シドが“3年半ぶりのアルバム”でも新鮮さを失わない理由 「不安を感じることも刺激になる」

シド、3年半ぶりALを語り尽くす

 シドが9月6日、前作『OUTSIDER』より約3年半ぶりとなるアルバム『NOMAD』をリリースした。個々の活動を経て、4人がバンドとして再度活発に動き出して以降は、『硝子の瞳』や『バタフライエフェクト』、『螺旋のユメ』に武道館2Days公演と、よりパワーアップしたバンドの姿を見せており、その結実がアルバム『NOMAD』だといえる。今回はメンバー全員にインタビューを行ない、この3年半の間に起こった変化やメンバー個々が考えるシドの音楽、『NOMAD』に込めた工夫などについて、じっくりと話を聞いた。(編集部)

「これは絶対に壊しちゃいけないものだと強く思ったことを、よく覚えています」(明希)

ーー前作『OUTSIDER』から最新アルバム『NOMAD』まで3年半と、オリジナルアルバムとしてはずいぶん間隔が空きましたね。前作を出した時点では次のアルバムをいつ頃出そうというのは、明確に決まってなかったとは思いますが。

マオ(Vo):決まってなかったです。今までシドは年にシングルを2、3枚出してからアルバムを出すサイクルで続けてきたので、自然な流れとしては1年後か1年半後にはまたフルアルバムを出すのかなと、4人ともなんとなく思っていたんじゃないかな。

ーーそれが3年半も空いてしまった。この3年半というのは、バンドにとってどのような期間だったのでしょう?

マオ:あえて空けたという認識は4人ともないし、1年、2年と過ぎていく中で「(アルバムを出すのは)今じゃないよね?」って話も特にしてないんですよ。自然に3年半も空いちゃったけど、そのぶん収穫もすごく多かったので、結果としては良かったよねと。その収穫というのは、それぞれがそれぞれの頭でシドのことをすごく考えたことだと思っていて。シドという大きな船に4人で乗っていて、結成10年を過ぎてどこかまったりしてる部分があったところに、4人が違う島にポンと降りてそれぞれが考えるしかなくなる状況が作れた。そうしたことによって、シドに戻ってきたときにみんなパワーアップしていたんだから、自然な流れにしては良かったなと思いますね。

ーー『OUTSIDER』発表タイミングは結成10周年を過ぎた時期でしたし、改めてバンドを見つめ直すタイミングでもあったんでしょうか?

明希(Ba):何周年を意識するよりも、濃く太くやってきた中で気付いたら「ああ、10年経ったんだね」っていうような感覚なんですよね。だからそこから先を考えるというよりは、11年目を迎えるときにそのときの最高を作ろうとして、それをずっと更新し続けているだけ。それで気付いたら15年目になったというニュアンスが近いのかな。で、幸せだなと思うのは、歳を重ねるごとにバンド活動が楽しくなっているんですよ。大人になっているんだけど、子供の頃のような楽しみ方がよりできているような気がするんです。純粋に音を出していて楽しいし、変な話、リハーサルしてるだけでも楽しい。楽器を初めて持った頃のあの感じがフラッシュバックする感覚が、特にここ最近はありますね。

ーーそれは興味深い話ですね。Shinjiさんやゆうやさんはいかがですか?

Shinji(Gt):原点に戻るというのは違うかもしれないけど、この3年半で自分でスタジオを予約して個人練習に入ってみたり、普通にシドで稼働してたときはなかなかできなかったことをするようになって。普通はマネージャーがやってくれるところを、まぁ当たり前なんですけど自分で全部やって、鏡の前でポーズを決めてみたりとか昔やっていたことが単純に楽しかった。あと、僕は機械音痴なので配線とかよくわからないんですけど、それも自分でやることで機材への愛情がより強くなって、より一層楽しくなりましたね。

ゆうや(Dr):俺もみんなとほぼ一緒で、特に2016年というのは久しぶりに自分がやっていることを真剣に考えた1年間でしたね。例えば、バンドを始めた頃にいろんな未来予想図を自分の中で立てていたことを思い出して、スケジュールに追われながら「次はこれをする」じゃなくて、自分でじっくりと考えて何をやるべきか、これをやったほうがいいかがすごく明確に見えてきた、いい期間だったなと思ってます。

ーー特にマオさんと明希さんはソロでの活動もありましたが、そこではバンドと視点が変わってくるわけですよね。そこで得たものも大きかったんじゃないでしょうか?

明希:デカかったですね。例えば楽器とか音とか、バンドでの音にまつわる部分には自信もあって。それはシドの中にいたら成立するんだけど、じゃあひとりで外に出たときに自分の音はどうなんだろう? と考えたときに、もっと自分を追い込まないと外で通用しないんじゃないかと思ったんです。要はもっと自分が納得できるものにしたかったし、完成した気になってる場合じゃないと。そこに気付いてからは自分のサウンド、ベースの弾き方、ライブで使っているベースを一度見直しました。あと自分のソロでは曲以外に歌詞も書いて歌うので、もっとスキルを突き詰めないとダメだなって。例えば、狙った球を投げてるつもりが全然ストライクじゃなかったっていう瞬間が、きっと今までもあったんだろうなと、自分で全部やってみて感じたんです。そういう意味では、見方が少し変わりましたね。

マオ:俺はまず、最初は楽屋にいつものメンツがいなくて単純に寂しかったです(笑)。あとは、ソロでは基本的にシドでやってない活動をする、新しい刺激を受けるための活動でもあったので、最初はカラオケでインストアイベントを何十本も回ってみたり、着席のライブを頑張ってみたりして。とにかくシドの活動が空いたからといって、そこで刺激を受けることを止めちゃうのは絶対に違うなと思ったし、実はソロをやりながらも頭の中にはシドのことがあったんですよね。「せっかく久しぶりにやるんだし、2017年と2018年はこういうふうに展開しない?」とメンバーに投げかけたいなとか、そういうことを常に考えていた気がします。

ーーこの3年半の間には、シングルコレクションアルバム『SID ALL SINGLES BEST』(2016年1月発売)も発表しています。

明希:そうですね。あのアルバムを挟んだのは大きかったかもしれないですね。

ーーインディーズ時代含め、これまでのシングル曲を総括することで過去を振り返る機会にもなりますし、改めてシドがやってきたことについて考える機会にもなったのかなと思いますが。

明希:自分で聴いたときに、とっても愛おしいなと思いましたね。これは絶対に壊しちゃいけないものだと強く思ったことを、よく覚えています。これからもっともっといいものを作っていきたいし、ただ長く続けるのではなくて、今までどおり1年1年最高のものを更新していき、次の15周年や20周年を迎えられたらいいなと感じました。

マオ:シドにはカッコイイ歌詞や面白い歌詞、変わった歌詞などいろいろあるんですけど、特に初期はこれを伝えたいとかこういうテーマで書きたいとかよりも「ちゃんと書かなきゃ」っていう気持ちでやっていたかな。でも最近は自分が伝えたいことだったり、この曲にはこういう歌詞だよなってことだったり、良い意味で肩の力を抜いて書けていると思う。当時はガチガチに肩の力が入っていたと思うんですけど、その感じは今は出せないものでもあるので、その一瞬一瞬を一歩ずつ踏みしめて進んできたんだなと聴き返して思いますね。

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