『真っ赤なLip』インタビュー
WANDSが明かす、解体から再始動へと至った背景と未来へのビジョン「新しいWANDSの音楽になっていく」
「もっと強く抱きしめたなら」「時の扉」「世界が終るまでは…」など90年代に数多くのヒット曲を生み出してきたWANDSが、約20年ぶりに復活を遂げた。“第5期”のメンバーは、柴崎浩(Gt)、木村真也(Key)、そして新たなボーカリストに抜擢された上原大史。2019年11月17日『DFT presents 音都 ONTO vol.6』にて復活ライブ(大阪・堂島リバーフォーラム)を行った3人は、2020年1月29日に復活第1弾シングル『真っ赤なLip』(表題曲は読売テレビ・日本テレビ系全国ネット土曜よる6時放送のTVアニメ『名探偵コナン』オープニングテーマ)をリリースする。リアルサウンドでは、柴崎、木村、上原にインタビュー。活動再開に至った過程、シングル『真っ赤なLip』の制作を中心に、第5期・WANDSのビジョンについて語ってもらった。(森朋之)
仲が悪かったわけではないけど、勝手にブロックしていた(木村)
ーーまずはWANDS活動再開までのことを聞かせてください。WANDSは何度かのメンバーチェンジ(第1期~第3期)を経て、2000年に活動を終了。柴崎さんは第1期、第2期のメンバーでしたが、2000年以降、WANDSに対してはどんな思いを持っていましたか?
柴崎浩(以下、柴崎):初めてお会いする方に紹介してもらうときは、「元WANDSの……」と言ってもらうことが多かったし、WANDSというものを一切忘れるということはなくて。2015年に第1期メンバーの大島康祐(現:大島こうすけ)と一緒にT.M.Revolutionの全国ツアーに参加して、そのときに「またWANDSをやれたらいいね」と話すようになったんです。そこからですね、WANDSと向き合うようになったのは。その後、プロデューサーの長戸大幸さんから上原を紹介されたんですよ。それが2018年ですね。
ーーなるほど。木村さんは第2期、第3期のメンバーでしたが、その後、WANDSとの距離感はどうだったんですか?
木村真也(以下、木村):……難しいですよね。(1997年に)柴崎と上杉が抜けたときのことを思い出すと、ちょうどグランジやミクスチャーが出てきた頃で、若い2人がそういう方向に行ったのは当たり前だと思うんですよ。ただ、僕はポップスがやりたかったので……。
ーーWANDSの音楽性をポップスだと捉えていた?
木村:僕はそう感じてました。サウンドもそうだし、歌いやすいメロディもそうだし。それを引き継げば、15期、20期と続けられると思うんですよね。
柴崎:(笑)。WANDSのサウンドは、自分もずっと気に入ってたんですよ。ただ、上杉がそういう方向(グランジなど)にシフトしたとき、僕もそういう音に興味があったし、上手くリレーションシップが取れて。
ーーその結果、WANDSを脱退して、新たなバンド(al.ni.co)を結成したと。
木村:そういう話もほとんどしてなかったんですよ、当時は。僕自身も表に出ることをやめて、アレンジや新人を育てる側に回りましたからね。仲が悪かったわけではないけど、勝手にブロックしていたというか。
柴崎:僕はいつでもニュートラルなつもりだったんですけどね(笑)。木村は「距離を感じていた」と言ってたんだけど、特に何かがあったわけではなくて、大人になると何か理由がないと会わなくなるので。最近は木村と同じ時間を過ごすことが増えて、綿が水を吸うみたいに、木村真也が沁み渡ってます(笑)。
木村:そもそも友人ですからね、柴崎は。WANDSでデビューする前から、二人でデモテープを作ったりしてたので。
上原が歌ったときに「WANDSだ!」と思った(柴崎)
ーーそうだったんですね。上原さんはWANDSに対して、どんなイメージを持っていましたか?
上原大史(以下、上原):「かっこいい!」という感じですね(笑)。最初はアニメの『スラムダンク』の主題歌(「世界が終るまでは…」)ですね。『スラムダンク』もカッコよくて、主題歌もカッコよくて、カッコいいしかなかったです。
柴崎:(笑)。「世界が終るまでは…」がそんなに尊い曲になるとは誰も思ってなかったですけどね、最初は。
上原:兄が世代なので、家でもよく流れていて。「時の扉」なども知っていたし、しばらくして「WANDSというバンドの曲なんだ」と結びついて。中学生くらいからカラオケでもよく歌ってました。
ーーボーカリストとしてWANDSに加入しないか? という話があったときは、どう思いました?
上原:そういう話はだいぶ前から聞いていたんですけど、ずっと冗談だと思ってたんですよ。長戸プロデューサーとエレベーターですれ違ったときに、「WANDSやるから」みたいに言われたり。
柴崎:そんな感じだったのか(笑)。
上原:今年(2019年)に入ってから急に話が進み始めて、「ホントにやるんだ?」って。
柴崎:過去のWANDSの曲を上原が歌ったデモは、以前から聴いていて。そのときは(原曲と)同じような世界観というか、リスペクトを感じるなという印象でしたね。
上原:自分としては「とにかくいいものを(作る)」という感じで歌っていて。原曲をあまり意識しすぎても……と思ってたんですよ。上杉さん、和久(二郎、現・松元治郎/2代目ボーカリスト)さんにしか出せないものがあるし、そこに被せたり、超えることは絶対にできないので。歌っていくなかで、自分らしさを確立していきたいという感じでしたね。
ーーその後、柴崎さん、大島さんが“第4期”として楽曲制作を行って。
柴崎:そうですね。自分が思うWANDSの良さ、好きだった部分を頭の片隅に置きつつ、「上原の歌が活きるのは、どういう曲だろう?」と考えて。あとは特に何も意識せず、いま自分たちがやりたいことを試行錯誤しながら作った曲もありますね。そのなかで第5期のWANDSのサウンドを見つけられたらいいなと。
ーー柴崎さんのなかで、WANDSの良いところとは……?
柴崎:難しいんですけどね、それが(笑)。ロングトーンの使い方だったり……わかんないですけど。
木村:(笑)。
柴崎:イメージでしかないんですよね、結局。
上原:僕もぜんぜんイメージが湧かなくて。こうやってインタビューを受けさせてもらって、やっと「ホントにWANDSをやるんだな」という自覚が出てきたというか、最初の頃はフワフワしていて、何をどうすればいいかわからず、戸惑っていたので。
ーー軸になるのは当然、上原さんの歌ですからね。
柴崎:そうですね。大島と新しい曲を作って、上原が歌ったときに、「WANDSだ!」と思ったんですよ。「WANDSの新曲が聴けるのか」という感動やワクワクする感じがあったし、同じような気持ちになってくれる人は他にもいるんじゃないかなって。そう思えたのは大きいですね。
上原:ありがとうございます。