Aimer、Uru、milet……女性ボーカルのトレンドはインパクトと聴き心地の良さにあり? 近年の傾向を探る

 『レコチョク上半期ランキング2019』で、新人アーティスト賞を受賞した女性シンガーソングライター・milet。彼女は3月のデビュー以降、ドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』(フジテレビ系)やアニメ『ヴィンランド・サガ』(NHK総合)など、数々のエンタメ作品とタイアップし、めまぐるしい活躍を見せている。彼女の魅力は何といっても、その印象的な“声”。一度耳にしたら忘れられない重厚な、それでいて繊細な歌声で聴く人の心を掴む。特にドラマ『偽装不倫』(日本テレビ系)の主題歌に起用された「us」では、物語の一番盛り上がった場面で流れる〈好きだと言ってしまえば 何かが変わるかな〉というキャッチーなリリックと共に彼女の歌声が強く記憶に残ったのではないだろうか。

 実は彼女だけでなく、近年若者を中心に支持されている女性ボーカルたちは声が特徴的な傾向にある。2016年リリースの「蝶々結び」やアルバム『daydream』に収録された「カタオモイ」などで広いリスナーに支持を得たAimerや、ドラマ『コウノドリ』(TBS系)の主題歌「奇蹟」で話題を呼んだUruもその一例だ。今回は彼女たちの声の魅力と、なぜそのような歌声が求められているかについて分析したい。

milet『Drown / You & I』

 milet、Aimer、Uruに共通する魅力といえば、歌う時の息遣い。彼女たちの歌声は聴いた人たちに「癒される」「耳が幸せ」としばしば呟かれるが、それは地声で歌い上げるのではなく、息を多く含み柔らかく言葉を発声しているからだ。また、彼女たちは高音もさることながら、低音も美しく響かせることができる。3人に共通しているのは、息の成分量が多く、低音も安定して出せるという点といえるだろう。しかし、その歌声を用いて演出する世界観は個々に異なっている。miletは空気を一点に集めたダークな歌声が印象的。J-POPではあるが、他のアーティストたちとは一線を画した、洋楽的な要素も感じられる。Aimerは15歳の頃に声帯を痛めたことで、今の歌い方に辿り着いたという。そのハスキーな歌声は壮大で、ファンだけではなく、RADWIMPSの野田洋次郎やONE OK ROCKのTakaをはじめ、アーティストたちをも虜にしてきた。Uruは歌の途中でスタッカート気味に何度も息継ぎをしている。まるで耳元で囁かれているような彼女の歌声に、聴く人は感情を揺さぶられるのだろう。

 それでは、なぜ彼女たちのような歌声がフィーチャーされるようになってきたのか。その理由の1つとして、動画や配信を通して新たな音楽に出会い、その音楽を楽しむ人が増加していることが考えられる。これまでは、路上やライブハウスでの活動を経て、徐々に知名度を上げてきたアーティストの割合が高かった。しかし、近年はYouTubeやニコニコ動画などの動画配信サイトや、ストリーミングも含む各種音楽配信サービスでそれぞれの楽曲が注目を集めていくことが多い。さらに、イヤホンやヘッドホンなどを通して音楽を聴く機会が増えたことで、聴き心地のよい歌声が求められ、より歌唱力や表現力が問われるようになっていったのではないだろうか。

 ちなみに、miletもデビュー曲「inside you」が数々の音楽配信サイトで1位を記録。Aimerは2011年にiTunesで配信限定のカバーアルバム『Your favorite things』をリリース。同アルバムが話題となり、その後メジャーデビューを果たしている。さらに、Uruは2013年からYouTubeでカバーソングを配信し、ファンを獲得。配信スタートから3年後の2016年に1stシングル『星の中の君』でデビューした。今や莫大な数の情報が集うインターネットの世界。以前よりも強い個性が求められる中で、彼女たちは独自のイメージを確立し、細やかな表現力で注目を浴びてきた。3人とも本名などの詳細プロフィールを明かしていないが、その謎めいた雰囲気も好奇心を掻き立てる要因の1つではないだろうか。

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