早見沙織が語る“多面的な歌と演技”に挑み続ける理由「癖や個性が出るなら色んなものに挑戦したい」

早見沙織が語る“多面的な歌と演技”への挑戦

 自作曲「メトロナイト」「SUNNY SIDE TERRACE」制作秘話

ーーそして、ここからは早見さんが作詞作曲を手がけたカップリングについても伺わせてください。まずはアーバンな香りもするダンスナンバー「メトロナイト」について。

早見:自分がピアノで作曲をしている時、印象的なリフが浮かんだんです。それを元に曲を作り、リフの部分はギターに差し替えてもらって、倉内さんが組み上げていってくれました。

ーーでは、最初はダンスナンバー的なものを作ろうと思っていたわけではなかった。

早見:そうですね。でも、ミディアムアップぐらいのちょっと明るくて楽しい、小洒落た感じが合うのかな、とは思っていました。

ーーレトロフューチャー感というか、80’sディスコ・ダンスミュージック的な要素もあります。

早見:私が「こういうのだったら楽しいだろうな」っていうのだけを考えて作った曲ですね。ライブ映えを狙ったところもあります。

ーー打ち込みっぽくしても良かったと思うのですが、ベース・ドラムが生音でちゃんとグルーヴしているのが、この曲の魅力をより引き立てている気がします。

早見:その辺りは倉内さんに「ベースのところはもうちょっと変えてください」と、だいぶ動く感じにしていただきました。

ーー歌い方もこれまでにない、少し突き放す感じが新鮮でした。

早見:それ、ディレクターさんにも「ちょっとSな感じがして、いいんじゃないですか」って言われたんですよ。そんなに意識してないのに(笑)。そう言われると気恥ずかしいですね。

ーーそのサディスティックな感じは、〈孤独はまだ癒えない〉の〈癒えない〉の言い方あたりに顕著ですよね。早見さんって、少し粘り気があったり、優しく包み込むような歌い方というイメージがあるので、今回のような歌い方を選んだのは面白かったです。

早見:ボーカルは曲がある程度無機質なところに、無機質な歌を乗せるのか、もっと癖をつけていくのかを相談して何度も録ったんですけど、テイクを重ねれば重ねるほど歌いやすくなっていく曲なんですよ。なので、ライブをやればやるほど上手く歌えるようになる気がします。

ーー歌詞に関しては、早見さんから出た「無機質」というキーワードが当てはまるようなものだなと思いました。

早見:この歌詞はちょっと作り方が不思議で。ピアノでリフを作りながら、サビの歌詞が先にできたんですけど、自分で書いておいて「何これ?」と思ってしまいました(笑)。

ーー〈もっと騒いで もっと働いてよ〉の部分ですね。

早見:「どうした、早見沙織!?」と思いますよね(笑)。元々は仮歌詞くらいのつもりだったんですけど、倉内さんに編曲していただいたものを聴いているうちに、「私はもしかしたらこういうことを書こうとしていたのかもしれない」という気づきがあって、そのあとは面白いくらい歌詞が書けました。

ーーアレンジが上がってきて、書こうとしていたものが見えた、というのは面白いですね。もう1曲のカップリング「SUNNY SIDE TERRACE」についても聞きたいのですが、これは「SIDE SEAT TRAVEL」(3rdシングル『夢の果てまで』カップリング曲)の続編ですか? 頭文字が同じなので、気になってしまって。

早見:そうなんです! 今回の取材を受ける中で最初に気づいてもらえたので嬉しいです。始めは無意識にこのタイトルを付けていたんですけど、物語的にも繋がるところがあるのかもなとだんだん思ってきたりして。同じ歌手の歌で、この曲とこの曲は登場人物が同じとか、設定がつながっているとか、そういう関係図を想像するのって楽しいじゃないですか。なので、私の曲を聴いてくれる方にも、そういう体験を味わってほしいなと。もちろん、別々のものとしても楽しんでもらえるようにしていますし。

ーーアレンジも曲も面白くて、パーカッションを効果的に使ったカフェミュージックという感じで。以前に早見さんが影響を受けた音楽の一つにNouvelle Vagueをあげていたので、まさにその辺りなのかなと(参考:Kool & The Gang、Rhye、フジファブリック……早見沙織が明かす“影響”を受けた楽曲)。

早見:その雰囲気は結構意識しました。あと、まりやさんの曲と一緒に収録されると、表題曲がより引き立つようなものにしたい、という考えもありました。私がなんとなく感じる「まりやさんっぽい曲」って、シティ感があって、オシャレでパーカッションも入っているイメージなので、大久保薫さんにもそのあたりを意識していただくようにお願いしたんです。

ーー歌詞に関しても、1、2番での情景の変わり方、アイテムの使い方、視点の変化といったテクニックが使われていて、作詞家・早見沙織の本領発揮ともいえる曲になったのでは、と思いました。

早見:ちょっと、やめてくださいよ(笑)。

ーーお世辞抜きに良い歌詞ですよ。〈コーラルの恋〉という印象的なフレーズが使われていますが、この「コーラル」という言葉って、そのままの意味だと「サンゴ」ですけど、リップなどのメイクで使う色としての「コーラル」ですよね。

早見:そうなんです。この曲に関しては、大人すぎず、子供すぎない女性の日常感が伝わるものにしたくて生まれたもので。「コーラル」も、チークやリップに使うもので、肌馴染みが良くてワクワクするときなんかに使う色なんです。あと、主観と俯瞰でいうと、主観的に映像をはっきりイメージして作ったのは2番の歌詞ですね。

ーー〈お気に入り 空色のシャツ インディゴに染まってるの今気づいたの?〉のあたりですか?

早見:まさにそうです。水色っぽい服を着ていると、水が溢れたら濃い色に変わるじゃないですか。綺麗な色のシャツを着ている子が「こんなことあってさ……」と話しながら泣いちゃって、その子の涙でシャツがインディゴにしまっている画をイメージしました。でも、どれも最後は直接的にしすぎないように心がけましたね。

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