レキシの万人に開かれたエンターテインメントなライブ 自身初の横浜アリーナ公演を観て

レキシの万人に開かれたエンターテインメント

 しかし、宴はまだ終わらない。客電が落ちてスクリーンに登場したのは全身タイツ姿のレキシと秋山竜次(吾作と神様どこいった?)。「ライブっていいね」「楽しいっていいね」「お客さんていいね」の掛け合いから、「まんが日本昔ばなし」のエンディング映像の再現が始まる。〈いいな、いいな、人間ていいな〜♪〉とサビに差し掛かったところから映像のトーンは一変。DA PUMP「U. S. A.」のオマージュ「I. N. A.」へ突入。〈カモンベイビーアメリCATS!〉と歌詞さえ変えて、ISSA役のお館様を筆頭にメンバーそれぞれが「U. S. A.」のPV衣装を着てステージに出てくる。もう何が何だかわからない、なんというカオス! ラストナンバーは「マイ会津」。ゆったりとしたレゲエのリズムが、怒涛の3時間をしっとりとクールダウンさせてくれるようで心地良い。「ラララ」とともに口ずさみながら、濃厚で濃密で豊かな音と戯れた時間が走馬灯のように蘇る。ああ、宴が終わる。三浦大知も交え、全員でカーテンコールを終えると、今度こそ帰りを促すアナウンスが流れ出した。

 レキシのライブは緻密に計算され尽くした、エンターテインメントだ。アドリブのようなセッションもMCで繰り出される観客いじりも、すべてはレキシこと池田貴史のホスピタリティに裏打ちされてのことと回数を重ねるたびに実感している。歴史に題材を得たクオリティの高い楽曲だけでも十分楽しいのに、もっと、もっと、とオマケが増えていく。それは誰が見ても楽しい、誰が聴いても踊りたくなる、そんな完全体のエンターテイナーでありたいからなのだろう。レキシというアーティスト、そして彼のライブはニッチなようでいて実は万人に向けて開かれた音楽の港なのだ。次は一体どんな景色を見せてくれるのだろう。そんなことを考えながら、カバンから稲穂がはみ出すのも構わずに帰路についた。

(写真=田中聖太郎)

■渡部あきこ
編集者/フリーライター。映画、アニメ、漫画、ゲーム、音楽などカルチャー全般から旅、日本酒、伝統文化まで幅広く執筆。福島県在住。

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