BUGY CRAXONE、“リベンジ”のQUATTRO公演で見せた「強い意志と確固たる自信」

BUGY CRAXONE、“リベンジ”のQUATTRO公演で見せた「強い意志と確固たる自信」

 BUGY CRAXONEが奏でる音は不思議だ。開演前に流れていた結成年である1997年にリリースされた楽曲のBGM、Radiohead、Oasis、Blurなどのブリティッシュロックの流れを汲んだ、広義の意味でのオルタナティブロックであり、サウンドはソリッドでエッジが効いているはずのにまったく耳に痛くない。むしろ、すべてを包み込んでくれるようなあたたかさがある。そして、力強く図太い。ヤマダヨウイチ(Dr)と旭司(Ba)の紡ぐ大きくうなるグルーヴや、笈川司(Gt)のギターは歪んでいないのに分厚い。シンプルなサウンドながら、抑揚と情緒を巧みに操るアンサンブルで魅了していく。クリーンからディストーションに切り替えるといったロックバンドの常套句はBUGY CRAXONEになく、オーケストラのようなダイナミックレンジを生み出しながら、昂揚感をいざなっていく。その様相に「これぞ、バンド!」なんて声がフロアから上がっていたが、まさにその通りである。

 そして、やはりすずきの歌だろう。「花冷え」「なんとなく Be Happy」の軽快にリズムに歌を置いていく様、「ベリナイス」「いみがないから きこえない」のどこか飄々とした様。かと思えば、「WATCH YOUR STEP」「Come on」では吐き捨てるように歌う。どんな楽曲でも圧倒的な存在感を放つ歌声。デビューシングル曲「ピストルと天使」(1999年リリース)で見せた、高音で細かく震える声、顎が外れそうなくらい大口でがなるような姿は、あのときのままだった。昔の曲では人を寄せ付けない緊張感を張り巡らし、最新曲ではすべてを受け入れていくようなおおらかさを見せる。そんな惹き込みを自在に操るすずきのボーカリスト、表現者としての力量にあらためて驚いた。

 BUGY CRAXONEの20年を振り返ると、すずきゆきこの変化が大きい。自身の名前をひらがな表記にしたように、歌詞もひらがなが増え、初期に見せていた負の感情を叩きつけるような歌詞はなくなった。その変化についていけなくなった人も少なくはないかもしれない。実際、私自身がそうだった。『Joyful Joyful』(2012年)を最初に聴いたとき、受け入れられなかったというのが正直なところだった。

 変化を否定するわけではないが、自分が好きだったBUGY CRAXONEではなくなってしまった……勝手なファン心理である。しかしながら数年後、『ナポリタン・レモネード・ウィー アー ハッピー』(2014年)を聴いたとき、なんだかこみ上げてくるものがあった。どこか達観したような世界観は、もがきながらも止まらずにずっと突っ走ってきたバンドだからこそ、たどり着けたものなのではないかと。

 結成20周年と、ニューアルバム『ぼくたち わたしたち』のリリースに際し、彼らを応援する地元メディア関係者の取材をさせていただく機会があった。「尖っていたものが丸くなったというんじゃなくて、表現の方法が変わったということだと思うんです」とは、札幌テレビ放送の制作ディレクターの言葉だ。まさにそういうことだと思う。

 先述の『いいかげんなTV』にて旭がすずきのことを「いろんなことを糧にして成長している。この1年それをすごく感じる」と言っていた。それは彼女が書く歌詞自体にも顕著に表れている。〈窓を開けて顔を上げる そこには空があるだけ 生きることは暮らすこと だから今日も精一杯(シャララ)〉〈あっけらかんに生きるのだ(ぼくたち わたしたち)〉そんな普通のことを普通に歌えるようになった。数年前までは、柔らかい言葉を使いながらもここまでストレートな表現はしていなかったように思う。むしろ、どこか生き急いでいたような20代の頃のほうが、表現の方法は違えど、感情に対しては直球だった気もする。「日常に寄り添うーー」近年、自身の音楽に対して、すずきはそう説明する。もしかして20年前からそのスタンスの根幹は変わってなかったのかもしれない。

 アンコールで、「New sunrise」(『This is NEW SUNRISE』)が演奏された。<この希望が軽薄なら 今ここで死んだほうがマシなくらいさ>Aメロ終わりのここで声を荒げるのはあの頃とまったく一緒だった。中盤に演奏された「NORTHERN ROCK」(『NORTHERN HYMNS』)もそうだ。〈焦燥感で死にそうだ/劣等感でてっぺんへ走れ〉と獲物に噛み付いていくように歌う姿は“すずきゆきこ”ではなく、紛れもなく“鈴木由紀子”だった。ただ、その言葉の持つ意味と我々の心に訴えかけてくる“もの”自体はあの頃と少し違う気がした。もちろん良い意味でだ。

 クアトロワンマンが集大成という感じがしなかったのは、セットリストの構成にもあったと思う。デビューシングル「ピストルと天使」からの「シャララ」、2ndシングル「罪としずく」からの「ぼくたち わたしたち」。かき立てた焦燥感をすぐに払拭するような初期曲からの最新曲への流れが、ものすごく現在の彼ららしかった。古くからのファンの感傷を引きずらせずにあっけらかんとぶっ飛ばしてきた。

 来年4月にツアーを行うことも発表された。『ぼくたち わたしたちのツアー “すずき、今月で40だってよ”』、先輩バンドの良い影響を受けているようなツアータイトルも、日曜は12時半、平日は20時スタートという大人に優しい時間帯も、日常に寄り添う肩肘張らないスタンスがよく現れている。

「強いし、弱いし、真面目だし、ときどき疑うし、でもやっぱり強いんだぁーーっ!!」

 「ブルーでイージー、そんでつよいよ」の最後ですずきが叫んだ言葉。飾らない姿勢と柔らかい物腰、その中に秘めた強い意志と確固たる自信。これが現在のBUGY CRAXONEなのだ。

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログtwitter

■リリース情報
『BUGY CRAXONE 20周年記念ワンマン ”100パーセント ナイス!” 2017.11.19 at SHIBUYA CLUB QUATTRO』
発売:2018年2月28日(水)
価格:3,900円+税
※タワーレコード・Amazon・ライブ会場にて販売
<タワーレコード4店舗限定特典「ナイスな特典引換券」>
対象店舗:渋谷店・新宿店・池袋店・秋葉原店

<収録内容>
01. ハレルヤ
02. 花冷え
03. ボクを信じて
04. WATCH YOUR STEP
05. ベリナイス
06. 悲しみの果て
07. Come on
08. なんとなく Be happy
09. さーてぃーないん ぶるーす
10. いいじゃん
11. NORTHERN ROCK
12. 11月
13. ぶるぶるぶるー
14. チーズバーガーズ・ダイアリー
15. ピストルと天使
16. シャララ
17. たいにーたいにー
18. いいかげんなBlue
19. いみがないから きこえない
20. ロマンチスト
21. YOUR SUNRISE
22. dreamer
23. ブルーでイージー、そんでつよいよ
24. 罪のしずく
25. ぼくたち わたしたち
EN1. New sunrise
EN2. I scream
EN3. 枯れた花

■ライブ情報
『ブージー クラクションの日 ーもっとも100パーセント ナイス!ー』
2018年2月28日(水)渋谷TAKE OFF 7
開場19:00 / 開演19:30
前売¥2,900(税込/ドリンク別)
チケット発売日:2017年12月2日(土)10:00〜 イープラス
12月4日(月)〜ライブ会場にて枚数限定販売

ワンマンツアー『ぼくたち わたしたちのツアー “すずき、今月で40だってよ”』
全公演:前売¥2,900(税込/ドリンク別)

2018年4月08日(日)下北沢SHELTER
open12:00 / start12:30 / チケット発売:2018年1月13日(土)

2018年4月18日(水)札幌COLONY
open19:30 / start20:00 / チケット発売:2018年2月17日(土)

2018年4月25日(水)大阪Live House Pangea
open19:30 / start20:00 / チケット発売:2018年1月13日(土)

2018年4月26日(木)名古屋HUCK FINN
open19:30 / start20:00 / チケット発売:2018年1月13日(土)
info. JAILHOUSE 052-936-6041

関連リンク
BUGY CRAOXNE OFFICIAL HP

 

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる