非日常的な空間とアンビエントミュージシャンの競演 『花紅柳緑@浜離宮恩賜庭園』イベントレポ

『花紅柳緑@浜離宮恩賜庭園』レポ

 都心の一角にある美しい庭園を回遊しながら、アンビエントミュージックを楽しむというユニークなイベント『花紅柳緑@浜離宮恩賜庭園』が4月20日、東京・浜離宮恩賜庭園にて開催された。

 同公演は、4月8日から20日にかけて東京都内で開催された、RED BULL主催の都市型音楽フェス『RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO 2019』のフィナーレを飾ったもの。通常、夜間に入ることのできない庭園が、光を操るアーティスト集団HIKARI ASOBI CLUB(光遊びクラブ)の照明演出によって美しく華やかに彩られ、そんな非日常的な空間の中で国内外のアンビエントミュージシャンらによるパフォーマンスが堪能できるという、なんとも贅沢なひと時だった。

 エントランスで配布される超小型のペンライトを持って園内に入ると、行灯で照らされた道がバーカウンターへと続く。普段は待合室として使われる「花木園」が、ピンクの照明によって妖しい存在感を放ち、まるで「秘密の宴」へと潜り込んだような高揚感が、胸の奥でじわじわと湧いてくる。

 ウォッカや梅酒をレッドブル(エナジードリンク、シュガーフリー、イエローエディションの3種類)で割った、特別なカクテルを飲み干し、さらに中へと入っていくと目の前に「潮入の池」が広がった。東京湾から海水を引き入れ、潮の満ち引きによって様相が変わるという、江戸由来の庭園では唯一現存する海水池だ。およそ25ヘクタールの広大な敷地にある、その池の周りを様々な木々が取り囲み、息を深く吸い込むと「森の匂い」が肺いっぱいに広がっていく。思わず都心であることすら忘れてしまいそうだが、公園の外には高層ビル群がそびえ立っており、森と池そして煌びやかな夜景が混じり合った摩訶不思議な空間に、観客からは感嘆の声が漏れていた。

Suguru Saito / Red Bull Content Pool

 ステージは、「鷹の御茶屋前」「中島の御茶屋」そして「富士見山下」の3つ。まずは入口から最も近い「鷹の御茶屋前」へ行くと、nami Sato と Loradenizによるパフォーマンスが始まっていた。宮城県仙台市出身のnamiは、東日本大震災をきっかけに音楽制作をスタート。故郷の再構築を試みたアルバム『ARAHAMA callings』のリリースや、母校である荒浜小学校で毎年開催される『HOPE FOR project』への参加など精力的な活動を行なっている。一方、オランダ出身のLoradenizは、現代音楽やジャズ、ミニマル〜アンビエントミュージックなどを融合した作品をコンスタントに発表しているシンガーソングライター。この日はラップトップコンピュータやミキサー、大量のペダルエフェクターが置かれたテーブルの前に2人で並び、様々な自然音や電子音をまるで「対話」をするかのごとく放ちあいながら、美しい歌声をリアルタイムでエフェクト加工しループさせていた。

Nami Sato + Loradeniz / Suguru Saito / Red Bull Content Pool

 「潮入の池」を縦断する、およそ100メートルの「お伝い橋」をゆっくりと歩いてみる。すると、向こう岸へと渡るその途中に、2番目のステージである「中島の御茶屋」はあった。ここは宝永4年に造られ、将軍や公家らが庭園を楽しんだという休憩所。建物の強度の関係上、畳敷きの狭い空間に入れる人数は決まっており、あっという間に入場規制がかかる中でHAIOKAのパフォーマンスは始まっていた。琴を用いたオリエンタルな響きと、シンセや電子音によるエレクトロな音色が重なり合う、どこか懐かしく切ないサウンドスケープを背中に感じながら、橋を渡って3番目のステージ「富士見山下」へ。そこではサウンドクリエイターYOSI HORIKAWAが、まるで大地の響きのように力強くトライバルなビートを繰り出している。池のほとりには芝生が広がり、観客たちは座ったり寝転んだりしながらうっとりとその演奏に耳を傾けていた。

YOSI HORIKAWA / Yusuke Kashiwazaki/Red Bull Content Pool

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