『SUPER★DRAGON ONEMAN LIVE「IDENTITY NINE」』東京公演
SUPER★DRAGONの“アイデンティティ”が改めて感じられた夜 日比谷野音公演を振り返る
楽による「Remedy For Love」では、MVと同様にコンテンポラリーダンサーが登場。続く壮吾のプロデュース曲「雨ノチ晴レ」では、爽やかな楽曲を披露しながらメンバーが縦に連なって電車の車両を表現し、ジャンのプロデュース曲「New Game」ではボーカル加工を巧みに使ったパフォーマンスでゲームをテーマにした楽曲の世界観を表現。続く彪馬のプロデュース曲「PANDORA」では、ヒップホップアーティストを彷彿とさせる王座が登場し、踊るメンバーとは対照的に微動だにしない彼の佇まいが楽曲の魅力をさらに上げていく。そして個人プロデュース曲パートを締めくくる玲於の「Strike Up The Band」では、ステージ中央の高台に巨大なドラが登場。メンバーそれぞれに異なるパフォーマーとしての魅力や表現の仕方の違いが、カラフルに切り替わっていくような雰囲気が印象的だった。また、個人プロデュース曲のコーナーは、ここまでMCも休憩も一切なし。それぞれにカラーが異なるパフォーマンスが間髪入れずに連続することで、それぞれの違いがよりはっきりと伝わるようだった。ラストはいよいよ全員が同じ衣装に身を包み、全員リード曲「Don't Let Me Down」を披露。フューチャーベースを取り入れた不規則なシンセが印象的なドロップ部分で9人が揃ってダンスを披露し、ここまでの多彩な演出とは対照的な統一感が生まれる。こうした「各メンバーの個性」と「グループ全体での個性」の2つを行き来して生まれるダイナミックなパフォーマンスのバリエーションは、9人組の彼らだからこそだ。
そしてもうひとつ、この日ならではの魅力になっていたのは、初の野外でのワンマンならではの時間の経過。スタート当初はまだ明るかった日差しは、ライブが進むごとに徐々に変化して、最新アルバムの楽曲をすべて披露し終わる頃には、辺りをすっかり星空が包む。そうした周囲の景色を生かして、本編ラストには、日比谷野音のステージ全体に映像を投影しながらのパフォーマンスがスタート。「LRL-Left Right Left-」でメンバーと観客との巨大なコールアンドレスポンスが発生し、「Untouchable MAX」で洸希によるビートボックスや、銃を撃つ様子を取り入れた振り付けでさらに観客が盛り上がると、本編ラストの「BROTHERHOOD」では、毅が歌詞の〈1人じゃ叶えられない/同じ夢見てきた/この場所に今いれるのは、仲間がいたからさ〉という部分を「お前らがいたからだろ!!」熱唱。観客に向けて「これからも一緒にいい夢見ていきましょう!」と伝えて本編を締めくくった。アンコールは「PAYAPAYA」と「SHOPPING TIME」の2曲。中でも「SHOPPING TIME」の明るく楽し気ながらもライブの終わりを感じて一抹の寂しさを感じるような雰囲気は、過去以上に多彩な要素が次々に飛び出したこの日のライブだからこそより心に響いた。
この日何よりも印象的だったのは、グループの一体感を感じさせる新旧の全員リード曲と、新たに加わった個人プロデュース曲によって、SUPER★DRAGONのグループとしての個性がよりダイレクトに感じられたこと。SUPER★DRAGONのグループとしての一体感やエネルギーは、似通った9人が集まって生まれる種類のものではなく、むしろそれぞれに全く異なるメンバーが集まるからこそのダイナミックなエネルギーを持っている。そんな「SUPER★DRAGONのアイデンティティ」が、改めて伝わってくるような一夜だった。
(写真=笹森健一、小坂茂雄)
■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。