Juice=Juiceが表現した今この瞬間の輝き 8人体制最初で最後のトリプルA面シングルをレビュー

 〈ポツリと ただ そばにいるのに 誰よりも 近くで〉〈ポツリと ただ 見つめてるのに  「好き」って一言が 言えない〉というサビフレーズを持つ「ポツリと」は、恋愛関係における距離感の機微を歌った切ない歌詞が心に染み入る。

Juice=Juice『ポツリと』(Juice=Juice[Solitary])(Promotion Edit)

 作詞作曲は、ハロプロおよびJ=Jにも多数の提供楽曲があるロックアーティスト中島卓偉によるもの。本曲はギターよりもシンセやストリングスを主体に用いて、歌詞の孤独感を逆説的に表現するかのような壮大かつスケールのある音像が構築されている(編曲は浜田ピエール裕介)。こういったタイプの楽曲はハロプロおよびJ=Jでも珍しいのではないだろうか。筆者はBuono!の2009年のアルバム曲「ゴール」を連想したりもした。

 メンバーの歌唱も豊かでしなやかな迫力があり、これがライブではさらに映える。歌割を確認すると、他の楽曲に比べてソロパートがかなり少なく、2人あるいは8人全員によるユニゾンが多い。そんな中で目立つのが、間奏開けの落ちサビ冒頭を続けて歌っている金澤朋子、高木紗友希のソロパートだ。艷やかな声質が武器の金澤と、J=Jのみならずハロプロ全体においても屈指の歌姫といわれている高木、この2人の歌声が要となっているのが本楽曲である。

 また、間奏では宮本・稲場の2人だけでコンテンポラリー風ダンスを舞い踊る場面があり、ここでもまた「まなかりん」が強調されている。

Juice=Juice『Good bye & Good luck!』(Juice=Juice[Good bye & Good luck!])(Promotion Edit)

 梁川奈々美の卒業ソングという位置づけなのが「Good bye & Good luck!」。なにしろ曲冒頭からいきなり梁川のソロ歌唱で始まり、以降も彼女が大々的にフィーチャーされている。卒業の歌とはいえ、あくまで曲調は明るくさわやかで、笑顔で手を振ってお別れするような情景が思い浮かぶ一曲だ(実際のサビでも、手を振ってバイバイするような、わかりやすく真似しやすい振り付けになっている)。作詞を手がけているのはベテランの三浦徳子で、J=Jへは「Ça va? Ça va? (サヴァサヴァ)」「Feel! 感じるよ」に続いて3度目の歌詞提供となる。

 梁川はJ=Jと同時にカントリー・ガールズとの兼任メンバーでもあり、J=Jでの「GbGl」の他にもう一曲、カントリーでは「弱気女子退部届」という卒業ソングが用意されている(ミニアルバム『Seasons』収録)。こちらの作詞は児玉雨子が担当しており、梁川への完全な当て書き作詞になっている。万人の卒業シーンにも当てはめることができる「GbGl」の歌詞と聴き比べてみるのも一興だろう。

 作曲を担当しているのは、男性音楽作家のKOUGA(編曲は炭竃智弘)。「微炭酸」の作曲編曲も彼によるもので、2曲どちらも奇をてらいすぎない王道サウンドが続いた。現在25歳のKOUGAもまた、ハロプロ楽曲シーンにおける次世代若手作家のひとりだ。

 MVは、メンバー全員で女子会パーティーを開いているかのようなシチュエーションを撮っており、明るく楽しい、いわゆる「わちゃわちゃ感」が存分に堪能できる。J=JのMVでこのような作りはなかなか珍しく、こういう映像が見たかった! というファンも多いのではないだろうか。

 「微炭酸」「ポツリと」の2曲では「言いたいことが言えない」という内容の歌詞なのに対し、「GbGl」では「グッバイ!グッドラック!」と朗らかに宣言しているという違いがあり、その対比がサウンド面にも現れているのが面白いシングルとなった。今後もJuice=Juiceのグループとしての歴史は続いていくが、現時点の8人での記録/記念として意義深いシングル作品である。

■ピロスエ
編集およびライター業。企画・編集・選盤した書籍「アイドル楽曲ディスクガイド」(アスペクト)発売中。ファンイベント「ハロプロ楽曲大賞」「アイドル楽曲大賞」も主催。
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