the pillows「Funny Bunny」はいかにして特別な歌となったか エルレ、Uru…カバーの歴史辿る
10月初めのある日のこと、Twitterのトレンドの上位に「Funny Bunny」というワードが入っていた。何だ? と思ったところ、それが他でもないthe pillowsの楽曲のことだと知り、ちょっとビックリした。
それはこの歌がアクエリアスのCMソングとして起用されているのが話題になっているからだった。そのCMでは「見えない「がんばれ」篇」として、スポーツに取り組む子供たちと、そこでサポートする大人の姿が描かれている。
ここで「Funny Bunny」を唄っているのは女性シンガーのUru。彼女は今までにもさまざまな曲をカバーしてきた。同曲の伴奏はピアノだけで、Uruは透明感あふれる素晴らしい歌声を聴かせている。
また、もうひとつ驚いたのは、同じタイミングで、ギャツビーのCMでもやはりこの歌が唄われていることだ。こちらはアコースティックギターの弾き語りで、テンポを落としての生々しい歌声が静かに響くテイクになっている。唄っているのは佐藤緋美(ひみ)という二十歳の俳優。なんと浅野忠信とCHARAの長男である。
そしてどちらのCMも「Funny Bunny」の〈キミの夢が叶うのは 誰かのおかげじゃないぜ 風の強い日を選んで 走ってきた〉というフレーズが心に残る構成になっている。強調される、「キミ」のことを励ますような歌のメッセージ性。とくにアクエリアスのほうは、親の目線からの応援という側面が明白だ。
僕はこの解釈のされ方を見て、「Funny Bunny」が多くの人の心を射抜く名曲になっている事実を再確認した。というのは、決してわかりやすい応援ソングなんかではないように思っていたからだ。むしろ最初に聴いた時は、山中さわおが誰かに向けて書いた私信のような曲というイメージのほうが強かったくらいである。
さらに「Funny Bunny」には、この世への違和感や、その中での反骨心めいた感情も埋め込まれている。そうしたシリアスさの中で「夢」について唄っているところには、曲を書いた当時の山中の若さや青さを感じる。これが書かれたのはもう20年も前のことで、彼はまだ30歳。少年から青年期を終え、大人の年齢へと足を踏み入れる頃だった。
そうした背景を知るだけに、この歌が誰かへの応援歌として親しまれていることは新鮮でもあった。なにしろ山中は不特定多数の他人を応援する歌を作るような気質の人ではない。ただ、そうしたパーソナルな作風こそがこうした解釈の幅を生み、多様な捉えられ方を生んでいる側面はあるだろう。