米津玄師の創作活動はより自由になったーー対照的な2曲並ぶ『Flamingo / TEENAGE RIOT』評

 人間のみっともない姿を描いた変化球的な「Flamingo」。若者への思いをストレートに歌い上げた「TEENAGE RIOT」。今回のシングルはある意味、対照的な2曲をA面に並べている。片方では暗く怪しげな楽曲を歌い踊り、もう片方ではその雰囲気を打ち砕くような力強い1曲に仕上げている。このバランス感覚こそが今彼が多くの人々から支持されている理由なのだろう。大仰な一枚岩のポップソングひとつにまとめるのではなく、陰と陽、清濁合わせた2曲セットでひとつの作品として世に放っている。

 また、これまで一貫してポップなものを目指しきたこと、そしてそれが前作でしっかりと結実したことが、今現在の彼の創作活動を自由なものにさせているのだろう。ここ数年の彼の活動はネット世代のロードモデルとなりつつある。「Lemon」で世間から一度表現者として認められたことで、一転して“与える側”へと回り、今作は広く世の中に訴えかける楽曲となった。米津は「弱い自分、みっともない自分を、ちゃんと肯定してあげないといけないのかな」とも語る。

 最後に、カップリング曲の「ごめんね」にも触れておこう。先日幕張メッセにて行われたライブ『米津玄師 2018 LIVE / Flamingo』では、アンコールで披露され大合唱に包まれたこの曲。重低音が特徴的なEDM風の構成だが、もともとは彼がハマっているゲームのイメージソングとして作ったのだという。

 今回収録された3曲の中では最も“自分による自分のための”楽曲であるが、それを機能的にはまったく真逆とも言える“合唱サビ”の楽曲として作り上げている点は何とも言えない面白さがある。自分のための歌こそポップに仕上げる――そんな一筋縄ではいかない発想が、彼の魅力を単純には語り得ないものとしているように思う。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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