アルルカン×DEZERT×キズに感じた新たな時代の幕開け スリーマンイベントで見えた共通する姿勢

アルルカン×DEZERT×キズ、スリーマンレポ

 トリはもちろんアルルカン。千秋の言葉を受け「(角耳が)ビンビンのアルルカンです。宜しくお願いします!」と暁(Vo)の挨拶もそこそこに8月21日にリリースされるシングル『ANIMA』より「息の根」でライブをスタート。さらに「さぁ欲しいものに手を伸ばそう」と呼びかけた「餓えの自覚」ではファットなグルーヴを聴かせてくれた。ファストナンバー「墓穴」でライブの加速度は増し、フロアが声を上げ、ヘッドバンギングで応えるその様は「影法師」で暁が叫んだ「答えなんてなんでもいい。お前が吐き出したいものを持って来て、何かを掴んで持って帰ってくれ。不幸せを薄めるんだ」という言葉をそのまま表しているようだった。

暁(Vo)

 今回、面識のなかったDEZERTとキズを繋いだ張本人であるアルルカン。この役割は彼ら以外に出来る者はいなかっただろう。そのヒントは中盤に演奏された「Always」の〈認め合える事はそんなに楽なことじゃないけど それでも僕は明日を信じたい〉という歌詞にあるのではなかろうか。続く「人形-ヒトガタ-」で暁はキズとDEZERTに関して「潰し合おうっていうDEZERTもいいし、一緒に時代を作ろうっていうキズの言葉もいい。全部受け止めます」とアルルカンらしい答えを出した。そして、なぜその答えを導き出したかは次の曲のタイトルが示していた。演奏されたのは「価値観の違いは唯一の救いだった」。人の数だけ答えがあり、その価値観の違いによる軋轢で痛みが生じるが、その痛みこそが救いであることを知っているアルルカンだからこその答えなのだ。

 「先のことなんてわかんないけど、答えがあってるかとか、間違ってるかどうかも興味がない。見て見ぬふりをするくらいなら、わかったふりをするくらいなら、俺は一生ダメ人間でいい。そして、いつか! いつか! いつか! 俺は自分を自分で幸せにしたいんです。お前らも自分で(幸せに)なれよ!」と暁が叫び、「ダメ人間」のイントロが響くと、オーディエンスはそれに応えるように、自らを幸せにするべくこの日一番の声をあげ、イベントは幕を閉じた。

 今回このスリーマンを通して、三者三様の姿勢を見ることが出来た。そのどれもが正解であり、現在のシーンにおいてこの3バンドのように誇りをしっかりと持ち活動しているバンドが時に手を取り合い、時に切磋琢磨ながら、新しい時代を作っていくのだろう。また、価値観はバラバラな今回の3バンドではあるが、他者に救いを求めるのではなく、あくまで“自分を救えるのは自分自身”という姿勢は共通していた点も興味深かった。音楽性も価値観も自由。近年、文化として定着するあまりジャンル内でテンプレ化する傾向もあったが、ここにきて再び他と違うことをやろうというバンドも多く見られるこのジャンルがすでに終わっているとは到底思えない。むしろ来たる2020年代を目前に新しい時代の幕開けを感じている。

(写真=川島彩水)

■オザキケイト
平成元年生まれの音楽ライター。ヴィジュアル系を中心にライブレポートやコラムを執筆している。「Real Sound」や「ウレぴあ総研」、その他バンドのプレスリリースにも寄稿。
ツイッターアカウント:@lellarap__

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