乃木坂46、人気の理由はメンバー個人の成長にあり “46”の数字にこめられた意味から読み解く
乃木坂46は、大きなグループへと成長した。それは、グループにとって毎年恒例である明治神宮野球場や昨年到達した目標の地・東京ドームでのライブ。『日本レコード大賞』の受賞、3年連続での『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)への出場と、乃木坂46が坂道をさらにさらに登っていく度に思っていたことだった。けれど、4月22日に日本武道館にて開催された『乃木坂46 生駒里奈 卒業コンサート』で見た彼女たちの姿には、CDの売り上げや会場の大きさなどでは説明できない、精神的な成長を感じずにはいられなかった。2011年、乃木坂46の1期生として加入し、今年2018年にグループを卒業する生駒里奈。これは、2005年にAKB48に加入し、2012年にグループを卒業した前田敦子がいた年数、7年間と同じだ。あの頃のAKB48に勝るとも劣らない、国民的アイドルグループへと成長した乃木坂46は、この7年間でどのようにして地位を築いてきたのか。
AKB48グループや坂道シリーズを手がけるプロデューサー・秋元康氏が、時流を参考にしつつも、マーケットのニーズよりも自身の感性や思いつきに重きを置き、アイドルをプロデュースしているのは周知の事実。最近でも、ラストアイドルや22/7、劇団4ドル50セント、吉本坂46と様々なシーンに手を伸ばし続けている、言わば打てそうな球には全てバットを振り続けるスタイルだ。「会いに行けるアイドル」をコンセプトに秋葉原にAKB48劇場を構え、毎日のように公演を行うことで、目に見える成長をファンに感じさせるAKB48に対して、公式ライバルとしてスタートした乃木坂46が打ち出したのが、専用劇場を構えず、「AKB48より人数が少なくても負けないという意気込み」という“46”の数字が表すように、AKB48のカウンターとしてあり続けるということだ。AKB48の礎があってこその、乃木坂46であることは言うまでもないが、ファッションや音楽性、映像におけるコンセプトにおいても、先人たちのやり方を踏襲しながら、違う道を切り開いたことが大きい。
2015年、映画『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』が公開された年、“乃木坂らしさ”という言葉をよく耳にした。『真夏の全国ツアー2015』ファイナル、明治神宮野球場での公演は、その“乃木坂らしさ”をテーマに、メンバー一人ひとりがグループにいる意味を見出していくものだった。あれから、およそ3年が経ち、メンバー個人の“乃木坂らしさ”は見違えるほどに強まった。メンバーのソロ活動で言えば、“今世紀最大のヒット”となっている白石麻衣の2ndソロ写真集『パスポート』(講談社)を筆頭に、“出せば売れる”というメンバー個人の写真集のヒットが続いている。
西野七瀬や齋藤飛鳥、生田絵梨花、堀未央奈など、フロントメンバーを中心に活躍の幅は広く、雑誌、CM、ドラマ、映画、バラエティ、舞台、ラジオ……など、見ない日はないと断言できるほどに、個人として、グループとしての色はますます濃いものに。生駒の卒業公演で、ステージに並ぶ顔ぶれを見て、改めて一人ひとりが乃木坂46の顔になっていることを実感したが、生駒がアンコールのMCで伝えた「この世界に夢を持ってしまった。この先に続く夢をつかみたいと思ってしまった。だからこそ、メンバーには自分もいつかそうなったときに、胸張って1人で仕事できるっていうところを見せてあげたい」という言葉には、“乃木坂らしさ”の先、また別の坂道があることを感じずにはいられなかった。
もう一つ加えれば、乃木坂46はスタッフからも愛されるグループであり、それが現場の肌感覚で伝わっているのも、ファンが応援しようと思える原動力である。例を挙げれば、3月25日に放送されたインターネット特別番組『乃木坂46時間TV』のエンディングにて、生駒が3日間以上寝ずにメンバーを支えるスタッフの苦労に触れ、涙するスタッフにもらい泣きする場面があった。日本武道館での卒業公演では、これまで乃木坂46に携わったスタッフから生駒に当てたメッセージがコンサート中に何度もスクリーンに映し出された。ファンから見て、運営やスタッフの姿というのはよく見えるもので、MVや個人PVをはじめとしたメンバーへの愛情が溢れた作品性がファンへと伝わっていることも、乃木坂46の魅力の一つと言えるだろう。
今夏には、坂道合同新規メンバーオーディションとして、乃木坂46 4期生のオーディションがスタート。昨年末より公言し始めている、アジア圏への進出もグループにとっては今後の目標となってくる。乃木坂46が坂道を登り続けるために、グループはさらに大きく成長していく。
■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter