みゆはん、提供曲を歌うことで得たシンガーとしての表現欲「新しい自分が見つかった」

みゆはんが提供曲から得た表現欲

 2017年2月に、ミニアルバム『自己スキーマ』でメジャーデビューし、テレビアニメ『けものフレンズ』のエンディングテーマ「ぼくのフレンド」でその名を知られるようになったシンガーソングライター、みゆはん。父がギタークラフトマンで、幼い頃からたくさんのギターに囲まれ育ち、かっこいいしモテそうという理由でギターをはじめ、学生時代は友人とコピーバンドなどをしていたという。そしてさまざまなオーディションを受けて大学卒業とともに単身上京するという夢を叶えるべくアグレッシブに活動をしてきた一方、東京では引きこもりになってしまい、ひとり自分の世界ーー音楽やアート表現を濃厚に煮詰めるような生活をしてきた、なかなか謎に満ちたアーティストだ。

 2作のミニアルバムと昨年7月には1stフルアルバム『ひきこもり情報弱者』をリリースし、その内なる世界をギターに乗せて爆発させてきたみゆはんの次なる作品は、TERU(GLAY)や菅波栄純(THE BACK HORN)、コレサワ、GReeeeN等、8組のアーティストが楽曲提供をしたコラボアルバムとなる。どの曲も、それぞれが思い描くみゆはん像や、みゆはんに表現してもらいたい曲を書き上げており、まさにノンジャンル。なんでもありのアルバムということで、タイトルは『闇鍋』とされた。いちシンガーとして曲に乗って遊んだもの、楽曲に合う歌詞を描いたものなど、みゆはんのアプローチもさまざまで、彼女の新たな引き出しが開かれたアルバムである。ひきこもり中であるみゆはんが、このコラボ作にどんな思いを寄せたのか。近況なども含めて話を聞いた。

 ちなみに今作のジャケットに映る“土鍋”はみゆはん作。その他、生産限定盤では、みゆはんの“闇”的な毒たっぷりのアイテムも封入されているので、一枚まるっと全方位で楽しんでみてほしい。(吉羽さおり)

ほかの人が作った曲も歌ってみたい気持ちがあった 

ーー昨年7月に1stアルバム『ひきこもり情報弱者』をリリースして以降は、主にどんな活動をしていたんですか。

みゆはん:アルバム以降はライブとか、人前に立つようなことはしていないので、ほぼ家で曲作りをしていました。

ーーリリース後も家に引きこもって制作の日々だったんですね。ではそのなかで今回の2ndアルバム『闇鍋』はどんなふうに進んでいったんですか。

みゆはん:もともと自分の作った曲だけじゃなくて、ほかの人が作った曲も歌ってみたい気持ちがあったんです。それで、いろんなアーティストさんに曲をお願いしたいなという、今回のコンセプトが生まれて。

ーー今作での人選はみゆはんさんが挙げていった方たちなんですか。

みゆはん:誰にお願いしたいかというのを具体的に考えていたわけではなかったんです。ただ、GLAYのTERUさんは以前からTwitterでやりとりをしていたりもしたので、TERUさんにはぜひ書いていただきたいなと思っていて、それでお願いをしてみました。

ーーTERUさんとのTwitterでのやりとりは、TERUさんから投げかけてくれたものですか。

みゆはん:はい。Twitterをしていたら、“TERUさんにフォローされました”っていう通知がきて(笑)。あれ?! って思って。調べたら本当にGLAYのTERUさんだったのでびっくりして。それからずっとやりとりをしてますね。といっても最初は、“フォローありがとうございます”というだけでしたけど(笑)。その後にTERUさんがラジオで紹介してくれたりもして。じつは、まだお会いしたことがないんですけど。

ーー今回のレコーディングで実際に会って制作をしたというわけではないんですね。では、TERUさんには今回どんなふうにお願いをして、進めていったのでしょうか。

みゆはん:まずはマネージャーさんを通してお願いをして、Twitterのダイレクトメールでこういう曲がいいとか、逆にTERUさんからはこういう歌い方をしてほしいっていうやりとりをしましたね。

ーーほかの方についてはどうですか。

みゆはん:コレサワさんは、もともとわたしがコレサワさんの曲が好きで。コレサワさんの曲は歌っていても、楽しい曲ばかりなんですけど、そのなかでも「たばこ」という曲が、すごく好きなんです。それで“「たばこ」のアンサーソングを書いてください”って、無理なお願いをしたら引き受けてくださって。

ーー異色な組み合わせで面白いなと思った、THE BACK HORNの菅波栄純さんは。

みゆはん:菅波さんは面識はなかったんですけど、同じレコード会社で。わたしの担当の方がもともとTHE BACK HORNを担当していて、紹介していただいたんです。つじあやのさんもそうですね。このおふたりは、スタッフの方から、一緒にやってみたら面白いんじゃないかということで紹介していただきました。

ーーでは、みゆはんさんがやってみたい人と、きっと新しい引き出しを開けてくれるだろう人たちとタッグを組んだアルバムなんですね。曲をお願いするときには、コレサワさんの場合のように具体的なイメージや方向性はそれぞれにお話ししていたんですか。

みゆはん:基本的にはアーティストさんにお任せしていました。あまりこちらから提案してしまうと、アーティストさんの色が薄れちゃうかなと思って。お好きなように作ってくださいっていうお願いで、作ってもらいました。

ーーみなさん、みゆはんさんを使って、遊んでいる感じがすごくしますね。そのなかでは誰の曲が最初に上がってきたんですか。

みゆはん:最初は……菅波さんかな。

ーー「人間関係満腹中枢」ですね。いきなり濃ゆい曲が(笑)。

みゆはん:こちらからは特にどういうものをというオーダーをしていないんですけど、菅波さんがみゆはんというアーティストをイメージして書いた曲だって言ってくださって。すごいぶっ飛んでる歌詞で、音楽も面白くて(笑)。初めて聴いた瞬間にすごく引き込まれて、これ歌いたい! って思いました。

ーーシュールな歌詞の世界観でセリフ的なパートが出てきますが、自分だったら書かないだろうなという曲ですか。

みゆはん:そうですね、ここまでふざけた曲は書いたことがないです(笑)。

ーー(笑)。レコーディングはどんなふうに進んでいったんですか、菅波さんからボーカルのディレクションなどもあったのでしょうか。

みゆはん:レコーディングは基本的にわたしひとりで、スタジオに籠もってやっているんです。この曲ではいろんな歌い方を試してみて、この曲に合う歌い方ってどんな歌い方だろうって、やりながら研究していたので。いちばんしっくりくるテイクを選んで、はめ込んでいった感じですね。菅波さんからも、とくになにもオーダーはなかったので、すごく難しくて。でもこの曲は、いろんなキャラが出てくると面白いかなって思ったので、結構ふざけちゃってもいいのかなと思いました。でも、曲のなかのかっこいいところもちゃんと残したかったので、そこは歌い方もかっこよくしたりと、いろいろ勉強になりました。

ーーできたものを聴いてもらって、リアクションはあったんですか?

みゆはん:菅波さん的にもこの曲は、多重人格みたいなイメージがあったようで、そこを表現しているということで、褒めてくださいました。

ーーみゆはんさんをイメージして書いた曲で、まずこういうぶっ飛んだ曲が上がってくるというのは、どんな見られ方をしてるんだ? っていう面白さはありますね(笑)。

みゆはん:ですよね(笑)。ちょっとワケのわからないところが。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる