森崎ウィン、AUN Jクラシック・オーケストラとのコラボライブで発揮した歌声の魅力
ダンス&ボーカルユニットPRIZMAXのボーカルで俳優としても活躍する森崎ウィンが、和楽器ユニットのAUN J(アウンジェイ)クラシック・オーケストラとのコラボライブ『響 The Sounds of Japan Tour 2019』を5月4日、浅草花劇場にて開催した。
AUN Jクラシック・オーケストラは、和太鼓、箏、尺八、篠笛、三味線、鳴り物といった、通常は一緒に演奏されることのない和楽器のプレイヤー陣による画期的なユニット。各メンバーが国内外のアーティストの作品やライブを含め多方面で活躍しており、ユニットとしても世界初となるモン・サン=ミシェル(フランス)など世界遺産でのコンサートを行ったり、アニメ楽曲やジブリ楽曲のカバーアルバムをリリースするなど、ユニークな活動で知られている。
森崎とAUN Jとのコラボは、PRIZMAXが例年出演しているミャンマーでのフェス『ジャパンミャンマープエドー』に、同ユニットのメンバーも出演していた縁で実現。今回のライブは同ユニットと、森崎のほか石井竜也(米米CLUB)、大黒摩季、タケカワユキヒデ(ゴダイゴ)、渡辺美里といったアーティストたちとのコラボ楽曲を詰め込んだアルバム『響(ひびき)〜THE SOUNDS OF JAPAN〜』のリリースを記念したツアーの一環として行われた。
この日の第一部は、まずAUN Jのメンバーのみの「From The Far East」からスタート。尺八の石垣征山が「和楽器の音色の奥深さを楽しんでほしい」とMCでコメントしていた通り、ポップスやロックのフィーリングも駆使しながらときに雅に、ときにアグレッシブにとメリハリをつけて巧みに会場を盛り上げていった。
森崎はメンバーとおそろいの西陣織の生地を使ったジャケットに身を包み、アッパーな「万殊の灯りに想いを馳せて」のエンディングでステージに登場。三本締めで軽快に同曲を締めくくると、メンバーと軽妙なトークを繰り広げながら、観客にハンドクラップをうながした。続くイントロで“待ってました!”とばかりに会場のホリック(PRIZMAXファンの愛称)が盛り上がるなか、「カフェオレ」(2017年のシングル『Orange Moon』に収録)がスタート。コンポーザーとしても定評のある森崎が作詞作曲を手がけた、海外のファンにもよく知られているPRIZMAXのポップなサマーソングだ。
篠笛などの優しいメロディがリードしていく演奏に合わせ、通常のアレンジよりも繊細かつソフトな歌いまわしで恋のときめきを表現した森崎。メンバーが演奏しながら一緒にステップを踏んだりするステージングからも、双方がコラボを目いっぱいに楽しんでいる様子が伝わってきた。グループのライブとはかなり勝手が違うこの場でも、固定の観客をロックオンしながら歌ったりと、森崎らしいステージ運びで会場を盛り上げていった。
「やっべー、楽しい! やっぱ生音っていいですね!」と満面の笑みで語った森崎。確かにPRIZMAXの過去のライブを振り返っても、生バンドを従えて行った2015年の自身の生誕祭などを除けば、こういったライブはかなりレアといえる。鳴り物担当・HIDEの「ウィンくん、リハからテンションMAXだったもんね?」といったコメントも交えながら、ここでステージにはアコギが登場。「楽器のプロの前で楽器を弾くという……」と恐縮しつつも、十七弦(※低音域まで鳴らせる箏)、箏、篠笛、太鼓とのセッションで「ただいま」へ。
AUN Jのメンバーによる「打上花火」(DAOKO×米津玄師)のカバーや、大迫力の太鼓ソロなどを挟み、本編のラストで再び森崎が登場。ここで改めて同ユニットとJ-POPを中心としたアーティストたちとの前代未聞のコラボアルバムについて、太棹三味線、篠笛を担当している井上公平が説明。森崎は「参加アーティストが大御所の方ばかりで」と恐縮していたが、井上は「コラボ曲の『Don't Cry』(※同日より先行配信中)はアジアのアーティストと共作した楽曲で、これを歌ってもらうならウィンくんしかいないと思った」と、抜擢の理由を語っていた。歌詞は森崎自身が書き下ろしているが「“アジアを1つに”をテーマにした楽曲ですけど、世界平和とか大きなテーマを書ける器でもないですし、ギリギリまで悩みに悩んで。その頃にカンボジアの少年のドキュメンタリー番組を見て、その子にこのメッセージが届けばいいなと思って書きました」(森崎)とのこと。同曲ではスケール感のある演奏にのせ、〈僕らにできること 探し続けるから〉 と真摯なまなざしで歌い上げていた。こういったウェットなニュアンスを持つバラードでの、森崎独特のビブラートのかかった歌声は絶品の一言だ。