aiko、岸田繁、清水翔太……FM802キャンペーンソング、過去作から最新作まで作風を分析

 音楽で新生活を応援する春のキャンペーン『FM802×TSUTAYA ACCESS!』では、毎年人気アーティストが多数参加しオリジナルキャンペーンソングを制作、FM802で独占オンエアしているが、12年目を迎える今年はaikoが作詞作曲を担当。「Radio Darlings」名義で発表された楽曲「メロンソーダ」には、aiko本人はもちろん上白石萌歌や谷口鮪(KANA-BOON)、橋本絵莉子(チャットモンチー済)、はっとり(マカロニえんぴつ)、藤原聡(Official髭男dism)がシンガーとして参加。さらにKANと秦 基博もコーラスで加わり、開局30周年を迎えるFM802を祝福するような素晴らしい内容になっている。

Radio Darlings×aiko 『FM802×TSUTAYA ACCESS! SPECIAL EDITION 2019』

 2006年からスタートした『ACCESSキャンペーン』。期間中はFM802局内のワイド番組で、毎年キャンペーンソングが放送されている目玉企画だ。初年度はスピッツの「チェリー」をKANや少年ナイフ、スキマスイッチら11組のアーティストがそれぞれカバーしたが、2007年以降は書き下ろしのオリジナルソングを使用するようになる。しかも翌年からは、キャンペーンのために結成されたオリジナルユニットによるオリジナルソングとなり、毎年メンバーもユニット名も一新しながら現在まで続いている。例えば2009年には、「RADIO SOUL 20」名義による「Oh! RADIO」が制作されたが、これは忌野清志郎が作詞作曲を手がけており、阿部真央やBONNIE PINK、和田唱(TRICERATOPS)らがボーカルを務めた。なお、忌野本人がボーカルを取った同曲の音源は没後の同年6月にリリースされ、これが本人自身の遺作となった。

 FM802のキャンペーンソングであるため、もちろん他局ラジオやテレビなどでは一切オンエアされない。それでいて豪華なメンツが集結し、気合の入ったクオリティの高い楽曲が制作されるのが特徴である。例えば2014年の「POSSESSION=80.2 POR CENTO」名義による楽曲「春の歌」は、作詞・作曲・編曲・プロデュースを桜井和寿とGAKU-MCによるユニット・UKASUKA-G(ウカスカジー)が担当し、2人のほか蒼山幸子(ねごと)やKREVA、槇原敬之ら総勢12名がボーカルで、さらにAmi(Dream/E-girls)や寺岡呼人ら8名がコーラスで参加する大所帯のアンセムとなった。

FM802 ACCESS!キャンペーンソング2014 メイキングダイジェスト

 2016年以降はプロデュースをFM802が担当。「ザ・プールサイド」名義の楽曲「Hello Radio」はくるりの岸田繁が作詞作曲を、tofubeatsがアレンジを務めた。往年の名曲を引用しつつ、自身のオリジナリティへと昇華していく岸田の作風は本曲でも健在。ボブ・ディランの「Blowin’ In The Wind」を彷彿とさせるAメロを、まずは木村カエラが歌いはじめるも、大橋卓弥(スキマスイッチ)へとバトンタッチされた次のラインでは、分数コードを用いてすでに「岸田ワールド」へと聴き手を誘(いざな)っていく。Bメロやサビの朗々としたメロディには、くるりの「さよならストレンジャー」や、後に彼らが発表する「風は野を越え」辺りに通じるムードが漂っている。90年代初期のUKインディーダンスを彷彿とさせる、tofubeatsのアレンジも絶品だ。

 「Buzz Connections」名義による2017年のキャンペーンソング「STAY TUNE」は、作詞作曲に「初の平成生まれのアーティスト」として清水翔太が抜擢された。R&Bを基軸としたこの曲は、清水が得意とするメロウなミドルバラード。抑揚を抑えつつも、随所にファルセットをちりばめたメロディは、清水本人はもちろん、大橋トリオやChara、大森元貴(Mrs. GREEN APPLE)といった、シルキーかつスモーキーな歌声を持つシンガーの良さを引き立てている。一方彼らとは対照的に、粘りの効いた声を持つHIROKI(ORANGE RANGE)とSKY-HIによるラップが、楽曲に鮮やかなコントラストを与えているのも印象に残る。

 昨年「Radio Bestsellers」名義で制作された「栞」は、作詞作曲をクリープハイプの尾崎世界観が担当し、アレンジにはポルノグラフィティや土岐麻子、あいみょんなどを手がけたトオミヨウが抜擢された。〈句読点のない君の嘘が好きだよ〉というラインや、曲の前半と後半に登場する〈途中から読んでも 意味不明な2人の話〉、〈あとがきに書いても 意味不明な2人の話〉という、曲のタイトルにちなんで「本」をテーマに対比させたフレーズなど、尾崎らしい文学的な表現が光っている。

 また、〈桜散る桜散る〉〈「ちょっといたい もっといたい ずっといたいのにな」〉という繰り返しのフレーズや、急激に畳み掛ける抑揚たっぷりのメロディも「尾崎節」といえるもの。スガ シカオや片岡健太(sumika)のような、尾崎と同じくハイトーンボイスを持つボーカリストと、GEN(04 Limited Sazabys)のような中高域に特徴のあるボーカリストを、セクションごとに効果的に配置するキャスティングも見事で、とりわけ2番から登場するあいみょんのアルトボイスの存在感は圧倒的だ。なお、この曲はクリープハイプが同年のアルバム『泣きたくなるほど嬉しい日々に』でセルフカバーしたのも記憶に新しい。

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