例にあげると、〈茨の道に傷付く明日が来ようとも〉〈死期を告げる鐘を鳴らす 血まみれのこの腕で〉といったように、ダークな世界観を彷彿とさせるようなワードが散りばめられている。

DIAURA「FINALE」 MV Full Ver.
己龍『花鳥風月』

 しかし、“和製ホラー”をコンセプトに活動する己龍の「花鳥風月」は、優雅なタイトルとは裏腹に〈頭蓋の奥が少し焼け爛れた様で〉という惨たらしい言葉から始まり、〈捩じ切れる程首を捻る〉〈首を括る人と其れを見て嗤う人〉と、艶やかでありながらおぞましいバンドの世界観をたっぷりと魅せた歌詞になっている。難解な言葉遣いは、V系っぽさというよりもバンドのコンセプトを追求した結果だろう。

己龍「花鳥風月」MUSIC VIDEO

 さらに、カラフルでやんちゃなイメージのBugLugの「しこたま」は、〈脳内日記はバグってる!〉〈世渡りの術は超ハード〉と、ポエムっぽさゼロの飾らない心の叫びが共感を呼ぶ歌詞だ。陰鬱なイメージとはかけ離れた、気持ち良いくらいの明るさが感じられる。このことから、現代のヴィジュアル系シーンにおいても、引き続き歌詞はバンドの世界観を表現する重要なツールであることがわかる。しかし、音楽性、外見、活動スタンスなど、バンドの世界観を含むすべての要素でカオス化が進んでいる現代のヴィジュアル系シーンでは、“V系っぽい”という画一的な従来のパブリックイメージとは若干異なってきていると言っていいだろう。

BugLug NEW SINGLE「しこたま / 泡沫に咲く柔な花」(2019.3.5 RELEASE)【しこたま Music Clip】

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