乃木坂46ドキュメンタリー撮影で見えたグループの裏側とは? 岩下力監督インタビュー

乃木坂46ドキュメンタリー監督インタビュー

西野七瀬は「かっこよくて届かない存在」

――生駒さんのエピソードと合わせて、もう一度観たくなりました。今作の視聴層として、乃木坂46の歴史やライブを知っている人と、そうではない人の2パターンがあると思うのですが、そういったファンの視点は意識しましたか?

岩下:どちらかと言えば、僕は乃木坂46を全く知らないに近い状態ではあったので、そういった人にとってはある程度入りやすい作品なのかもしれないです。でも、僕自身はファンの方々の気持ちには到達できない。グループの歴史に対してどういう考え、気持ちを持っているかというのはわからないので、そこは推し量るしかないんです。亡くなった市川崑監督は『東京オリンピック』というドキュメンタリーを撮った時に、いろいろと批判を浴びたんですけど、回顧録で「もっと自分のものにしとけばよかった」と言っていたんです。だから僕も、自分が被写体と格闘した期間の中で、一番良い形に結実した自分にとってベストと思える作品にすることしかやれることはないなと。

――乃木坂46は、『日本レコード大賞』(TBS系)にて大賞を2年連続で受賞しました(2017年「インフルエンサー」2018年「シンクロニシティ」)。そのリハーサルで行われた振付師・Seishiroさんとの円陣は、ドキュメンタリーの山場の一つです。改めてあの現場の風景を見てどのように感じましたか?

岩下:異空間でした。編集された映像からも当時の情感は伝わってくるかと思いますが、現場にも不思議な力が働いているような印象でした。誰も言葉で説明できないような状況だったんですよね。

――リハーサルでは、メンバーのみなさんが自分たちのパフォーマンスの映像を見て、自然と涙を流していました。

岩下:なぜかは整理がつかないけれど、みなさん涙が止まらなくなったみたいですね。映画として伝えるためには、出来事の入り口からしっかり伝えないといけない。あのシーンは、編集で整理するのに時間がかかりましたね。

――岩下さんにとって特に思い入れのあるシーンはどこですか?

岩下:序盤で西野(七瀬)さんと与田(祐希)さんが抱き合っている暗闇の中のショットは宗教画のようで印象深いです。あのシーンを撮れた時は自分自身もびっくりしました。2人の人間関係はうっすら分かっていたけれども、カメラを振ったらあの光景があって。互いを抱き寄せていて、かすかに光が射すとルーブル美術館にでもあるような西洋絵画のように二人が微笑むんです。それを見たときに鳥肌が立って。そのシーンを基軸に2人に話を聞いて整理していきました。メンバーを追いかけて、それぞれの人間関係を知るということは多々ありましたね。

――西野七瀬とはどのような存在だったと思いますか?

岩下:一時期は、「儚い」「守ってあげたい」という印象を持たれる方が多かったのかなと思うのですが、僕が接していた期間は、卒業が近くなって「かっこよくて届かない存在」という見え方が強くなっていきました。ドキュメンタリーの中でもそういう方向で西野さんを描こうと思いました。

――劇中では、西野さんともう一人、齋藤飛鳥さんもグループの大きな軸として描かれています。飛鳥さんの印象は撮影前とで変わりましたか?

岩下:だいぶ変わりましたね。知り合いになった気がする、というのが大きいです。飛鳥さんがどう思っているかは分かりませんが、共感する部分が一番多い方だったなと。

――打ち解けたと思えた瞬間は?

岩下:飛鳥さんが成人式の後に参加した中学校の同窓会ですね。同窓会の場には、乃木坂46のスタッフの方やマネージャーの方がいないわけではないんですけど、わりと遠くにいて。何かあったら自分が飛鳥さんを守らなきゃいけない。同級生たちが、次にどういう動きをするのかまったく分からないという(笑)。

――飛鳥さんの隣に同い年の男性が来る場面も……。

岩下:そう!普通にひょこんと座ってきて「覚えてる?」と話しかけていて……ドキドキしました(笑)。同窓会の最後に、先生が飛鳥さんに話してもらおうと提案してくる時も、飛鳥さんが「どうしよう……」って言って、僕も「挨拶するなら助け舟は出さずに撮ります」と。打ち解けた瞬間として、あの日は決定的だった気がします。

――帰りの真っ暗な車内で飛鳥さんが放心しているシーンにて、「乃木坂46 Artworks だいたいぜんぶ展」で使用された「気づいたら片想い」の写真がインサートされるのも印象的でした。

岩下:観る人がいろんな受け止め方をしていただければ。スッと差し出しますけど、答えは提示しようとは思っていなくて。観る人に体感していただければベストかなと思います。

――映画は飛鳥さんと訪れるスコットランドでラストを迎えます。

岩下:飛鳥さんから行きたいという話があったので、「撮っていい?」と聞いたんです。自分もヨーロッパで撮れたらいいなとは何となく考えていて、まだ自分の中で作品に決着がついていなかった頃なんですよ。日常ではない、都会ではない遠くの場所で、大事なことを聞き出すチャンスはないだろうかと考えていたところ、そういった機会に恵まれたので、意を決して。

――岩下さんが今後乃木坂46に対して期待することは?

岩下:アイドル、グループとしてというよりは、単純に一人ひとりと接して、人間として近づいていった気がするので、アイドルではなくなる日が来ても、テレビからいなくなっても、元気でいてくれればいいなという気持ちが強いですね。

――『いつのまにか、ここにいる』は、岩下さんにとってどのような作品になりましたか?

岩下:長編のドキュメンタリーを作ったのは初めてだったので、このボリュームはすごいなというのは体感しました。大変ではありましたけど、やれてしまったので、さらなる欲が出てしまいます。今後も大きいものを作りたいなという気はありますね。

(取材・文=渡辺彰浩)

■作品情報
『いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46』
公開中
企画:秋元康
監督:岩下力
出演:乃木坂46
製作:今野義雄 北川謙二 大田圭二 秋元伸介 安齋尚志 
エグゼクティブプロデューサー:石原真 磯野久美子
プロデューサー:上野裕平 金森孝宏 菊地友 中根美里 佐渡岳利 
ラインプロデューサー:渡辺洋朗
監督補:菅原達郎 河本永 制作担当:宮田陽平 
撮影:小暮哲也 岩下力 編集:岩下力 
音楽:袴田晃子 熊谷隆宏 塩野恭介
制作:ノース・リバー 
制作協力:パレード・トウキョウ  
製作:乃木坂46合同会社 東宝 Y&N Brothers NHKエンタープライズ
配給:東宝映像事業部
(c)2019「DOCUMENTARY of 乃木坂46」製作委員会
公式HP
公式ツイッター

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