欅坂46、作品性とリンクした衣装の数々ーー制服から脱却していく“変遷”と一貫した”不自由さ”

 年末に差し掛かり連日放送される音楽特番により、各アーティストのパフォーマンスを見る機会がおのずと増えてきた。それに連れて出演者たちの着ている衣装にも注目が集まっているようだ。AKB48の歴代の衣装を写真付きで紹介している『AKB48 衣装図鑑 放課後のクローゼット~あの頃、彼女がいたら~』(宝島社)の冒頭において、プロデューサーの秋元康はアイドルの衣装について以下のように語っている。

「アイドルにとって、”衣装”は、これから始まる何かを期待させなければいけない。言わば、楽曲のイントロのようなものだ」

AKB48『ギンガムチェック』(TypeB)(通常盤)

 視聴者にとってみれば、衣装は、まず最初に目に入る情報であり、これから繰り広げられるパフォーマンスをなんとなくでも想像できるものだと言えるだろう。AKB48の衣装で面白いのは、一見すると全員同じものを着ているようだが、細かく注意して見てみると一人ひとり別々のものを着ている点である。同書を見ると、どの曲も大枠のコンセプトは統一されていつつも一部のデザインやアクセサリーなどに違いが見られ、たとえば「ギンガムチェック」(2012年発売、総選挙1位の大島優子センター曲)の衣装はブルーのチェック柄が全体の共通するモチーフとなっているが、チェック柄ひとつとっても1位から16位まで全員微妙に異なる組み合わせであることに驚く。

 同書に「学校で決められた制服を、校則ギリギリの範囲で、自分らしく着崩す女子中学生、女子高生をイメージにしたかった」とあるように、”個性の発露としての衣装”という考え方がAKB48グループにはあるようだ。そもそも制服というもの自体が集団の均一化・平均化を目的とするものであり、規律や統率といった意図がその奥には隠れている。「”制服”と”衣装”という、一見、相反するコンセプトを具現化」したと言うように、みんな一緒のようでみんな違う、そうしたテーマをAKB48の衣装からは感じ取れる。

欅坂46『黒い羊』(通常盤)

 その意味で、坂道グループは”制服的”。坂道グループの衣装は年少組と年長組で分かれているのみで、基本的には統一されたデザインである(スカートの丈の長さが微妙に異なったりセンターだけ違ったりなどの細かい仕掛けはある)。それは、彼女たちに個性がないと言ってるのではない。いや、むしろ、個性というテーマを突き詰めた結果、衣装は統一させることで、グループに埋没するアイデンティティに迷う少女の心の揺らぎであったり、自分の居場所を模索しながら生きる若者の葛藤といった”内面性”がコンセプトになっているとも言える。実際、「サヨナラの意味」や「シンクロニシティ」など乃木坂46の代表曲に登場する主人公はどこか孤独を感じていたり、欅坂46の「二人セゾン」や「不協和音」では社会や集団に距離を感じている主人公が登場する。坂道グループの作品はそうした、自分を探しながら生きる主人公の繊細な心もようが描かれることが多い。曲の世界観をより強調するために”制服的”な衣装があるのだろう。

乃木坂46 『シンクロニシティ』
欅坂46 『二人セゾン』

 加えて欅坂46の衣装は、時期によって変遷していく部分と、常に持っている特徴とがある。1stシングル『サイレントマジョリティー』から4thシングル『不協和音』までのデビュー初期の作品はいわゆる制服をモチーフとした衣装で、担当する尾内貴美香氏によれば「本物の制服感を出すために、過度な装飾はつけず、いかにシンプルに仕上げられるかがポイント」(『Quick Japanvol.135』衣装解説「サイレントマジョリティー」頁より)だったという。2ndシングル『世界には愛しかない』の白い衣装もセーラー服がモチーフで、「不協和音」は『攻殻機動隊』をもとに「非現実感のある制服」にしたのだとか。それが5枚目以降になると急にバリエーションを増していく。5thシングル『風に吹かれても』はスタイリッシュな黒スーツ、6thシングル『ガラスを割れ!』は力強いMA-1、7thシングル『アンビバレント』はゆるっとした白い服……と、まるで学生だった少女が社会へ飛び出していったかのように移り変わっていった。

欅坂46 『サイレントマジョリティー』
欅坂46 『不協和音』
欅坂46 『風に吹かれても』

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