超特急、ライブで強めた存在感とチームワーク アリーナツアー『the end for beginning』レポ

超特急、ライブで強めた存在感とチームワーク

 ダンスやアクロバットといった動きの面はもちろん、コーイチとタカシというボーカリスト2人のパフォーマンスにも進化を感じさせるものがあった。デビュー時から大人顔負けの歌唱力を評価されていたコーイチに、追いつき追い越すような勢いで成長を遂げているタカシ。この日はそれぞれが感情を爆発させるかのような歌声を響かせていた。時に火花を散らすようにエモーショナルな「The End For Beginning」での掛け合いや、ポエトリーリーディング風に歌詞をつぶやく新たなスタイルで魅せた「Snow break」といった楽曲を中心に、バックボーカルの面目躍如といえる2人の活躍に目と耳を奪われた8号車も多かったはずだ。

 8号車を含めた一体感が魅力の超特急のステージだが、それをしっかり堪能できるブロックが本編終盤に設けられていた。例えばメンバーと8号車が一斉にクロスサインを作る「Burn!」。この曲でメンバーがセンターステージや長い花道を含む各所に散らばり7色のペンライトが揺れる会場を見渡していて、いつの間にかアリーナクラスの会場が狭く感じるようになったことにも驚かされた。続けてオリコン1位を記録したヒット曲「超ネバギバDANCE」では、白い巨大なボックスに入った7人が同時に消える大イリュージョンを展開。息つく間もなく、次の「走れ!!!! 超特急」オープニングで7人が自転車で客席に登場するというサプライズもあった。前述のインタビューで、会場のスケールアップにともない8号車とのふれあいが難しくなっていることについて“8号車への近付き方は今までとは変わってくるかも”と言っていたのは、(これは一例ではあるだろうが)こういうことを指していたのか……と合点がいった。

 そして超特急がこれまでテーマとしてきた「ダサかっこいい」を“より振り切った方向に突き詰めたい”という発言もあったが、オープニングの「The End For Beginning」がかっこいい路線ならば、ダサ路線のコミカル感を端的に表現したのがアンコール1曲目の新曲「BREAK OFF」ではないかと推測できる。“無礼講”を想起させるタイトルからも伝わってくるが、この曲でのハイテンション&縦横無尽に歌い踊る姿はオープニングのシリアスな彼らとはいい意味で対照的だった。

 ダンスリーダーであり、アクロバットを含めたパフォーマンス面でグループをリードする立場のユーキの負傷は確かに大きなアクシデントではあった。しかしこの件がユーキを含む各メンバーのステージにおける存在感を際立たせたことや、カイもMCで語っていたがメンバー間はもちろん8号車たちとの強いチームワークに改めて気付かされる機会にもなったことは、不幸中の幸いだったのではないだろうか。

 印象的なコールで一体感を強める楽曲を効果的に配したセットリストやパフォーマンスの起伏にきっちりフォーカスした絶妙なカメラワークなど、ライブの世界観に没入できるさまざまなポイントを含めて、8号車たちにも非常に好評だった同ツアー。この原稿を書いている時点では全日程は終了していないため推測ではあるが、作りこんだセットや映像などに頼りきらず、歌とダンスという根本のパフォーマンスを過去のツアーとは段違いにレベルアップさせたという点に、トランスフォームしつつある彼らの目指す場所が見えた気がした。ツアータイトルである“始まりのための終わり”について、目標である東京ドームを目指して七転八倒しながらキャリアを積み上げてきた第一期の終了……というような意味合いに筆者は感じているのだが、どうだろうか。

■古知屋ジュン
沖縄県出身。歌って踊るアーティストをリスペクトするライター/編集者。『ヘドバン』編集を経て、『月刊ローチケHMV』『エキサイトBit』などで音楽/舞台/アートなど幅広い分野について執筆中。

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