フィロソフィーのダンス、生バンド編成ライブで到達した“新しい次元”

フィロのスが到達した“新しい次元”

 新しきフィロソフィーの光と道。2018年6月16日、恵比寿LIQUIDROOMで開催されたフィロソフィーのダンスのワンマンライブ『Girls Are Back In Town VOL,1』東京公演は、ファンクを歌うことをコンセプトにしてきたフィロソフィーのダンスが、新しい次元へ到達したことを強烈に感じさせた。

 『Girls Are Back In Town VOL,1』東京公演は、CAMPFIREでのクラウドファンディングによって調達された資金をもとに、一流ミュージシャンによるバンドで生演奏を行い、さらにそれを映像で記録するという趣旨のもと開催された。クラウドファンディングは当初300万円に目標が設定されていたものの、最終的にはなんと1000万円を突破。アルバム『ザ・ファウンダー』が2017年にリリースされた際に多く聞かれた「生演奏で聴きたい」というファンの声を実現するものとなった。

 当日まで一切明かされなかったバンドメンバーは、ギター、キーボード、そしてバンドマスターに宮野弦士。さらにキーボードに福田裕彦、ギターに朝井泰正、ベースに砂山淳一、パーカッションに早藤寿美子、ドラムに城戸紘志という6人編成で生演奏が行われた。

 バンドマスターが宮野弦士であるという点は、『Girls Are Back In Town VOL,1』東京公演の大きなポイントだった。フィロソフィーのダンスの編曲をすべて担当しているのが彼であり、CDなどの音源はプログラミング主体で制作されてきた。その宮野弦士が生みだしてきたサウンドのイメージが生演奏で具現化されたのが『Girls Are Back In Town VOL,1』東京公演だったのだ。

 2017年10月7日に渋谷CLUB QUATTROで開催されたワンマンライブ『Do The Strand VOL.4』は、後半に早藤寿美子のラテンパーカッションが入る構成で、思わず満点を献上したくなるほどのライブだった。早藤寿美子は、メンバーとの強い信頼関係ゆえに『Girls Are Back In Town VOL,1』東京公演でも続投することになる。

 そして、この日を迎えるにあたって並々ならぬ努力と覚悟をしてきたのが、フィロソフィーのダンスの奥津マリリ、佐藤まりあ、十束おとは、日向ハルの4人だった。フィロソフィーのダンスに加入することがなければ、ファンクを聴くことすらなかったかもしれない4人は、Apple Music強制加入を経てファンクの洗礼を受けることになる。特にこの1年でのボーカルグループとしての成長は劇的なものがあった。

奥津マリリ

 また、プロデューサーの加茂啓太郎は最近、日向ハルをMs. Lisa Fischer & Grand Baton、レイラ・ハザウェイ、奥津マリリをコリーヌ・ベイリー・レイのライブへ連れていき、ボーカリストとしてのさらなる成長をうながしていた。

日向ハル

 メンバー自身も、2017年7月15日の新宿BLAZEでのワンマンライブ『Do The Strand Vol.3』以降、ダンスの指導をしてくれるコーチを探し、ダンスインストラクターにしてコレオグラファーのMёgと出会うことになる。2018年3月23日のフィロソフィーのダンスの定期公演の際、リハーサルでフィロソフィーのダンスのメンバーが床に寝たので何をしているのだろうと見ると、4人は両肘で身体を支えて体幹トレーニングをしたまま、Mёgの指導のもと1曲を歌いきっていたのだ。

 そして2018年6月16日の『Girls Are Back In Town VOL,1』東京公演。完全ソールドアウト公演のために当日券はなし。会場は満員で、うかつにフロアへ降りると身動きが取れないほどだった。

 開演すると、バンドとともに登場したのは謎のドレッドヘアーの黒人男性。そのデビッド・アイザックによるスペシャルMCとともに『Girls Are Back In Town VOL.1』東京公演はスタートした。ふだんはオープニングSEが流れるだけだが、そのオープニングSEがこの日は生演奏による完全版として披露されたのだ。フィロソフィーのダンスのデビュー当時、オープニングSEとして使われていたのはDeee-Liteの「Groove Is In the Heart」。しかし、洋楽はライブ配信などでの権利許諾が大変だということで、その後オリジナルのオープニングSEが制作され、さらに生演奏されるまでになったわけだ。

佐藤まりあ

 ライブは、90sソウルの新曲「イッツ・マイ・ターン」で幕開け。そして「アイドル・フィロソフィー」では、ファンによるシンガロングが発生。「アイドル・フィロソフィー」は、2016年11月20日に開催されたフィロソフィーのダンスの初のワンマンライブ『Do The Strand VOL.1』で1曲目に初披露された新曲であったことを考えると感慨深い。

 「オール・ウィー・ニード・イズ・ラブストーリー」ではファンの激しいコールが響く。そして、モータウンとアメリカ南部の香りがより濃く出た生演奏だった。また、「バイタル・テンプテーション」から「エポケー・チャンス」への流れは、この日もっともファンク濃度の高いゾーン。バンドのうまさを体感させたパートでもあった。

十束おとは

 「アルゴリズムの海」は、生のドラムとパーカッションが入ったことで、もっとも原曲と感触が変わることに。「アイム・アフター・タイム」は、しっとりとしたミディアムアレンジから始まる趣向だった。

 カーティス・メイフィールドをオマージュした「コモンセンス・バスターズ」ではファンの声も入りまくり、いわゆる「沸く」状態に。1970年代のニューソウルが予期していなかった、極東アジアでのニューソウルの変異形だろう。

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