DEZERTはV系シーンを牽引する存在に? 多くの先輩からも愛される“媚びない”魅力
勢いのある若手V系バンドが減っている中、いい意味で浮いていて、先輩ミュージシャンにも一目置かれているのがDEZERTだ。
2011年に結成され、現在、千秋(Vo)、Miyako(Gt)、Sacchan(Ba)、SORA(Dr)の4人で活動中のDEZERTは、MUCCのミヤ(Gt)が“先輩も後輩も関係なく火花を散らすイベントにしたい”という意志のもとに主催したイベント『COMMUNE』に2015年から2年連続で出演。2016年にはX JAPAN、LUNA SEA、GLAYなどの大物から若手までが一堂に会した大型フェス『VISUAL JAPAN SUMMIT 2016』に出演し、同年にD’ERLANGER、cali≠gariの先輩たちと共に『D’ER≠gari 2016 feat. DEZERT』と題した東名阪ツアーにも参加することになる。
こうした経験を活かし、2017年1月には自身初となる主催イベント『This Is The“FACT”』を新木場STUDIO COASTで開催。MUCC、LM.C、A9の先輩とDEZERTと同世代のNOCTURNAL BLOODLUST、アルルカンの6バンドが同じ演奏時間で遠慮なしにぶつかりあうライブを展開した。今年リリースされたD’ERLANGER、MUCC両方のトリビュートアルバムに参加しているのもDEZERTがその個性と音楽性、バンドに向かう姿勢を評価されているからに他ならない。
では、いったいなぜDEZERTは気合の入った先輩たちに愛されるのか。理由は様々あるとは思うが、一言で言えば彼らが“媚びない”からだと思う。冒頭で書いた華やかなライブ経歴だけを見ると恵まれたバンドのように思えるが、DEZERTは当初、オファーがあってもメディアの取材をほとんど受けず、ライブ活動を軸に地道に口コミだけで動員を増やしてきた。先輩たちの世代ならともかく、時代と逆行しているといっても過言ではないやり方である。事務所に所属せず、リリースに関しても出したい曲ができたら出すというスタンスのため、“何カ月連続リリース”のようなプロモーション計画とも無縁。最近までレコーディングも極力外部の力を借りず、ミックスダウンもベースのSacchan(SaZから今年改名)が手がけるなど、インディペンデント精神を貫いて活動してきた。
ボーカルの千秋は近年のインタビューでたびたび、「戦略はない」と言っている。戦略的な活動をすることにより、自分たちが守りたいものが守れなくなる恐れがあるからこそ、時間がかかるのは承知で一匹狼的なスタンスを選んできたのかもしれない。
だからこそ、変に萎縮することのない態度は先輩の心を掴む。例えば対談で千秋が発する“イベントに出るからには勝ちに行く”という言葉は生意気であると同時にとても素直だ。口に出すか出さないかは別としても、本来同じ土俵の上に立ったら先輩も後輩もないのがこの世界。先輩バンドも10代、20代の頃はそんな想いでステージで戦ってきたことを考えると、怒るどころか「骨のあるヤツらだな」「面白いヤツらが出てきた」と思うのではないだろうか。
それを裏付けるのがDEZERTのライブだ。今年の10月にはツアー『千秋を救うツアー2』のファイナルで初ホール公演として中野サンプラザに立ったが、スクリーンもない非常にシンプルなセットのステージで彼らは自分たちの存在と演奏だけで勝負に出た。そして結果、千秋は“責任はイベンターがとる”とスタッフが青くなるような発言をし、「ホールっていいねえ…って全然思いません! 我慢できないんだ! 乗り越えてこい!」と煽り、全席指定の中野サンプラザにモッシュを起こしてライブハウスのような状態にしてしまった。