銀杏BOYZの二度目の日本武道館公演にあった“誕生日みたいな、葬式みたいな、結婚式みたいな気持ち”

銀杏BOYZ、二度目の日本武道館公演

 2019年1月15日、銀杏BOYZ二度目の日本武道館ワンマン。2017年10月13日、初の日本武道館ワンマンの時、ライブ後半のMCで「味をしめてしまったみたいなので、来年また武道館でやります。すいません、嘘です。こればっかりは俺だけで決められない」と言った峯田和伸だったが、意外と早く実現したことになる。

 ステージは、床も後方の壁も赤が基調。峯田が出演した映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』の原作者であり、峯田とは長きにわたり親交の深い末井昭と、ライターの島本なめだるま親方(という呼称を知っている時点で年齢がわかる)たちのバンドで、昔、西原理恵子のマンガによく出てきた(のを読んでいたという時点でも年齢がわかりますね)ペーソスがオープニングアクトを務めてからしばし経ち、開演時間の18時30分ぴったりにライブのスタートを告げる映像が流れる。続いて峯田、最近おなじみの赤と青と白のジャージ姿で登場。アコースティックギターを抱える。

 歌う前に峯田、1月15日というのは特別な日であることを告げる。2003年にGOING STEADYの解散と今後は銀杏BOYZとして活動していく、ということを発表した日(その時点では銀杏は峯田ひとりだったが)。2005年に銀杏BOYZのアルバム『DOOR』『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』2枚をリリースした日。2014年にアルバム『光のなかに立っていてね』『BEACH』をリリースした日……ほんとだ。全然気がつかなかった。

 「だから、誕生日みたいな、葬式みたいな、結婚式みたいな気持ちです」と言ってから峯田は、1曲目「生きたい」を歌い始めた。そして曲の途中でステージに出てきた山本幹宗(Gt)、藤原寛(Ba,Cho/AL)、岡山健二(Dr/classicus)、加藤綾太(Gt/2)ら4人のサポートメンバーが、後半のブレイクで「ベイベー!」と叫んで峯田が床に転がると同時に爆音を発し、全員での演奏が始まった。

 「若者たち」、そして「駆け抜けて性春」のYUKIが歌うパートでは、オーディエンスから大ボリュームのシンガロングが起こる。

 「駆け抜けて性春」の次の曲は、昨年秋~冬のツアーでプレイされた新曲「GOD SAVES THEわーるど」。ステージの様子を追うビジョン(画面)、峯田が歌うたびにすごいアップになる。顔のアップを超えて目のアップになる瞬間も。

 〈I don’t wanna die (死にたくない) 愛はどんなんだい〉というサビの「I DON’T WANNA DIE FOREVER」と〈告別式では泣かなかったんだ〉で始まる「漂流教室」を続けて歌ったあとのMCでは、高校2年の時に祖母が亡くなり、その1週間後にカート・コバーンが亡くなった、本当に好きな人が亡くなる初めての体験だった、という話をする。

 バンドをやめようと思ったことが二回だけある、そのうちの一回はレコーディングを投げ出してタクシーで帰る途中だった、カーラジオでかかったRCサクセションの「スローバラード」を聴いてやめることを思いとどまったーーという思い出も、言葉にした。

 そこから「新訳 銀河鉄道の夜」「NO FUTURE NO CRY」「SEXTEEN」を経て、メンバーがはけ、ステージが峯田だけになる。震災のあった2011年3月11日に、銀杏BOYZのマネージメントの社長であり、かつてはRCのマネージャーだった坂田さん(坂田喜策)が亡くなったこと、銀杏の武道館を見せたかったこと、でもきっと今ここに観に来てますよねーーという話をしてから、「坂田さんが引き合わせてくれた」という紹介で、元ボ・ガンボスのDr.kyOnを呼び込み、彼のピアノで「スローバラード」を歌う。次は「光」。レコーディングにDr.kyonが参加した曲だ。ふたりで始まり、曲の後半からメンバーが合流して、kyOnと銀杏の爆音セッションと化した。

 kyOnが去り、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」を歌い終えた峯田。「最後のアルバムから今日で5年……5年って長いですよね」。そうか、9年待ったことがあるから、それくらいなんとも思わなくなっちゃってたけど、まあ確かに長いよね、と改めて思った。ちなみに、今歌った曲が主題歌だった、峯田和伸主演映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』からは、何年だっけ……うわ、9年だ。「そろそろ出さないと。今年なんとか完成させるということを目標にして、2019年はがんばりたいと思います」「アルバム買ってくださいなんて言わない、聴いてくれればいい」と峯田。

 そして「バンドやっていていちばんライブで歌った曲」という紹介で「BABY BABY」へ。この曲をリハスタに持っていってメンバーに聴かせた時の話をした峯田、「初めて歌った下北沢のスタジオの感じで歌いたいと思います」と、客席に背を向けてメンバーと向き合い、それぞれに曲のコードを教えてから歌い始め、それにだんだん楽器の音が加わっていく。2コーラス目に入るところで峯田「2番はお客さんが歌ってくれます」と、スタンドごと客席にマイクを向ける。「若者たち」と「駆け抜けて性春」を超える、とてつもない大きさのシンガロングが巻き起こった。その最初のリハスタにいた元ドラマー村井守が、アリーナ後方のPA脇で見守っている。

 本編ラストは「僕たちは世界を変えることができない」と、サビで〈ロックンロールは世界を変えて〉と歌う「エンジェルベイビー」の二連発。峯田、ノドがつぶれていくのにも一切かまわず、すさまじいテンションで歌いきる。

 そして、アンコールに応えて出てきて、曰く、「前半、しゃべりすぎた。しゃべるほど音楽の価値が下がる気がして、今日はしゃべんねえぞって決めてたのに。しゃべっちゃったなあ」だそうです。「武道館、抽選なんですよね。1月15日にまたやりたいです」とも口にする。

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