なぜジャニーズがバーチャルアイドルに? 芳賀ゆい、初音ミクなどの歴史から相性の良さを考える

 現在ジャニーズのネット進出を担っているのは、ジャニーズJr.だ。昨年2018年3月に正式スタートしたYouTubeの『ジャニーズJr.チャンネル』では、5つのグループが思い思いのオリジナル動画を連日アップしている。また、コンサートの生配信などを行う『ISLAND TV』がこの3月からスタートすることも先日発表された。予定のラインナップには、SixTONES、Snow Man、Travis JapanとここにもジャニーズJr.のグループ名が並ぶ。

 その背景には、2020年の東京五輪・パラリンピック開催を控えて世界から日本への注目が高まっていることがある。ジャニーズJr.によるユニット・2020の構想もあるように、自らの築き上げたエンターテインメントをこの機会に世界に発信したいという思いがジャニー喜多川には当然あるだろう。そこにジャニーズJr.に対する思い入れも人一倍強い滝沢秀明が新たにスタッフに加わって、いま述べたようなネット進出が加速していると推察できる。

 そしてその流れのなかで、ジャニーズ版バーチャルアイドルは誕生した。すでに始まっている配信は、SHOWROOMならではの視聴者とのコミュニケーションを交えたトーク中心の内容だ。その意味では、最近ブーム的な人気を博しているバーチャルYouTuber(VTuber)を思い出す。

 だが、独自の部分もある。それは、声の主があらかじめ誰であるかわかっていることである。最初に書いたように、キャラクターの声を演じるのは関西ジャニーズJr.の2人だ。彼らは彼らでコンサートや舞台、テレビなどに出演する。またファンならばしゃべっている姿もすぐに想像できる。そこが基本的には声の主を明かすことのないVTuberとは違う。

 VTuberの面白いところは、声の主を公表しないことによってキャラクターに比較的自由に個性を持たせられることだ。たとえば、猫耳のいかにも可愛らしいルックスのキャラクターが毒舌や過激な言葉を吐く。そんなギャップが人びとを惹きつける理由のひとつだろう。

 その点、ジャニーズ版バーチャルアイドルはキャラクターと声の主であるジャニーズJr.との距離感のとりかたに注意が必要になる部分もありそうだ。しかしそこは考え方ひとつでもある。声の主が最初からわかっていることを逆手にとって、他のVTuberにはないリアルとバーチャルの「一人二役」の面白さをより積極的に打ち出してもいいはずだ。

 つまり、今後盛り上がる展開を生むためには、「中の人」がわかっているという特徴を長所にしていく工夫が大切なのではなかろうか。それはもちろん演者であるジャニーズJr.の側だけに求められるものではない。バーチャルアイドルの元祖的存在である芳賀ゆいがそうだったように、ファン側がこの状況をいかに遊べるかにかかっているだろう。いずれにしても、ジャニーズの歴史のなかでこれまでなかったような可能性を持つ試みであることは間違いない。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント』(光文社新書)、『ジャニーズの正体 エンターテインメントの戦後史』(双葉社)、『木村拓哉という生き方』(青弓社)、『中居正広という生き方』(青弓社)、『社会は笑う・増補版』(青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。

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