乃木坂46 生駒里奈の思いにメンバーやファンが共鳴する時ーー卒業コンサート開催に寄せて
本日4月22日、日本武道館にて『乃木坂46 生駒里奈 卒業コンサート』が開催される。1月の卒業発表からおよそ3カ月。今回のライブでは、グループ史上初のライブビューイングを実施し、全国各地の映画館で生中継にて生駒の勇姿を見守ることとなる。追加に次ぐ追加で販売された全国128カ所の映画館チケットは即完売。デビューから6年が経ち、乃木坂46が全国規模の国民的グループに成長したこと、そして生駒里奈がどれだけ愛された人物であったかを物語る一つの証でもある。
生駒は、デビューシングル『ぐるぐるカーテン』から、5thシングル『君の名は希望』までの初代センターを務め上げ、2014年にはおよそ1年間に渡りAKB48との兼任を続け、まだ一般的には無名に近かった乃木坂46の知名度貢献に尽力したグループの顔だ。同時に思い出されるのが、6thシングル『ガールズルール』にて白石麻衣へと受け渡されたセンターの重み。ドキュメンタリー映画『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』では、重圧からの解放、安心感からくるステージでの失神、舞台裏で喜びに満ち溢れた彼女の姿にて、センターを張るということがどれほどの責任を背負うことなのかを、残酷に、生々しくも伝えている。
AKB48との兼任を終えた2015年の夏、生駒は12thシングル『太陽ノック』にて再びセンターに選ばれる。ストイックな思考は変わらず、広い視野と柔軟性を身につけた彼女の、ステージで輝く眩しい笑顔は決して忘れられない。乃木坂46の顔としてあり続けた生駒は、2016年に出演した『舞台版 こちら葛飾区亀有公園前派出所』で、初めてグループから離れて一人での仕事を経験。2017年の舞台『モマの火星探検記』においては、乃木坂46の『真夏の全国ツアー』の一部を欠席し、自身の演技と向き合った。自分でも覚えていないほどに多忙の時期だったと語る5作連続の初代センター、AKB48との兼任、20歳という節目を経て、彼女が見出したのは自分のためにも生きていいということ。3年連続での『NHK紅白歌合戦』への出場、『日本レコード大賞』の受賞。グループが立派に成熟し、メンバー個人が一人立ちし始めたというのも、もちろんある。
「自分のことも他人のことも考えられるようになったのはここ1、2年の話なんですよ」(『月刊エンタメ 2018年5月号』より)
グループから離れることで客観的に見える、乃木坂46の中の自分。故に、メンバーの大切さ、認め合うことも意識し始めていったのだろう。昨年、グループの一つの到達点でもあった東京ドーム公演にて、生駒が「自分を犠牲にしてでも守りたいって思えるのが乃木坂46のメンバー」と涙ながらに語っていたことにも繋がってくる。バトンを受け渡した白石が再び単独センターを務める20thシングル曲「シンクロニシティ」では共鳴する思いを、白石の後ろで生駒が柔らかな笑顔で伝えている。さらに、1期生メンバー20名での生駒最後のセンター曲「Against」は、まるで彼女に当て書きしたような歌詞であると同時に、新たな道へ進む決意を歌っている。
「卒業ライブもしんみりとした構成にはしたくないです。一般的な『アイドルの卒業ライブ』が自分には合ってないと思うので」「『楽しい』を重視した新しい卒業ライブを作ることができたらいいな」(『月刊エンタメ 2018年5月号』より)
この卒業ライブへの言葉は、「シンクロニシティ」で乃木坂46をより良くするために、卒業シングルにしたくはないという、生駒の一貫した思いが表れている。5月6日に幕張メッセにて開催される全国握手会でのパフォーマンスがラストとなる予定だが、武道館で披露する多くの楽曲が生駒にとっての最後の歌唱となるだろう。特に、乃木坂46の代表曲であり、生駒のセンター曲「制服のマネキン」は、ライブのハイライトの一つになるはずだ。ライブでは未だに披露されていない「シンクロニシティ」「Against」のパフォーマンスも必見である。
加えて先述したように、生駒は数多くの名言を残してきた。アイドルを卒業する彼女が、最後の挨拶でどのようなメッセージをファンに向けて残すのか。全国のファンとメンバーの思いが共鳴する時がくる。
■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter