欅坂46、作品性とリンクした衣装の数々ーー制服から脱却していく“変遷”と一貫した”不自由さ”

 一方で、一貫して共通している特徴は、彼女たちを”縛り付ける”ものの存在だ。たとえば「エキセントリック」(『不協和音』収録)の制服には”黒いリボン”が付いているが、MVでは彼女たちがそのリボンを投げ捨てた後に豪雨の中で自由に踊っている。つまり、リボンが彼女たちを”縛り付ける”ものの象徴として用いられているのだ。ヘアゴムや靴も同様の意味合いを持っていて、実際のパフォーマンスでも中盤に靴を放り投げる振りが存在する。2017年の夏フェスで初披露された緑の衣装には頑丈そうな”黒のハーネスベルト”、2018年の夏フェスの真っ赤な衣装には分厚い”黒ベルト”……といったように、真夏のステージに登場する彼女たちから感じ取れるのは、爽やかさといったよりはむしろ”不自由さ”。「避雷針」(『風に吹かれても』収録)の顔面を覆い隠す大きなフードも”個性”の考え方からしたら真逆だが、そうしたアイテムを投げ捨てたり剥いだりすることで、あるいはベルトできつく縛られながらも必死に踊るその姿こそが、見る者を刺激するのである。

欅坂46 『エキセントリック』

 そして、彼女たちの衣装で度々キーワードとなるのが”重厚感”だ。2017年の年末に『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に初出場した際の覇王感のある衣装について、尾内氏は「どこからどう見ても欅坂の衣装でもあり、特別な重厚感もあるもの」、同年の『FNS歌謡祭』での欅の葉の刺繍が施された衣装には「重厚感はありながらきらびやか」というコメントを残している(同上)。そもそもの「サイレントマジョリティー」も「重厚なイメージも面白いかもしれない」という発想からスタートしているという。

 このように欅坂46の衣装は、初期の”制服”から徐々に形を変えて多様化していった流れと、常に何かに”縛られている”ようなモチーフや”重厚感”といった特徴が並行して存在する。特に後者に関しては、どことなく”外部からの力”を感じるような、彼女たちを苦しめるものが視覚的に表現されているようで、作品性とよくリンクしているだろう。なんとなく重苦しさがあり、もちろん露出も少ない。けれども、そうした”縛り付ける”何かを纏いながら、時にそれを振り払い、時にそれを跳ね返すパワーに変えて、力強く踊る彼女たちの姿が魅力になっている。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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