新田真剣佑×北村匠海W主演映画『サヨナラまでの30分』を支える、劇中バンドECHOLLのボーカル力と存在感
ECHOLLというバンドの名前を知ったのは、「瞬間(sayonara ver.)」と「もう二度と」という曲を耳にしたのがきっかけだった。
第一印象で「お、いい声」と思った。伸びやかで情感に満ちたハイトーンの歌声と、太い芯を持った力強く色気のある歌声。タイプの違う、けれど、どちらも浸透力を持った二人のボーカリストが、センチメンタルなメロディをわけあっている。
歌っているのは、新田真剣佑と北村匠海(DISH//)。ECHOLLというのは、2人がダブル主演をつとめ1月24日に公開される映画『サヨナラまでの30分』の劇中バンドだ。
1月22日には「瞬間(sayonara ver.)」「もう二度と」を含むECHOLLのナンバーと作曲家/ピアニストRayonsによる劇伴音楽を収録したオリジナルサウンドトラック『サヨナラまでの30分』もリリースされた。
「青春音楽ラブストーリー」を謳う本作では、バンドが一つの重要なモチーフになっている。新田真剣佑が演じるのはECHOLLのボーカリストとして将来を嘱望されつつも1年前に他界した「宮田アキ」。そして、彼が遺したカセットテープを偶然拾ったことをきっかけに、そのテープが再生される30分だけ「アキ」と入れ替わるようになった「窪田颯太」を北村匠海が演じる。
物怖じしないキャラクターでポジティブな「アキ」と、人付き合いが苦手で就職活動に苦戦している「颯太」は、対称的な性格ながら共に音楽に対する情熱と才能の持ち主として描かれる。二人が一つの身体を共有しながら、メンバーの「ヤマケン」(山科健太/葉山奨之)、「重田幸輝」(上杉柊平)、「森 涼介」(清原翔)、そして「アキ」の恋人だった「村瀬カナ」(久保田紗友)を巻き込み、メジャーデビューを前に解散したECHOLLを再び動かし音楽の喜びを蘇らせていくというストーリーだ。
なので、なにしろ歌に説得力がないと始まらない。まだ未完成だけど荒削りな才能を持つバンドが起こす化学反応のマジックが楽曲に封じ込められていないと意味をなさない。
そういう意味では、ECHOLLというバンドも、劇中で歌われる6曲の作られ方も、とても興味深いものになっている。
というのも、楽曲に携わっているそれぞれの立場に「挑戦」が見受けられるのだ。
音楽プロデューサーをつとめたのはandropの内澤崇仁。デビュー10周年を迎えたバンドでの活動に加えて楽曲提供や映画の挿入歌の制作も行ってきている内澤だが、劇中に登場するバンド「ECHOLL」全体をプロデュースするというのは初めてのことだ。
さらには、内澤自身が作詞作曲を手掛けた「風と星」に加え、雨のパレードが「もう二度と」、odolが「瞬間」、Ghost like girlfriendが「stand by me」、Michael Kanekoが「真昼の星座」、mol-74が「目を覚ましてよ」という劇中歌を手掛けている。それぞれのアーティストにとっても、楽曲提供は一つの挑戦だっただろう。キャリアを重ねた作曲家や音楽プロデューサーによる職人的な仕事ではなく、あえて若手のロックバンドやシンガーソングライターが曲を書き下ろしたというのは、おそらく、そのことによって宿る“熱”のようなものを物語とシンクロさせるという狙いがあったはずだ。