ダンサー辻本知彦は“言葉にできない感情”を表現する 米津玄師、土屋太鳳らを魅了する振付を解説
現在公開中の映画『累-かさね-』。W主演の土屋太鳳と芳根京子の鬼気迫る演技もさることながら、作品中でひときわ強烈なインパクトを放っているのが、土屋太鳳のダンスシーンだ。
劇中劇として上演されるオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』の楽曲「7つのヴェールの踊り」にのせ、情熱的に舞い踊る土屋。同曲では蛇のように腕をくねらせる“スネイクアームズ”などベリーダンスの動きに、袖を噛んで嫉妬の感情を表現するといった歌舞伎的な要素も組み合わせており、オリジナルのエキゾチック感に引き込まれてしまう。
この印象的な振付のほか、米津玄師「LOSER」やSia「アライヴ feat. 土屋太鳳」、最近ではRADWIMPS「カタルシスト」 、MAN WITH A MISSION 「2045」、米津玄師プロデュースのキッズユニット・Foorin「パプリカ」(※菅原小春との共作)など、さまざまな話題作で振付を担当しているのが辻本知彦だ。彼の独創的な振付はなぜ、表現者たちの心をとらえるのだろうか。
辻本はストリートダンスに魅かれて18歳でダンスを始め、すべてのダンスの基本といわれるバレエなども学んだのち、世界的に活躍するエンターテインメント集団、シルク・ドゥ・ソレイユに日本人男性ダンサーとして初めて参加。2015年の帰国後はパフォーマーとしてはもちろん、振付師としても頭角を現してきた。
彼がアーティストのMVで振付を手掛けた中でもよく知られているのが、“ダンサー”土屋太鳳の表現力に世間が度肝を抜かれたSia「アライヴ」の日本版MVだ。
3歳からバレエや日本舞踊などさまざまなダンスを始めた土屋は元々高い身体能力の持ち主だ。同MV収録時には辻本との約3週間の特訓の末、アラベスク(片足立ちでもう片足を後ろに上げる)やプリエ(足を外側に向けて膝を曲げる)といったバレエの動きをベースにストリートダンスのニュアンスを加えた辻本の振付を、ダイナミックかつ繊細に舞い踊った。同MVを見たダンスの申し子・三浦大知に「女優や俳優の演技力でダンスまで出来てしまったら、表現力がすごくてもう自分は何していいかわからなくなる」(『関ジャム』2017年1月22日放送回)とまで言わしめた傑作でもある。