欅坂46は壁を越えて進み続けるーーデビュー2周年ライブで手にした“強さと自信”

欅坂46は壁を越えて進み続ける

 MCを終えると、全9曲におよぶユニットコーナーに突入。今回の総力戦を語る上でも、このユニットコーナーは非常に重要なブロックだ。「バレエと少年」では中心に立つ小池美波と原田葵の豊かな表情や作り込まれた細かなしぐさなどから、昨年夏のツアー以降の成長が伺える。また、この2人は「AM1:27」にも加わり、鈴本美愉や小林に引けを取らないダンスを見せてくれた。志田が欠席したユニット、青空とMARRY(菅井、守屋茜、渡辺梨加、渡邉)は「波打ち際を走らないか?」で笑顔いっぱいのパフォーマンスを披露し、メンバーが1人足りないことを一切感じさせなかったし、「結局、じゃあねしか言えない」を歌う五人囃子(石森虹花、織田奈那、齋藤冬優花、佐藤詩織、土生瑞穂)が全体でのパフォーマンスとは異なる大人びた姿をアピールする。長濱も自身のソロ曲「100年待てば」、さらに尾関、小池を交えた「バスルームトラベル」をメルヘンチックな演出とともに披露した。

 そして、今泉はソロ曲「再生する細胞」を裸足で堂々と歌唱し、透明感のある歌声を響かせる。特に今泉は、最終公演でこの曲にアレンジを加え、落ちサビをアカペラで披露。こういった挑戦からも、彼女が日々成長していることが伺える。さらに、今泉と小林によるユニット・ゆいちゃんずが昨年のアニバーサリーライブ以来1年ぶりにファンの前に登場。昨年のツアーでは歌われることのなったアルバム『真っ白なものは汚したくなる』収録曲「1行だけのエアメール」と、最新曲「ゼンマイ仕掛けの夢」の2曲を披露し、息の合ったハーモニーを聴かせてくれた。そこには1年前、歌うことに対して自信を失いかけていた2人の姿はなく、随所でアイコンタクトを取りながら歌う様からはある種の余裕すら感じられた。

 ユニットコーナーを終えると、メンバー19人による総力戦を再開。「月曜日の朝、スカートを切られた」では渡邉の凄みを効かせたソロパートに対し驚きの声が上がり、「エキセントリック」では土生がセンターに立ち、この曲本来の独特なダンスを高身長の彼女ならではのパフォーマンスで表現してみせる。また、本公演ならではのサプライズとして坂道AKBの「国境のない時代」を欅坂46のメンバーだけで披露。原曲同様に長濱がセンターを務め、普段のソフトな印象とは異なるクールな表情でセンターをやり遂げた。

 今やライブの盛り上げには欠かせない「危なっかしい計画」からライブ終盤戦に突入すると、志田に代わって織田が観客を煽り、「風に吹かれても」では小林が堂々と単独センターを務める。特に小林はこの曲を通してセンターとしての自信を掴んだのか、最終日のパフォーマンスでは不敵な笑みを浮かべていた。

 そして本編ラストの「不協和音」では、キャプテンの菅井が鬼気迫る表情とドスの効いた「僕は嫌だ!」の絶叫で、圧倒的なパフォーマンスを披露。菅井は日を増すごとに凄みを増していき、最終日の「不協和音」では曲中、悲鳴にも似た叫び声まで上げるという壮絶さを見せる。普段の落ち着いたイメージを完全に払拭し、「不協和音」という楽曲の持つダークさと完璧なまでにリンクした菅井の姿に、平手の幻影を見た者も少なくなかったのではないだろうか。また、その菅井に負けじと完全燃焼するまで踊り続けるメンバーの姿から、彼女たちがこのライブにどのような思いで臨んだのかが瞬時に理解できた……そんなファンも多いはずだ。

 ライブ本編で披露された楽曲は、昨年の4thシングル『不協和音』(2017年4月発売)、1stアルバム『真っ白なものは汚したくなる』(同年7月発売)、5thシングル『風に吹かれても』(同年10月発売)、そして6thシングル『ガラスを割れ!』(2018年3月発売)の収録曲……この1年間に発表された楽曲のみで構成されていた。つまり、「サイレントマジョリティー」や「二人セゾン」といったヒットシングルを欠いた形のセットリストだ。そして順風満帆だったデビュー1年目を経て、さまざまな困難がグループを襲った2年目を象徴するこれらの楽曲群を、昨年よりも心身ともに強く成長した欅坂46が表現する。これこそが、今回のアニバーサリーライブの意味だったのではないだろうか。ライブから数日経った今、改めてそんなことを考えてしまう。

 また、序盤の4曲で改めて「欅坂46とは?」を問いかけるような凝った演出で、観る者にグループの世界観を再認識してもらい、続くユニットコーナーでメンバー個々の魅力を知ってもらう。一人ひとりを把握してもらったところで、再び総力戦に戻ることで、序盤の4曲とは異なる感じ方をしてもらう。メンバー個々の存在感に気づいたことで、欅坂46の世界観をより深く感じてもらう。そういった意味合いも、このセットリストおよび今回のライブには込められているように感じたのだが、いかがだろうか。

 さて、本題に戻ろう。アンコールではライブ本編でパフォーマンスされなかった「サイレントマジョリティー」「世界には愛しかない」「二人セゾン」の初期ヒットシングルを、日替わりで披露。「サイレントマジョリティー」では鈴本、「世界には愛しかない」では守屋、「二人セゾン」では小池&原田がそれぞれセンターを担当し、いつも以上に熱の入ったパフォーマンスを通じて個々の魅力が存分に引き出された。特に原田は、あの印象的な平手のソロダンスを彼女ならではのしなやかなダンスで表現してみせ、7日公演の「二人セゾン」パフォーマンス後にはセンターの重圧から解き放たれ落涙する場面もあったほどだ。そして3日とも、アンコールのラストは「太陽は見上げる人を選ばない」を歌唱し、笑顔でエンディングを迎えた。また最終日のみ、ダブルアンコールで「ガラスを割れ!」をプレゼントするサプライズもあった。

 菅井は公演中、「本当はここに21人で立ちたかった。それは、皆さんもそうだ(=21人のステージを観たかった)と思います。でも、今できることを頑張っていきたいと思いました。それが皆さんの心に届いていたらいいな。自分たちの力で、目の前のガラスを割っていきたい。これからも壁に立ち向かっていくので、応援よろしくお願いします」と挨拶する場面があったが、平手や志田の不在という“壁”を、昨年の全国ツアーでも大きな課題となった結束力で乗り切ることに成功した。


 今後、彼女たちがどのような形で活動を続けていくのかは誰にもわからないが、波乱が続いたデビュー2年目を経て、欅坂46は今までにない強さと自信を手に入れたはず。この3公演で目にした彼女たちの姿がすべて、もう余計な心配はいらない。彼女たちの言葉を信じて、今後もさまざまな壁を越えて進む欅坂46を見守っていきたい。

■西廣智一(にしびろともかず)Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

■『欅坂46 2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE』セットリスト
2018年4月6日(金)〜8日(日)武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ
00. Overture
01. ガラスを割れ!
02. 避雷針
03. 君をもう探さない
04. もう森へ帰ろうか?
05. バレエと少年 [上村/尾関/小池/長沢/原田/米谷]
06. 波打ち際を走らないか?[菅井/守屋/渡辺/渡邉]
07. AM1:27 [小池/小林/鈴本/原田]
08. 再生する細胞[今泉]
09. 結局、じゃあねしか言えない[石森/織田/齋藤/佐藤/土生]
10. 100年待てば[長濱]
11. バスルームトラベル[尾関/小池/長濱]
12. 1行だけのエアメール[今泉/小林]
13. ゼンマイ仕掛けの夢[今泉/小林]
14. 月曜日の朝、スカートを切られた
15. エキセントリック
16. 国境のない時代
17. 東京タワーはどこから見える?
18. 危なっかしい計画
19. 風に吹かれても
20. 不協和音
En1. サイレントマジョリティー(6日)
  世界には愛しかない(7日)
  二人セゾン(8日)
En2. 世界には愛しかない(6日)
  二人セゾン(7日)
  サイレントマジョリティー(8日)
23. 太陽は見上げる人を選ばない
WEn. ガラスを割れ!(8日のみ)

 

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