シドとアニメはなぜ抜群の相性? 『将国のアルタイル』OPテーマ「螺旋のユメ」から紐解く

シドとアニメはなぜ抜群の相性を誇る?

 2016年1月の『SID ALL SINGLES BEST』発表以降、一時はメンバー個々の活動を活発化させていたものの、今年1月に約1年振りのシングルとして『硝子の瞳』を発表。5月には続いて『バタフライエフェクト』をリリースし、日本武道館公演2daysを即完の上、大成功させたシド。彼らがTVアニメ『将国のアルタイル』(MBS/TBSほか)のオープニング曲を含む『螺旋のユメ』を8月2日にリリースする。

 『将国のアルタイル』は、今年「講談社漫画賞」を受賞したカトウコトノのコミックを原作にしたファンタジー戦記。講談社漫画賞は77年に『ブラックジャック』などが受賞した第一回を皮切りに、近年も『20世紀少年』や『BECK』『進撃の巨人』といった大ヒット作品を多数選出。昨年TVドラマ化され社会現象的なヒットとなった『逃げるは恥だが役に立つ』の原作も15年に受賞しており、まさに現在に至るまで日本のエンターテインメントに大きな影響を与えてきた漫画賞として知られている。

 今回のTVアニメ版『将国のアルタイル』では同賞を受賞した原作をもとに、『るろうに剣心』『HUNTER×HUNTER』『機動戦士ガンダムUC』を手掛けた古橋一浩監督と、『ユーリ!!! on ICE』『坂道のアポロン』などで知られるMAPPAが集結。エキゾチックな草原と砂漠の国・トルキエ将国を舞台に、史上最年少の17歳でパシャ(=将軍)になった少年マフムートが、国家をめぐる壮大な陰謀に立ち向かう姿を描く。執筆時点では3話まで放送されており、それぞれの立場や思惑が交差する心理描写とテンポのいいカット進行で先の読めない濃密なドラマが展開されている。その世界観を表現するために、『黒執事』シリーズや『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』『BLEACH』など様々なアニメ作品に楽曲を提供してきたシドに白羽の矢が立った。

 ヴィジュアル系バンドでありながらアニメ作品とのかかわりも深い彼らのアニソンへのアプローチの特徴は、徹底して原作を読み込むことで、そのムードや主人公の心情までを想像させる作品との高い親和性。たとえば、ゆうやが作曲し、マオが作詞を担当した劇場版アニメ『黒執事 Book of the Atlantic』の主題歌「硝子の瞳」では、登場人物の悲しみや痛みが表現された<遠くから 君が壊れる音 聞こえてた>という歌い出しで一気にリスナーを引き込み、ヘヴィなギターサウンドとシドらしいどこか憂いを帯びたメロディで、バトルシーンを含む作品内の感情を楽曲に閉じ込めていた。今回の「螺旋のユメ」もまた、「作品に寄り添う」という意味でそのアプローチをさらに追求している雰囲気だ。

 今回の「螺旋のユメ」は明希が作曲し、マオが作詞を担当。どこか中世を思わせる物語の世界観がアラビア音階を取り入れた冒頭と軽やかなストリングスでイントロから表現されている。アニメ内の劇伴にもストリングスが使用されているため、作品との相乗効果が生まれているのも印象的だ。そこに疾走感溢れるバンドの演奏が加わり、歌詞では幼い日の出来事を経てパシャを目指したマフムートが困難に立ち向かう決意を表現。それを彼が連れている相棒の犬鷲・イスカンダルを連想させる空を絡めて表現し、<君ならきっと大丈夫>と第三者的な視点から背中を押している。Flowerが担当し、トルキエの首都で一番人気の踊り子・シャラの視点で歌われていると思しきエンディング曲「たいようの哀悼歌(エレジー)」とコントラストを描くように、オープニングらしく士気を高める雰囲気が感じられるのも魅力だろう。

 とはいえ、本作では同時に、“シドの音楽”としての個性も大切に保たれている。序盤から大々的に導入したストリングスを生かしながらも、同時にダンサブルなドラム・ビートやタイトなベース・ライン、ギター・リフでバンドならではの疾走感溢れるサウンドを展開し、それがサビでは壮大なスケールで花開いていく様子はこのバンドならではで、TVサイズとは異なる4分のフル・バージョンでは終盤にギター・ソロも挿入。楽曲にさらなるドラマティックさを追加している。今回の「螺旋のユメ」は、ヴィジュアル系としての魅力を持ちながら同時にヴィジュアル系のイメージを自由に広げていくような独特のポップ・センスと、作曲/音へのマニアックな追求がひとつになった、まさに彼ららしい楽曲と言えるのではないだろうか。また、ラストでは<君ならきっと大丈夫>という歌詞を<僕らはきっと大丈夫>に変化させ、アニメ作品のストーリーと充電期間を経てふたたび走り出したシドのストーリーとがパラレル・ワールド的に繋がるような雰囲気も生まれている。そのコントラストが魅力的になるのはやはり、バンドとしての個性が大切に残され、作品の内容と拮抗して(作中のマフムートたちのように)バトルを繰り広げるような雰囲気があるからこそだ。

 今回のシングルリリースにあわせて公開されている最新ヴィジュアルでは、火の粉が舞う城を背にメンバーが佇む姿が映されているが、これもおそらく物語の根本に深くかかわるマフムートの幼少期の戦争体験か、もしくは作品内の戦乱をイメージしたもの。音楽とヴィジュアル要素の両方で作品とシドが深く繋がり、そのどちらもの魅力を引き出していく雰囲気は、これまでアニソンとしての機能性と自身のアーティスト性を両立させてきたこのバンドならでは。9月6日にリリースする3年半ぶりの最新アルバム『NOMAD』と全国ホールツアー『SID TOUR 2017 「NOMAD」』の予定も発表。来年の15周年に向けて2017年の後半も勢いは止まらない。

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

■リリース情報
『螺旋のユメ』
発売日:8月2日(水)
価格:初回生産限定盤¥1,500+税
通常盤初回仕様¥800+税
期間限定通常盤(アニメ盤)¥1,500+税

<初回生産限定盤・通常盤 CD収録内容>
M1.螺旋のユメ
M2.螺旋のユメ –Instrumental-

<アニメ盤 CD収録内容>
M1.螺旋のユメ
M2.螺旋のユメ –Instrumental-
M3.螺旋のユメ -TV Size-

<初回生産限定盤 DVD収録内容>
・螺旋のユメ(Music Video)
・螺旋のユメ(Photo Session / Music Video Making)

<アニメ盤 DVD収録内容>
・螺旋のユメ(Music Video)
・TVアニメ「将国のアルタイル」ノンクレジット オープニング映像

■リリース予定
ニューアルバム(タイトル未定)
発売日:2017年9月
※詳細後日発表

■ライブ情報
SID TOUR 2017(タイトル未定)
9月23日(土・祝) 松戸・森のホール21   開場16:00/開演17:00
9月24日(日) 松戸・森のホール21       開場15:00/開演16:00
10月1日(日)福岡市民会館  開場17:00/開演18:00
10月8日(日)厚木市文化会館 開場17:00/開演18:00
10月12日(木)オリックス劇場  開場17:30/開演18:30
10月15日(日)新潟テルサ     開場17:00/開演18:00
10月21日(土)ベイシア文化ホール(群馬県民会館)開場17:00/開演18: 00
10月27日(金)東京国際フォーラム ホールA 開場17:30/開演18:30
11月3日(祝・金)神戸国際会館 こくさいホール    開場17:00/開演18:00
11月4日(土)ロームシアター京都 メインホール      開場17:00/開演18:00
11月7日(火)大宮ソニックシティ 開場17:30/開演18:30
11月11日(土)日本特殊陶業市民会館 フォレストホール    開場17:00/開演18:00
11月12日(日) 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール  開場15:00/開演16:00
11月21日(火)中野サンプラザホール     開場17:30/開演18:30
11月23日(木・祝)東京エレクトロンホール宮城     開場17:00/開演18:00
11月25日(土)わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)  開場17:00/開演18:00

■番組情報
TVアニメ『将国のアルタイル
放送日時:MBSにて7月7日より毎週金曜26:25~
TBSにて7月7日より毎週金曜26:25~
BS-TBSにて7月8日より毎週土曜24:30~
※都合により放送曜日、時間、 開始日が変更になる可能性あり。

■関連リンク 
シド オフィシャルサイト
将国のアルタイル 公式サイト 
将国のアルタイル Twitterアカウント(@pj_altair)

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