2020年以降のヴィジュアル系シーンとの向き合い方 アリス九號.将×ユナイト 椎名未緒×WING WORKS RYO:SUKEが語り合う

 1980年代の黎明期から、1980〜1990年代の黄金期、そして2000年代のネオ・ヴィジュアル系ブームを経て現在に至るヴィジュアル系シーン。今回リアルサウンドでは、そんなヴィジュアル系を愛し、自身もシーンで活躍するアリス九號.の将(Vo)、WING WORKSのRYO:SUKE、ユナイトの椎名未緒(Gt)による鼎談を行なった。シーンのこれまでと現在を聞いた前編に続き、後編では2020年以降“シーンの縮小”とどう向き合っていくべきか、それぞれのスタンスや思いについて熱く語り合ってもらった。(編集部)

前編はこちら
「アリス九號. 将×WING WORKS RYO:SUKE×ユナイト 椎名未緒特別鼎談:ヴィジュアル系への愛とシーンの“今”」

縮小というよりは“多様性”の時代になっている(将)

ーーインターネットの話題が出ましたが、アリス九號.は先日新曲「革命開花-Revolutionary Blooming-」をボーカロイドバージョンで先行公開しました。そこにはインターネットを介して新しいマーケットにリーチしようという意図があったのでしょうか?

鏡音リン・レン×アリス九號.「革命開花-Revolutionary Blooming-」

将:バンドとして無料のコンテンツに注力して、気軽に作品に触れてもらえるようにしたかったんです。だからサブスクリプションも独立してすぐ解禁しましたし、みんなで共有できるようにすることで閉塞感から抜け出したいという思いがありました。バンド単位の話にはなってしまうんですけど、僕らのファンは15年バンドが続けられるくらい熱心に応援してくださってて、めちゃくちゃ支えられてるし、なんて素晴らしいファンなんだと心震える瞬間が何度もあって、そのおかげでバンドの状態も盤石なので、逆に恩返しをしていくタームに入ったと思っていて。

ーー新しいマーケットだけではなく既存のファンのためでもあったんですね。恩返しといえば、2019年1月の『Free-Will SLUM』での「ダサいと言われているこのジャンルを守りたいし、恩返しがしたい」という発言の真意はどのようなものだったのでしょう?

将:昔ってヴィジュアル系に詳しいと共通の話題としてモテたし、友達が出来たんです。でも今は敬遠されるじゃないですか。憧れて不幸になるものって縮小して然るべきなので、それを打破するためにはどうしたらいいかという視点で考えています。

ーーやはりイノベーションが必要だ、と。

将:最近でいうとビリー・アイリッシュが流行ってるじゃないですか。あの世界観ってヴィジュアル系に通じるところがあると思いませんか? 10代の心の痛みや精神的な癖へのコンプレックスはDIR EN GREYが表現してきたことだし、さらにアートワークがゴシックロックのテイストで。そういうところもヴィジュアル系の良さだと思うんです。

ーーこの鼎談でビリー・アイリッシュの名前が出るとは思いませんでした(笑)。

将:僕らには僕らの役割があって、いろんな人の夢を背負っているのでビリー・アイリッシュみたいなことは出来ないですけど、ヴィジュアル系の良さで串刺しにできるようなセンスを持った若者を育てたり、ディレクションしたりしてシーンに恩返ししたいと考えています。その反面、BAROQUEの圭ちゃんが「今でも東京ドームに立つ夢を諦めない」って明言しているような気持ちも忘れずに、バンドとしてもやらなければいけないことをやる、という二方向で頑張ろうと思っています。

アリス九號.

ーーRYO:SUKEさんはWING WORKSとして、若手をフックアップしてる印象があるのですが。

RYO:SUKE:フックアップというとさも僕が何かを成し遂げたみたいなのでそういう感覚ではなくて、WING WORKSが常に先鋭的であるためのアップデートのために積極的に若い世代のアーティストと関わっていきたいと思っていますよ。そのためにも若手バンドに限らず、発明を感じたり、イノベーションを起こそうという姿勢が見える人たちとの出会いの場として、ここ何年かは自身でのイベントを企画することが増えましたね。

ーー長くこのジャンルにいらっしゃるのは、このジャンルが好きだからだと思います。お話にあったような縮小もあるなかで、2020年代にシーンはどうなっていくのか、また皆さんそれぞれの活動としてもどうしていこうとお考えですか?

将:2010年代にラウドロックが流行ったこともあって、MUCCやlynch.のようなその流れを享受したバンドは今でも支持されていますよね。でも、1990年代や2000年代みたいなことが起きるには物凄い巨大なマーケットと融合しないといけないし、マーケットインとプロダクトアウトのバランス感覚を持ちながら、自問自答しつつ答えの無い問いに答え続けていくんだと思います。……これ、朝まで生討論、みたいになりそうですね(笑)。

一同:(笑)

将:縮小していくシーンで既得権益もある中で、それをどうすれば再生させるかよりも、X JAPANが生み出したヴィジュアル系という文化の本質、例えば男性がメイクをして人前に出る、というのは当時ショッキングだったわけですけど、時代の変遷もあって現代ではコモディティ化してるじゃないですか。なので、その本質を今に置き換えたらどうなんだろうという視点が大事だと思います。

RYO:SUKE:自分自身のヴィジョンの話になると、2020年代に差し掛かるにあたって、世の中がAIや5Gといったテクノロジーに目を向け始めてる中で、それが今後クリエイターが扱えるところまで下りてきたときにWING WORKSの音楽とのシナジーがいいと思うので、そのタイミングで再びSF感や近未来感というものを前面に打ち出した作品を作りたいという構想はありますね。

ーーRYO:SUKEさんなりのイノベーションを起こそうとしているわけですね。

RYO:SUKE:それが先程から話に出ている、別のジャンルから新しいユーザーを取り込むことに繋がると思うんです。なぜなら、全世界にSFやファンタジーが好きなユーザーって必ずいるじゃないですか。僕は今改めてそこに可能性を感じていて、さらにそこに向けて日本から音楽を発信するうえでは「ヴィジュアル系」というカルチャーが一番似合っていると思うので、僕はこのシーンに今改めて可能性を感じているんです。

将:やっぱりインターネットは活用しないといけないし、タッチポイントは増やした方がいいのは間違いないです。さっき5Gの話がありましたけど、これからの時代は生放送が容易になるはずなので、例えばメンバーが自宅スタジオから5人同時中継してセッションしたりするのをリスナーが手軽に見れるような時代がここ数年で来ると思います。

ーーそれが生演奏出来るミュージシャンの強みですもんね。

将:それに今はファン層が重なる2.5次元舞台にファンをとられてますけど、ジェンダーや次元の境界を飛び越えるのはヴィジュアル系のお家芸。僕らも面白いコンテンツを生み出そうと見えないところで切磋琢磨してるし、縮小というよりは“誰が何を好きでもいいじゃん”という多様性の時代になっているだけだと思うので、ヴィジュアル系の良さをこの鼎談から再確認していただいて、2020年代はたくさんの人に愛されるアーティストが出てくることを願います。

未緒:あくまで想像の話にはなるんですけど、音楽を売り物とすることがもうすでに古いというか、もはやそういうものじゃなくなってしまっていると思ってます。音楽のみでお金を稼いで、そのお金だけでバンドを動かそうというこれまでのフォーマットにこだわりすぎたのがヴィジュアル系市場で、そこにこだわってるからこその恩恵を受けたのもヴィジュアル系です。でも、そのスパイラルから抜け出さないともうどうにもならないところまで来てしまっているじゃないか、と。

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