乃木坂46はこれからどこへ向かう? 6thアニバライブからグループの“存在意義の変化”を紐解く

乃木坂46、存在意義の変化を読む

 また、二つの大会場を用いての同時開催にまで拡大した今回のライブは、乃木坂46単独の音楽フェスであるかのような想像力も喚起する。両会場合計で一日あたり6万人を動員する規模感、隣接会場で上演されるパフォーマンスを目にすることはできずとも、時折互いの会場の上演曲の音だけが遠くに聞こえる夏の情景、あるいはメンバーが双方の会場を行き来するバックステージの様子がコンテンツになるさまなどは、フェス的な風景が断片的に織り込まれているようでもあった。

 そして、3日間を通じて上演曲目を基本的に統一したセットリストは、バースデーライブの意味を著しく変えてみせる。シングル表題曲のほとんどを組み込み、乃木坂46のトレードマークとなる姿をみせることに重きを置いた構成は、従来のバースデーライブ特有の文脈を共有しない層に向けても届けやすい。いまや社会的に巨大な存在感をもつ乃木坂46にとって、背負う役割も誰に何を届ければよいかもかつてとは変わらざるを得ない。選抜/アンダーのチーム分けを基本として、メンバーは双方の会場を行き来しながらライブを上演していくが、いずれの会場でも共通の曲目披露を原則としているため、3日間のうちどの日のいずれの会場に足を運んでいたとしても、ほぼ同じ楽曲群を味わえるように組まれていた。2018年の乃木坂46は、多くの人々に向けてグループの代表的なカラーを表現することを選択したと言える。

 前述のフェス的な想像力を発展させるならば来年以降、セットリストをいかに構成するかという選択肢はいくつも考えうるだろう。しかしともかくもバースデーライブ史上、最も外部に開かれたものとして、今回の『6th YEAR BIRTHDAY LIVE』はあった。

 歴史の記述よりも現在形を重視したライブであるだけに、“今”の乃木坂46を提示する場として印象的な要素が多く見いだせたのも今回の特徴だった。

 毎年、夏の神宮球場ライブ開催時にセンターを背負うメンバーには、大きな期待と重圧とがかけられてきた。今回、特に注目すべきは2つの会場のセンターを白石麻衣とともに分け合ったアンダーセンターの鈴木絢音だっただろう。年始のアンダーアルバム新録曲「自惚れビーチ」や20thシングルアンダー曲「新しい世界」でセンターを担当し、次作表題曲「ジコチューで行こう!」の選抜メンバーに選ばれた2期生の彼女が今回のライブで見せた存在感は、この先に向けての大きな希望になる。

 層の厚い乃木坂46で新進メンバーが選抜に定着するのは難しい。その困難を最も引き受けてきたのは2期生であったし、状況は現在も大きく変わったわけではない。けれども、長いキャリアのなかでアンダーライブの蓄積をはじめ、1期選抜メンバーと遜色ないライブパフォーマンスを続けてきたからこそ、二つの大会場を選抜メンバーと分け合うまでの実力が蓄えられてきた。このバースデーライブでアンダーの旗手を務めた鈴木が、21thシングル期間とも重なる全国ツアーで何を開拓できるかは重要である。ともにアンダーメンバーを今日の高水準に育ててきた相楽伊織と1期生の斎藤ちはるのラストライブでもあり、本格参加を果たした北野日奈子が自身のリスタートを告げる公演にもなるなど、アンダーにとっても変化の時機を示す3日間となった。

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