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『Spotify Early Noise Night vol.6』

Spotifyイチ押しの若手が大阪に集結 『Early Noise Night vol.6』が生み出した熱狂

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 スウェーデンで08年にサービスを開始してサブスクリプション型音楽配信サービスの先駆けのひとつとなり、全世界でユーザー登録数1億7000万人(有料会員数7500万人)を誇る定額制ストリーミングサービス・Spotify。そのSpotifyが手掛けるライブイベント『Spotify Early Noise Night vol.6』が、6月15日に大阪・心斎橋 Music club JANUSで開催された。

(撮影=竹本みずき)

 『Spotify Early Noise Night』は、Spotifyが運営する新人アーティストの公式プレイリスト「Early Noise Japan」と連動する形で、国内の注目の若手アーティストにスポットを当てるオールナイトイベント。これまでにWONK、RIRI、JABBA DA FOOTBALL CLUB、向井太一、大比良瑞希、chelmico、YonYon、CHAI、Tokyo Health Club、あいみょん、STUTS、JJJ、など様々な面々が出演し、選ばれたアーティストはそれぞれにブレイクを果たしている。いわば、人気ストリーミングサービスによる、リアルな現場での若手アーティストのショーケースイベントだ。今回はこれまで東京で行われてきた同シリーズ初の大阪開催となり、入場料1000円で6組の新鋭が観られる機会とあって多くの観客が詰めかけた。

(撮影=竹本みずき)

 会場内にはSpotifyのロゴをあしらった提灯が飾られ、バースペースにはSpotify東京オフィスと同じく卓球台が登場。観客が自由にくつろぐスペースが設けられた場内はライブというよりクラブのパーティーに近く、リスナー同士を繋ぐ“交流の場”という雰囲気も強く感じられる。また、大阪での開催とあって、東京を拠点にするアーティストだけでなく、大阪、京都、福岡など西日本を拠点に活動するアーティストも登場。ライブとDJとを交互に展開するタイムテーブルを設けることで、朝まで過ごしやすい空間が作られていた。

SIRUP(撮影=今村知嗣)

 まずはトップバッターとしてSIRUPが登場。「SIRUP」と表示された青色のネオンが輝くステージに6人編成のバンド仕様で現われると、関西弁のMCも交えながら「Synapse」「LOOP」といった人気曲を披露。ヒップホップ的な感覚も取り入れたR&B/ソウルサウンドとシルキーボイスで観客を魅了する。後半はバンドメンバーのサックスソロで会場が沸いた「一瞬」を経て、「超踊れる曲やけどみんないける?」と新曲「Do Well」を披露。最後は「音楽の中を一緒に“SWIM”しよう!」と語りかけて「SWIM」でステージを終えた。

the engy(撮影=竹本みずき)

 続くthe engyは京都を拠点に活動する4人組バンド。Spotifyに上がっている楽曲はまだ数曲ながら、フォロワーはすでに1万人を越えている。音源を聴く限りではSuchmosやNulbarichのようなファンキーなロックバンドに通じる魅力も感じられたが、ライブを観るとよりブルースの要素やヒップホップ、The Stone RosesやHappy Mondaysを筆頭にした往年のマンチェスター勢のようなグルーヴが前面に出る瞬間もあり、中でも曲の後半にかけての盛り上がりが最大の魅力のように感じられた。全編英語詞の楽曲を演奏し、ラストは「Headphones」で徐々に楽曲のBPMが早くなって大団円を迎えた。

DAWA(FLAKE RECORDS)(撮影=竹本みずき)

 また、この日は転換DJには東京からやってきたSpincoasterのDJ陣に加えて、関西のインディシーンを支える大阪のレコード店「FLAKE RECORDS」のDAWA氏も登場。こうした瞬間も大阪開催ならではの出来事だったと言えるだろう。

Attractions(撮影=竹本みずき)

 一方、今回の出演者の中で最も西に拠点を置く福岡のAttractionsは、序盤から「Baby Relax」や「Twilight」を筆頭に洒脱なコード感を持った踊れる楽曲を連発し、頭上に光るミラーボールも相まって会場はさながらディスコのダンスフロアに。もともとThe Strokesなどを筆頭にした海外のインディロック勢直系のロックチューンからより音響的な楽曲まで持ち曲の幅広いバンドだが、以前観た際よりも80’sディスコ風の雰囲気が強調されていたのは、深夜の時間帯を意識してのことかもしれない。中盤にはSpotifyで公開されたばかりの「Leilah」を披露。定番のアンセム「Knock Away」にも大きな歓声が起こった。

向井太一(撮影=竹本みずき)

 続いて『Spotify Early Noise Night vol.2』以来2度目の出演となる向井太一が登場すると、観客がフロアいっぱいに詰めかけて会場はさらなる熱狂の渦に。まずは「FREER」でライブをはじめると、続く「FLY」ではサビで観客が揃って手を振るなど序盤から終始一体感溢れる雰囲気で、中盤には初期曲「SLOW DOWN」も披露。歌声はもちろんのこと、押し引きのメリハリが絶妙なステージングにもますます磨きがかかっている。「GREAT YARD」では観客の合唱が生まれ、MCを挟んで披露した最新EP『LOVE』からの先行曲にして、tofubeatsがプロデュースを担当した「Siren」ではイントロから大歓声。最後はゴスペル風のトラックが印象的な「空(feat. SALU)」でふたたび観客の合唱が生まれていた。

あっこゴリラ(撮影=竹本みずき)

 ライブはいよいよあと2組。向井太一のライブの熱気を引き継ぐ形で登場したあっこゴリラは、なんと片足を骨折しての登場。冒頭、Nirvanaの「Rape Me」をバックにカートに乗って登場すると、自分のミスで足を折ってしまったことへの怒りをニルヴァーナの楽曲で表現し、それに引っ掛けてカートに乗ってきた(カート・コバーンへのオマージュ)ことを告げて爆笑が起こる。とはいえライブは終始エネルギッシュで、「TOKYO BANANA」~「TOKYO BANANA 2018」では途中〈BANANA BANANA OSAKA BANANA〉というアドリブを加え、「大阪のみなさん、お腹空いたんじゃないですか?!」とフロアにバナナを投げ込む恒例のパフォーマンスを披露。中盤の「ゲリラ」では向井太一が飛び入りし、観客の盛り上がりが沸点に達した。この楽曲はSpotifyの2017年~2018年の年末年始のCM曲でもあり、現在までにSpotifyだけで200万回以上再生されている。以降もメジャーデビュー曲「余裕」や「ウルトラジェンダー」を披露して圧巻のステージを終えた。

AFRICA(撮影=竹本みずき)

 ライブパートの最後を担当したAFRICAは、大阪を拠点に活動を続ける5人組。はっぴいえんどを筆頭にした日本語ロックの伝統に連なりつつも、同時に現代的でアーバンな雰囲気も持ち合わせていて、Yogee New Wavesのような東京のバンドとの親和性も感じられる。また、サウンドの質感には2010年代の海外のインディバンドに通じる感覚もあり、それが彼らの個性になっているように感じられた。この日のセットは終始踊れるダンサブルな楽曲が中心。Talking Headsの「Once in a Lifetime」をSEに登場し、「翌朝」や「サマータイム」「BOY」「よろこびのわ」などを披露した。

(撮影=竹本みずき)

 Spotifyは自ら“音楽発見サービス”とも謳っているが、たとえばBeats 1のようなラジオ局や配信動画などを強化してメディア性に力を入れるApple Musicと比べても、そのサービスは人々のリスナー体験を可視化する公式/非公式のプレイリストや、リスナーごとにパーソナライズ化することを重視したUI設計を生かした“新たな音との出会い/発見”に比重を置いている。こうした方向性は、他サービスとUIを見比べてみれば一目瞭然だ。つまり、一口に定額ストリーミングサービスと言っても、それぞれ目指す形やゴールは違っているということ。そして新しいカルチャーをすくいあげるハブとしての特性を持つプレイリスト「Early Noise Japan」は、Spotifyが得意とする“新たな音との出会い”を象徴するものだ。

 そんな「Early Noise」の魅力をリアルな場に連れ出して、各地からSpotifyイチ押しの若手が大阪に集結した『Spotify Early Noise Night vol.6』は、ジャンルも拠点も様々なアーティストが集うイベントならではの熱気に溢れていた。Spotifyのプレイリストには、各地のローカルな音楽トレンドを可視化する機能もあるため、今後これが日本版にも導入され、イベントが様々な場所で開催されるーーなんてことがあれば、土地ごとの再生数などのデータを活用し、開催地ごとに個性豊かなラインナップを持つ、そんなイベントが実現する可能性もありそうだ。同イベントの今後には、サービスとの連携を含めたさらなる展開を期待したい。

(撮影=今村知嗣竹本みずき

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

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