フィリピンの国民的バンド・LOLA AMOUR、小波津志(PSYCHIC FEVER)と揺らす日本の音楽シーン 意外な共通点にも迫る

フィリピンの国民的バンド、LOLA AMOURがワールドツアー『LOLA AMOUR Around the World Live in Japan』を開催。1月24日に東京、1月31日に大阪で行われた来日公演には、PSYCHIC FEVERの小波津志がゲスト出演し、フィリピンで2億回以上再生されているコラボ曲「The Moment」を披露した。同曲のヒットを含む功績により、LOLA AMOURは「2025 MUSIC AWARD JAPAN “Philippines Popular Music 特別賞”」も受賞している。
昨今、SB19やBINIらP-POP勢の躍進によってフィリピン音楽シーンへの注目が高まるなか、バンドという形態でアジアのポップ・マーケットを更新している存在こそがLOLA AMOURだ。ポップ、ファンク、ロック、さらにはジャズまでを横断するジャンル・フリーなサウンドで頭角を現し、2022年には「Fallen」がSpotifyトップ200で9位を記録。そして決定打となったのが、山下達郎が1982年に発表した楽曲「SPARKLE」に大きな影響を受けて制作された「Raining in Manila」だ。2023年にリリースされるやフィリピン国内の配信チャートを席巻し、総再生数は2億2,000万回超を記録。日本のシティポップと東南アジアの現行ポップスが幸福な邂逅を果たしたこの楽曲は、LOLA AMOURを“国民的バンド”へと押し上げた。
LOLA AMOURは名門デ・ラ・サール校出身のメンバーを中心に結成され、憧れはBruno MarsとThe Hooligansだという。その嗜好はステージを観れば一目瞭然だ。ホーン・セクションを擁する編成、タイトなリズム隊、ファルセットと地声を行き来するボーカルワーク。まさに“アジア版のSilk Sonic”と呼びたくなる現代型ソウル/ファンクの体現者と言えよう。



大阪公演の翌日、LOLA AMOURのメンバーと小波津志にインタビューを行うと、メインボーカルのPio Dumayasは、東京公演でも大阪公演でも大きな手応えを感じたことを明かしてくれた。「日本の観客の皆さんはすごく素敵で、もっと長く滞在したいなって思いました。ライブでは、まだ発表されていない曲も演奏したんだけれど、みんなが大きな歓声を上げてくれた。それを見て、リリースがすごく楽しみになりました」――観客の反応を即座にエネルギーへ変換するバンドの地力が垣間見えた瞬間だ。



コラボ曲「The Moment」で合流した志の存在も特筆すべきだ。志はLOLA AMOURの魅力について「一人ひとりが主役かのようなパフォーマンス・ステージングが素晴らしい。見ているだけで周りを幸せにするパワーがある」と語る。実際に共演した感想としても、「フィリピンで初めてお会いして、最初は緊張したんですけど、本当に明るくて温かく受け入れてくれたので、すぐに打ち解けることができました」と、バンドメンバーの人柄に触れつつ、楽曲「The Moment」については「PSYCHIC FEVERにはない雰囲気の楽曲だったので、いろんな歌い方を意識した」とアプローチの変化があったことを明かした。志のシルキーでありながらもソウルフルなボーカルは、バンドのグルーヴに新たな陰影を与え、楽曲のダイナミクスを拡張することに貢献している。


一方、LOLA AMOUR側も志を高く評価する。Pioは「観客をどう盛り上げるかを分かっている。それに、ライブではいろいろなことがすごく速いペースで進むことも多いですが、彼はそういう状況にもすぐ順応して学んで、どんどん自分のものにしていきます」とライブパフォーマンスの巧みさを讃え、David Yuhico(キーボード)も「とてもフレンドリーで、すごく努力家だし、歌声も本当に素晴らしい。ライブでもスタジオでも映える声で、みんな志のことを本当に気に入っています」と絶賛する。アジア圏でここまで本格的なソウル・ニュアンスを操る日本人ボーカリストは稀有であり、彼らが“アジアを代表するレベル”と認めるのも頷ける。


音楽的背景の共通項も興味深い。LOLA AMOURのメンバーは山下達郎やカシオペア、杏里といった、現在はシティポップとして世界的に評価されるアーティストをはじめ、Nujabes、Fishmans、青葉市子、サカナクション、坂本慎太郎など、さまざまな日本のアーティストからも影響を受けたという。志自身も、彼らがもっとも影響を受けたというBruno Marsへの憧れを明かしており、「好きな音楽が一緒なんですよね。どこかソウルメイトのような感覚」と語っている。両者は特に、70〜80年代ソウル/ファンクを現代的に再解釈する志向で深く共鳴しているようだ。


今後について、LOLA AMOURはPSYCHIC FEVERの「Paradise」をバンドで演奏したいと語り、オリジナル楽曲での共作にも意欲を示した。ホーンを活かしたディスコ・ファンク路線か、それともAOR的アプローチか。想像は尽きない。


東南アジアは若年人口が多く、音楽の拡散力も強い巨大マーケットだ。その中心地の一つで“国民的”地位を築いたLOLA AMOURと、日本の実力派ボーカリストが結びついた意義は大きい。Bruno MarsやSilk Sonicを愛するリスナー、日本のソウル/ファンク・ファンにこそ、アジアにLOLA AMOURというバンドがいることを伝えたい。しかも日本のボーカリストと本気で響き合っているーー。この化学反応が、逆輸入的に日本の音楽シーンを揺らす日も遠くないはずだ。
























