アリス九號. 将×WING WORKS RYO:SUKE×ユナイト 椎名未緒特別鼎談:ヴィジュアル系への愛とシーンの“今”

 1980年代の黎明期から、1980〜1990年代の黄金期、そして2000年代のネオ・ヴィジュアル系ブームを経て現在に至るヴィジュアル系シーン。今回リアルサウンドでは、そんなヴィジュアル系を愛し、自身もシーンで活躍するアリス九號.の将(Vo)、WING WORKSのRYO:SUKE、ユナイトの椎名未緒(Gt)による鼎談を行なった。前編では、自身の経験とともにヴィジュアル系への愛とシーンのこれまで、そして現在について話を聞いた。なお、1月4日公開予定の後編は2020年以降のシーンとの向き合い方について熱く語り合う、貴重な内容となっている。(編集部)

ヴィジュアル系は“身近なヒーロー”(椎名未緒)

ーー今日はヴィジュアル系を心から愛する皆さんにシーンにとって2010年代がどんな時代だったか、そして、2020年代に向けてシーンがどうなっていくのかについてお話を聞きたいと思います。

将:2018年の年末の座談会の記事を読んで思ったんですけど、あの記事って“ベルギーワッフルをどうやったら食べてもえらえるか”っていう話だと思うんですよ。

ーーあの昔流行ったベルギーワッフルですか?

将:そうです。あんなに流行ったのに今は誰も食べてないじゃないですか。それに今流行りのタピオカを無理やりつけたら食べるんじゃないか、っていう議論に見えたんです。逆に言うと、シーンに対する愛やリスペクト、思い入れがある分なんとかしようとしてくださってるなとも思ったんですけど、シーンのためにももっと大きな視点でヴィジュアル系の本質から考えることが大事だと思っています。

ーーお手柔らかにお願いします。ずばり、みなさんにとってヴィジュアル系とはどんなものですか?

将:痛みに寄り添ってくれるものですかね。10代特有のあの絶望感に寄り添ってくれるものって他にないと思います。

RYO:SUKE:「夢と幻想」ですね。現実とは違う世界に触れることで心が救われる存在というものが、僕にとっての「ヴィジュアル系」です。

ーー未緒さんはいかがですか?

椎名未緒

椎名未緒(以下、未緒):身近なヒーローですかね。小さい時からジャニーズが好きだけど、遠すぎて手の届かないスターだったんですよ。ライブはアリーナやドーム規模なわけだし、それがスターたる崇高さに繋がっていると思うんですけど、当時の俺はヴィジュアル系をそれとはちょっと違う見え方のスターに感じていました。自分がジャニーズやオリコンのチャートに入るようなアーティストになれるとは思わないけど、もしかしたらShullaになら自分もいつかなれるんじゃないか、みたいな(笑)。

将:わかる~!

未緒:これがプレイヤーの目線で、リスナーの目線で見れば寄り添ってくれるとか救いであって、俺もそういう側面をヴィジュアル系に感じていたし、さらに言えば距離感の近さもポイント。もちろん近いゆえの弊害もありますけど、会いたいときにライブハウスに会いに行けて、リスナーの身体的にもマインド的にも極めて近い位置にいてくれるのは魅力なんじゃないかと思います。

ーーみなさん、やはりそこにはご自身の原体験が元にあったりするのでしょうか?

将:僕はバスケ部だったんですけど、中学生の時に交通事故に遭って半年くらいバスケが出来なくなって。絶望していた時期に友達が見せてくれたLUNA SEAの『真冬の野外』のビデオです。当時の僕はロックといえばミスチル(Mr.Children)やサザン(オールスターズ)だったので、男性がこんなに美しく、華やかに光を纏って大歓声を浴びているというところと、なによりライブの緊迫感に衝撃を受けました。

RYO:SUKE:僕はバックボーンとして元々小学校の頃からアニメやSFやファンタジーが好きな一方で、母親が河村隆一さんのファンでもあったんですね。河村隆一さんがバンドをやっていることを知って、当時バンドが何かすら知らなかった僕には全身黒づくめのLUNA SEAは二次元のキャラクターみたいに見えたし、人が本名ではなくステージネームを名乗っているのも初めての体験でした。

ーー好きなものとのシンパシーを感じたんですね。

RYO:SUKE:そこからLUNA SEAに興味が湧いて、『SINGLES』を手に取って再生したときに1曲目の「BELIEVE」のイントロのインパクトの大きさに「ファンタジー性」を感じたんです。初めて自分の嗜好とマッチする音楽に出会ったと感じた瞬間でした。そこから1990年代のヴィジュアル系ブームもあって様々なバンドを聴き漁り、このカルチャーの虜になっていきました。

未緒:俺は二人みたいな特別な体験があったわけではなくて、元々音楽に興味もなかったし、素養もない中でたまたま部活を辞めて手に取ったのがギターで、コピーする際にちょうどブームもあって一番手に取りやすいところにあったのがヴィジュアル系だったんです。だからもしあの時期にパンクが流行ってたら俺はパンクのバンドマンになってたと思います。

ーーヴィジュアル系のバンドマンじゃない道もあり得たわけですね。

未緒:あり得たと思います。ただ、昔からかっこいい人は好きで、さっきジャニーズが好きって言いましたけど、もっと辿ると特撮のヒーローがルーツにあったりもするので、そういうキャラ分けされた“強くてかっこいい人”が5人並んでいる様が好きで、そのセンサーが反応してヴィジュアル系が好きになったのかもしれないです。

ーーそしてみなさん、だいたい2000年代初頭ごろにバンドを組まれたと思います。その頃のシーンはX JAPANが解散し、hideさんが亡くなり、LUNA SEAも終幕して、ブームも下火になった頃ですが、世間の見方とは違ってインディーズシーンは活発だったように思います。

RYO:SUKE:そうですね。インディーズシーンというものがとてもクリエイティブな時代だったと思います。

将:ムック(MUCC)、Psycho le Cému、Dué le quartzなど当時登竜門と呼ばれた『Shock Edge』(オムニバスシリーズ)に参加しているようなインディーズの“上層部”はめちゃくちゃかっこよかったです。

ーーRYO:SUKEさんがかねてからのファンであることをことを公言しているcali≠gariの曲も収録されていますね。

RYO:SUKE:cali≠gariは僕が一番のめり込んだバンドです。アニメ好きから派生して昭和文化や映画にも興味を持って寺山修司や中原中也、萩原朔太郎といった日本文学とか地下演劇の文化に傾倒していく中で、明らかにそういったカルチャーをバックボーンにしていた当時のcali≠gariがある意味ミクスチャーに見えて衝撃を受けました。

RYO:SUKE

将:僕が現場でぶつかって次元の違いを見せつけられたのはdeadmanとFatimaでした。

RYO:SUKE:『SHOXX』や『FOOL’S MATE』といった専門誌に載っているバンドのカラーもバラエティ豊かな上に、高田馬場AREAや目黒鹿鳴館のイベントが毎日ソールドしているような時代でしたよね。バンド自体もその時期の大きなトレンドの流れも追いつつ、どこかしらに自分たちだけののオリジナリティをアドオンしようという姿勢が全体的に強くて、バンドのスタイルにおいてもサウンド面においても“小さな発明”が至るところで行われていた時代だったと思います。

ーー未緒さんはいかがですか?

未緒:今も昔もキッズがみんな誰かに憧れてバンドを始めてるってことに変わりはなくて、それこそDIR EN GREYに憧れて始めた人はめちゃくちゃいたし、俺の世代になるとthe GazettEや、それこそアリス九號.のフォロワーがシーンにはたくさんいて、そういう構造は今も同じですよね。ただ、そのキッズが憧れる対象が時代と共にどんどん規模が小さくなっているのも事実で、過去と現在の憧れる対象を比較すると志が低いと一部の人から思われてしまうというか。

ーーそれはあるかもしれないですね。

未緒:でもキッズにとってはどのバンドもスターなんですよね。俺からすれば2000年代を象徴するようなバロック(現・BAROQUE)は大スターですけど、X(現・X JAPAN)のデビュー時を知っているようなもっと上の世代には「そんな新参者に憧れてんの?」って言う人もきっといる。事実、ユナイトに憧れてバンド始めた人もいて、俺は「なんでユナイト?」って思ったりもするけど、彼らにとってはユナイトもスターなんですよね。それはマーケットが縮小したせいで憧れる対象がより身近になって、選択肢が狭くなってるからだと思います。自分たちの責任でもあるけれど、シーンに圧倒的なスターがいないからそうなってるのかな、と。

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