ハンブレッダーズ、マカロニえんぴつ……若者に支持されるバンドたちの“青春”の描き方

 ただ、これは歌詞における<僕>にスポットを当てた上での見方となる。ロックバンドの歌詞で描かれる世界は<僕>だけで成立するものではなく、多くの場合、<君>も同時に存在する。「青春」を歌う歌は自分語りになることも多いけれど、他者との関係性を通じた歌がほとんどだ。青春=甘酸っぱい恋愛だけにとどまらず、幅広い人間関係にスポットを当てて「青春」を描いてみせるバンドの中でも、特に繊細に他者との関わりを描きながら、人の心の機微を表現するバンドがいる。マカロニえんぴつである。マカロニえんぴつは、歌の主人公と<君>との関係性を通じて「青春」を描くタイプのバンドであり、<君>の喪失を歌うことで「青春」そのものの儚さをイメージさせる。ハンブレッダーズが当事者意識を強くして「青春」を歌っているのだとしたら、マカロニえんぴつは少し引いた視点、青春を終えた立場の人間からの視点から「青春」を描くというスタンスをとっているように感じる。

マカロニえんぴつ 配信シングル「青春と一瞬」MV

 このようにいくつかのバンドの「青春」の描き方を見てみると、スマホやSNSをはじめコミュニケーションが変容したと言われている昨今においても、意外と「青春」の描き方自体に大きな変化はないということがわかる。逆を言えば、変わらないものに強く惹かれる人ほど、「青春」を歌うロックバンドの音楽に強く惹かれるのかもしれない。いずれにしても、青春時代特有の心の機微だけは、どれだけ時代が流れても変わらないものなのだろうし、だからこそ、スタイルの違いや視点の違いはあれど、「青春」を描くバンドはいつの時代にも多く現れるのだろうと考える。

■ロッキン・ライフの中の人
大阪生まれ大阪育ち。ペンネームにあるのは自身が運営するブログ名から。人情派音楽アカウントと標榜しながら、音楽メディアやTwitterなどで音楽テキストを載せてます。

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